医療業に詳しい税理士とは?税理士に依頼するメリットを解説

医療業に詳しい税理士とは?税理士に依頼するメリットを解説
最終更新日:
2025/01/29
この記事の監修者
おだね税理士事務所
代表 小田根 大輔(税理士)
 
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医療機関の経営は年々複雑化しており、専門的な税務・会計知識を持つ税理士の存在が経営の成否を左右する重要な要素となっています。では、なぜ医療機関には特化型の税理士が必要なのでしょうか。医療業界特有の課題と税理士の役割について詳しく解説します。

病院・クリニックに特化した税理士の必要性とは?

医療機関を取り巻く経営環境と税務の特殊性

医療機関の会計・税務処理は一般企業とは大きく異なります。医療法人では、非課税取引である保険診療収入と課税取引である自由診療収入が混在し、その区分管理が必要となります。また、医療機器などの高額な設備投資に関する減価償却や、医療法人特有の役員報酬規制など、複雑な税務処理が求められます。
医療機関特有の会計処理として、診療報酬の未収金管理や消費税の計算方法があります。診療報酬は2か月後に支払われるため、適切な収益認識と資金繰り管理が重要です。また、保険診療は非課税のため、医療機器や医薬品の仕入れにかかる消費税が控除できない控除対象外消費税の問題も発生します。
さらに、2年に1度の診療報酬改定への対応や、各種補助金制度の活用、医療機器の設備投資計画など、医療業界特有の専門知識が必要な場面が数多くあります。これらの制度改正や補助金情報を常にキャッチアップし、病院経営に活かせる税理士のサポートが不可欠です。

一般的な税理士と何が違うのか?

医療業に強い税理士の最大の特徴は、医療機関特有の経営課題や税務上の注意点を熟知していることです。一般的な税理士は基本的な税務申告や会計処理は行えますが、医療法人特有の税制や診療報酬制度への深い理解がない場合、最適な税務戦略を提案できない可能性があります。
医療業界における豊富な経験と専門知識を持つ税理士は、税務申告だけでなく、経営全般のアドバイザーとしての役割も果たします。たとえば、事業承継や相続対策、医療法人化の検討、新規開業支援など、医療機関特有の課題に対して実践的なアドバイスが可能です。
また、人件費が経営を圧迫する医療機関では、給与体系の見直しや社会保険料の適正化など、人事・労務面でのコンサルティングも重要です。さらに、設備投資や事業拡大時の資金調達においても、金融機関との交渉やスキーム作りをサポートできる知見が求められます。医療業に強い税理士は、これらの幅広い支援を通じて、医療機関の持続的な成長をバックアップします。

病院・クリニックの税務業務は、一般的な法人税務と異なりますか?

小田根 大輔

監修税理士からのワンポイントアドバイス

病院やクリニックの税務は、一般的な個人事業主や企業と異なる特殊性があり、未経験の税理士がその業務を遂行する際に難しい場面が出てくることは容易に想像されるかと思われます。

例えば医療報酬の会計処理については、保険診療報酬は実際に診療を行ってから2か月後に支払われますが、これを実現主義で実際に診療が行われた日に収益認識を行う必要があります。また、その消費税の処理は、保険診療は非課税売上、自由診療は課税売上となり、その診療に対応する経費等の支払に係る消費税の処理も保険診療にかかるもの、自由診療にかかるもの、その両者に共通して対応するものに分けて会計処理を行う必要があります。

また、税制面に関しても、クリニックや医療法人に特有のもの(社会保険診療報酬の所得の計算の特例など)がありますので、これらの税制に対する正しい理解が必要となります。

病院やクリニックの税務業務を遂行するためには、税務面に限らず、医療業界特有の理解が求められる場面もありますので、未経験の税理士が業務を遂行する難しさはあると言えます。

医療業に強い税理士を選ぶ7つのポイント

医療業をサポートした経験、実績はあるか

最もわかりやすいのが、「医療業の税務などを担当した経験があるかどうか」です。逆に言えば、そうした経験のない税理士に顧問を依頼したりするのは、どんなに報酬が安くても避けるべきです。先述のように、医療業は極めて専門性が高く“特殊”な業界だからにほかなりません。

医療業に専門特化しているか

通常、税理士は、10数件~20件程度の担当を持っており、製造業やサービス業などのクライアントとともに医療業も数件担当している、というケースもあります。ただ、そうした「医療関係も担当顧問先の業種の中の一つです」といったスタンスについても、専門性という視点からはクエスチョンマークが付きます。
的確な節税や経営支援も含めたレベルの高いサポートを求めるのであれば、税理士事務所自体が医療業に専門特化しているのがベストです。個々の税理士や担当者が多くの同業者をカバーしていれば、共通する問題点などについて、迅速なアドバイスも期待できるでしょう。

