顧問税理士の解約・変更の流れ、ポイント、返してもらうべき書類とは?

顧問税理士の解約・変更の流れ、ポイント、返してもらうべき書類とは?
最終更新日:
2024/11/06
この記事の監修者
白兼公認会計士・税理士事務所
代表 白兼 道夫(公認会計士・税理士・行政書士)
 
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「いまひとつ税理士の仕事ぶりに満足できない」「他にいい先生が見つかった」など、さまざまな理由で、頼んでいる税理士の変更を検討する機会があるかもしれません。そんな場合、スムーズに引継ぎを進めるためには、どうしたらいいのでしょうか?解約した税理士から返してもらう必要がある書類は?ポイントを解説します。

スムーズな税理士変更・引継ぎのために

税理士はいつでも解約できるのか

顧問税理士を変更するのは、顧問先である企業・事業主の自由です。ただし、顧問契約書の「契約期間には注意が必要です。
例えば、顧問契約書に「契約期間満了日の1ヵ月前までに、双方より意思表示のない限り、自動継続することを妨げない。」という記載があった場合には、10日前になって解約を申し出ても、相手側には「認められない」と主張する権利があるのです。解約を考える場合には、まずは現在の契約内容をチェックして、それに反しない状態で申し出るようにしましょう。
もし、自動更新期間に入っているのにどうしても解約したい場合には、税理士との話し合いになります。例えばですが、一定の「違約金」を支払って契約解除することも、相手の合意が得られれば可能です。

解約したら「違約金」は絶対に請求される?

なお、「違約金」というのは、「契約に違反した場合に支払うお金」で、本来ならば顧問契約書に定められた規定に従って請求されるべきものです。特に契約違反もなく、契約書に違約金の定めもない場合には、解約を申し出たからといって一方的に請求されることは通常ありません。万が一求められても、応じる義務はありません。

円満な顧問契約解除・引継ぎをするには?

ただし、契約上問題がないからといって、作業を機械的に進めるのは考えものです。税理士も人間ですし、難関と言われる資格を手にした自負があります。もちろん、仕事を失うのは辛い、という思いもあるでしょう。そうしたことを頭に入れたうえで、今の先生と円満に解約することを考えましょう。
感情的なしこりを生み、引き継ぎに協力してもらえなくなったりするのは、得策ではありません。仕事に問題があって交代を考えるようなケースでも、難点をあげつらうような対応はやめておくべきです。

税理士への断り方はどうすればいい?

あらためて、断り方の注意点をまとめました。

解約のタイミングを明確に伝える

さきほどの「契約期間」の問題も踏まえて、今の税理士には「○月末で契約解除したい」など、「いつ解約するのか」をはっきり伝えるようにします。

「解約の理由」には、ひと工夫

ただし、契約解除する理由については、はっきり言うのがいいとは限りません。「他にいい先生が見つかった」「報酬が高すぎる」など、解約の理由を率直に伝えると、相手によっては気分を害して、そこからの話が円滑に進まなくなる可能性もあるからです。状況に応じて、「知り合いから頼まれた」など、やんわりと「かわす」ことも考えるべきでしょう。

「電話のみ」は避けた方が無難

解約の意思の伝達方法は、メールなど内容の履歴、証拠が残る形にするのがベストです。電話の場合は、後で「聞いていない」「解約の期日が違う」といったトラブルにならないとも限りませんから、やり取りを録音しておくことをお勧めします。

「顧問契約解除合意書」を取り交わせるのがベスト

顧問契約解除合意書とは、その名の通り双方が契約解除に合意した、という文書です。これがなければ、契約解除が成立しないというものではありませんが、取り交わしておけば、後のトラブルを防ぐ武器になります。
一方、「顧問契約解除通知書」という文書もあります。これは、合意とは違い、今の税理士に対して一方的に「通知」するものですが、「解約の意思を示した」という証拠になります。相手に確実に届いたことを証明したい場合は、配達証明付き内容証明郵便で送付します。

記事監修者からのワンポイントアドバイス
顧問税理士を変更する場合は不満が理由となることが多いですが、契約終了までの業務が円滑に進み、後任税理士への引き継ぎがスムーズに行えるように、「知人からの依頼を断れなかった」などの建前を伝えるのも一案です。大人の対応を心がけることで、双方にとって円満に契約を終えられるでしょう。
白兼公認会計士・税理士事務所 代表 白兼道夫

税理士変更のポイントは、書類やデータをきちんと返却してもらうこと

税理士から返却してもらうもの一覧

顧問税理士の変更の“肝”は、業務のために預けていた書類やデータを確実に回収し、新しい税理士に受け渡すことにあると言っていいでしょう。ここで、返却してもらうべきものを列挙します。

〈基本的な書類〉

  • 総勘定元帳 3期分
  • 決算書(別表、決算書、内訳明細書、固定資産台帳)3期分
  • 会社の定款
  • 登記簿謄本
  • 法定調書 償却資産申告書
  • 消費税関係ほか税務署へ過去に提出した届出書
  • 年末調整関係書類
  • e-TaxとeLTAXの利用者識別番号と暗証番号

〈期中の会計データ〉=税理士に記帳代行を頼んでいる場合

  • 試算表
  • 仕訳表
  • 総勘定元帳

「新たな税理士が必要なもの」を揃えよう

税理士を変更して引き継いでもらうといっても、例えば新しい顧問税理士に現在進行形の資料だけ渡すだけでは、仕事を始めてもらうのは難しいでしょう。仕事を始めるためには、過去の勘定元帳や決算書などから、会社の状況や前の税理士の会計処理の仕方などについて、理解する必要があるのです。過去の数字は、税務調査(※)が入ったときにも必要になりますから、確実に返却してもらわなくてはなりません。
上記のリストを参考にしつつ、新しい税理士に「何が必要か」をしっかり聞いて、手元に揃えるようにしましょう。

※税務調査:国税局や税務署が、納税者の税務申告が正しいかどうかをチェックするために行う調査。税務署が行う任意調査と、国税局査察部が行う強制調査がある。

もしも資料の返却を渋られたら?