節税に対する意識をしっかり持っているか

地域の患者のニーズに応えるためには、将来にわたって安定的な経営を維持していくことが不可欠です。医療機関の経営にとって、どれだけ節税して手元に資金を残せるのかが重要な意味を持つことは、いうまでもありません。規模にもよりますが、年間数十万円~数百万円の節税効果が見込める場合もあります。
繰り返し述べているように、そのためには「医療業界の知識」が必要不可欠です。同時に、そもそも顧客の決算に際して“節税の意識”を持ったプロかどうかも問われます。中には、申告の「安全性」、すなわち税務署と争いになったりしないことを優先するあまり、節税に消極的な税理士もいるのです。税理士に対して節税を求めるのならば、そうした点をよく見極める必要があるでしょう。

いざというときに納税者の味方になってくれるか

正しい申告をしたつもりでいても、税務署の税務調査が入ることもあります。顧問税理士は、税務署と対応し、調査の際も同席が許されるのですが、この時に「税務署寄り」の対応では意味がありません。そうした「緊急時」も含めて、納税者の側に立って、その利益を最優先に考え、行動してくれる税理士を選びましょう。

医療法人の設立に詳しいか

事業承継をしやすい、社会的信用度がアップする、などのメリットがあることから、個人経営のお医者さんが医療法人の設立を目指すことも増えました。ただ、設立には都道府県知事の認可が必要で、その流れも自治体ごとに違いがあります。医療法人設立に詳しい税理士に相談すれば、ミスなく手続きを進めてくれるはずです。

MS法人の設立に詳しいか

法令上、医療機関でなくてはできない業務以外の、例えば病院運営にかかわる保険請求業務、会計業務、医薬品や医療機器、器具の仕入や管理、販売業務、人材派遣などを行うのが、MS(メディカル・サービス)法人です。
医療機関がMS法人を設立すると、所得の分散などにより大きな節税効果を生むことができますが、“行き過ぎる”と税務署に租税回避行為を指摘され、申告内容が否認される可能性がある、といったリスクもあります。MS法人設立を考える場合には、やはり知識と経験のある税理士などの専門家のサポートが必要です。

相性は合うか

医療業に限りませんが、税理士に正しい税務申告をしてもらうためには、事業の内情を洗いざらい明らかにしなくてはなりません。そういう相手だけに、「税理士と相性が合うかどうか」は、税理士を選ぶ際の大事なポイントです。

この点でも、医療業のサポートに経験を持っている税理士というのは、アドバンテージになるかもしれません。税理士から見ても、医師という専門性の高い相手は、やや「異質」な存在でしょう。そういうクライアントと多く接してきた税理士ならば、適切な距離感を体得している可能性があります。

医療機関が税理士を探すときにチェックすべきポイント

サポート体制とコミュニケーション方法

税理士事務所によってサポート体制は大きく異なります。医療機関の場合、日々の経営判断や緊急の相談に迅速に対応できる体制が重要です。毎月の定期面談では、経営数値の確認だけでなく、医療機関特有の経営課題についても相談できる機会を設けているかどうかをチェックしましょう。
また、オンラインミーティングやメール、チャットなど、多様なコミュニケーション手段を用意しているかも重要なポイントです。特に緊急時の連絡体制や休日対応の可否については、事前に確認しておく必要があります。
さらに、経営指標のモニタリングについても確認が必要です。収益性や効率性を示す指標を定期的にチェックし、同業他社との比較分析やアドバイスを提供してくれる頻度なども、サービス選択の重要な判断材料となります。

料金体系・サービス内容の透明性

医療機関の顧問税理士を選ぶ際は、料金体系を明確に理解しておくことが重要です。一般的な契約形態として、月額顧問料、決算料、記帳代行料などがあり、事務所によって料金設定や含まれるサービス内容が異なります。
税理士顧問料の相場は様々な条件(年商、訪問回数、業務形態、記帳状況など)によって異なります。また、医療法人か個人医院かでも料金相場は若干異なります。税理士によって料金設定が異なるため、まずは一度問い合わせて確認するのがおすすめです。

医療業に詳しい税理士の料金の相場

税理士顧問料の相場は様々な条件(年商、訪問回数、業務形態、記帳状況など)によって異なります。
また、医療法人か個人医院かでも料金相場は若干異なります。
税理士によって料金設定が異なるため、まずは一度問い合わせて確認するのがおすすめです。