数は多くありませんが、稀にこうした書類をなかなか返してくれない税理士もいるようです。解約したクライアントに対する感情的なしこりがあったり、あるいは自分のミスを知られたくない、といった事情があったりする場合です。
しかし、先ほどリストアップしたような書類の所有権は、税理士事務所ではなく、顧問先にあります。そのため、税理士の側には、求めがあればいつでも返却に応じなければならない義務があるわけです。この点は、臆することなく対応するようにしましょう。

一方、電子データに関しては、少し事情が違います。民法で定める所有権は、「有体物」に対して生じる権利とされているため、電子データは「圏外」扱いなのです。
そこで大事になるのが、やはり顧問契約書です。税理士の業務の成果物には電子データも含まれることや、その引渡方法などを明記しておけば安心です。

税理士同士の引き継ぎはアリ?

「難しい会計処理などについては、プロ同士で引き継いでもらうのがベストでは?」そう考えるかもしれませんが、実際には困難です。最初に述べたように税理士も人間ですから、「仕事を奪われる」ほうと「仕事をもらう」ほうが円滑なコミュニケーションをとるというのは、ハードルがかなり高いのです。税理士を変えようと思ったら、必要書類を返却してもらうところまで、自らが責任を持つ必要があると心得てください。

なお、書類を返却してくれないなどのトラブルが発生した場合には、その税理士が所属する税理士会に相談するのも1つの方法です。

記事監修者からのワンポイントアドバイス
現在の顧問税理士から資料やデータが返却されない場合は、まずは後任の税理士に相談するのがよいでしょう。専門家のサポートを受けることで、スムーズに引き継ぎが進むことが期待できます。
白兼公認会計士・税理士事務所 代表 白兼道夫

解約の際に揉めてしまった場合は?

今の税理士がどうしても解約に応じてくれない、書類を返してくれない、といったトラブルが生じた場合には、まずは「税理士会」に相談してみましょう。税理士は、必ず地域ごとにある税理士会に所属しています(事務所が東京都にあれば、「東京税理士会」に相談)。その税理士会には、「紛議調停委員会」という機関があり、そこに申し立てをすることができるのです。

「紛議調停」とは、税理士業務に起因する納税者とのトラブルを、裁判によらずに当事者同士の話し合いにより解決を目指す制度で、民法上の「和解」の効果があります。つまり、調停が成立した場合には、その内容に従う義務が生じます。税理士には出頭義務がありますから、トラブルの解決に非常に有効です。訴えが正当なものであれば、「では、税理士会に話をします」と言えば、多くの場合、税理士側が「折れる」のではないでしょうか。なお、調停は非公開で、費用もかかりません。

まとめ

顧問税理士を変えたいな…と思ったら、まず契約書で契約期間などを確認しましょう。解約に際しては、できるだけ穏便に話をして、必要な書類などは確実に返却してもらうことが重要です。

よくある質問

顧問税理士の変更はいつでもできますか?

顧問税理士の変更は自由にできますが、契約期間などの契約内容を事前に確認し、契約解除のタイミングに注意する必要があります。

税理士の解約時に違約金は発生しますか?

通常、契約書に違約金の定めがない場合は発生しません。ただし、契約書に明記されている場合は、その内容に従います。

税理士から返却してもらうべき書類は何ですか?

総勘定元帳、決算書、定款、登記簿謄本、消費税関係の届出書、年末調整関係書類、電子申告に必要となるe-Tax とeLTAXの利用者識別番号と暗証番号などです。

新しい税理士に引き継ぐ際の注意点は何ですか?

過去の勘定元帳や決算書など、必要な書類やデータを確実に返却してもらい、新しい税理士に引き継ぐことが重要です。

税理士会に相談する方法はありますか?

解約時にトラブルが発生した場合は、税理士が所属する税理士会の「紛議調停委員会」に相談することができます。

記事監修者からのワンポイントアドバイス
顧問税理士の変更はいつでも可能ですが、会社の状況によっては、手続きや届出が漏れないように後任の税理士が変更するタイミングを希望する場合があります。後任の税理士と相談して、最適なタイミングで変更することをお勧めします。
白兼公認会計士・税理士事務所 代表 白兼道夫

記事監修者 白兼税理士からのワンポイントアドバイス

税理士を変更する際の理由はさまざまですが、スムーズな引き継ぎのためには、まずは後任の税理士と合意してから、現在の税理士に解約の意思を伝えることが重要です。税理士によって、必要な引継書類やデータが違う場合があるため、後任の税理士にしっかり確認した上で、必要な返却書類や返却期限を明確にして今の顧問税理士へ解約希望を伝えしましょう。それでも、書類が返却されない場合や、引継ぎが円滑に進まないケースもあります。その際は、後任の税理士に相談し、専門的なサポートを受けながら対応することで、スムーズな移行が期待できます。

この記事の監修者
白兼公認会計士・税理士事務所
代表 白兼 道夫(公認会計士・税理士・行政書士)
大手監査法人、会計事務所、民間経理での勤務経験を経て独立。税務顧問、法人設立支援だけではなく、節税対策、補助金・事業計画書の作成支援や会計ソフト導入支援まで、幅広く経営者をサポートする。公認会計士・税理士である代表がお客様を直接担当している、相談がしやすい「かかりつけの税理士」。

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この記事の執筆者
税理士紹介センタービスカス編集部
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