医療法人の場合の料金相場

年商 訪問回数 金額
年商1000万円以上
5000万円以下の場合
2ヶ月に1回 25,000円~/月
3-4ヶ月に1回 20,000円~/月
決算のみ 250,000円~
年商5000万円以上
1億円未満の場合
毎月1回 35,000円~/月
2ヶ月に1回 30,000円~/月
3-4ヶ月に1回 25,000円~/月
年商1億以上
3億円未満の場合
応相談 40,000~60,000円/月
年商3億以上
5億円未満の場合
応相談 50,000円~/月
年商10億以上の場合 応相談 80,000円~/月

個人医院の場合の料金相場

年商 訪問回数 金額
年商1000万円以上
3000万円以下の場合
3-4ヶ月に1回 15,000円~/月
決算のみ 150,000円~
年商3000万円以上
1億円未満の場合
毎月1回 30,000円~/月
2ヶ月に1回 25,000円~/月
3-4ヶ月に1回 20,000円~/月
年商1億以上
3億円未満の場合
応相談 30,000~50,000円/月
年商3億以上
5億円未満の場合
応相談 35,000円~/月
年商10億以上の場合 応相談 50,000円~/月

記帳代行の料金相場

仕訳数 料金
~200枚 15,000円
201~300枚 20,000円
301~400枚 25,000円
401~500枚 30,000円
501枚~ 35,000円

決算時報酬・給与計算・年末調整

  • 決算時報酬:月額顧問料の4~6ヶ月分が目安
  • 給与計算:事務所により設定が異なります。
  • 年末調整:事務所により設定が異なります。

変更することで得られるメリットとリスク

税理士の変更を検討する際は、そのメリットとリスクを慎重に検討する必要があります。メリットとしては、より専門的なアドバイスが得られる可能性や、コストパフォーマンスの改善などが挙げられます。

一方で、変更に伴うリスクも存在します。特に決算期直前の変更は混乱を招く可能性があるため避けるべきです。また、過去の経理処理や税務判断の引継ぎが適切に行われないと、新しい税理士が適切なアドバイスを提供できない可能性もあります。

税理士の変更を検討する際は、決算終了後から次期決算期までの間に余裕を持って進めることをお勧めします。また、事業拡大や医療法人化などの大きな転換期に合わせて変更することで、新体制への移行をスムーズに進めることができます。

病院・クリニックに最適な税理士を選ぶための流れ

現状の問題点・要望の整理

医療機関が税理士を選ぶ際、まず重要なのが自院の経営課題と税理士に求める役割の明確化です。たとえば、単なる税務申告だけでなく、経営改善や事業承継、医療法人化などの支援を求めるのか、具体的な要望を整理しましょう。
また、税理士選びは院長一人で決めるのではなく、事務長や経理担当者など、実務を担当するスタッフの意見も重要です。日々の会計処理や税務対応で困っている点、改善したい点などを関係者間で共有し、求める税理士像を明確にすることで、より良い選択につながります。

候補の税理士事務所を比較・問い合わせ

医療専門の税理士事務所を探す方法はいくつかあります。まずは医療業界専門の税理士事務所をリストアップしましょう。医師会や地域の医療機関からの紹介、医療専門の業界誌、税理士会のウェブサイトなどが情報源として有効です。
また、候補となる税理士事務所のホームページで、医療機関支援の実績や具体的な支援内容を確認します。医療経営セミナーの開催実績なども、その税理士の専門性を判断する材料となります。医療機関特有の経営課題に関する情報発信を行っているかどうかもチェックポイントです。
問い合わせの際は、以下のような項目を確認することをお勧めします。

  • 医療機関の顧問実績件数と担当年数
  • 担当者の医療業界に関する知識や経験
  • 具体的な支援実績(医療法人化、事業承継など)
  • 顧問先医療機関の規模や特徴
  • サポート体制(担当者の人数、緊急時の対応など)

面談・契約時の注意点

候補となる税理士との面談では、費用面だけでなく、具体的なサポート内容について詳しく確認することが重要です。特に以下の点について、明確な説明を求めましょう。

  • 月額顧問料に含まれるサービスの範囲
  • 追加料金が発生するケースとその金額
  • 面談の頻度と方法(訪問、オンラインの使い分けなど)
  • 記帳代行や給与計算などの付随業務の対応可否
  • レポートや分析資料の提供頻度と内容

顧問契約を結ぶ際は、契約書の内容を慎重に確認します。特に業務範囲や報酬、守秘義務などの重要事項については、明確な記載があることを確認しましょう。また、契約期間や解約条件についても、事前に確認しておくことが重要です。
税理士との関係は長期的なパートナーシップとなるため、定期的な見直しの機会を設けることをお勧めします。半年に1回程度、サービス内容や報酬について話し合いの場を持ち、必要に応じて見直しを行うことで、より良い関係を築くことができます。また、医療機関の成長に合わせて、新たなサービスや支援を要望することも検討しましょう。

病院やクリニックが税理士を選ぶ際に重視すべきポイントは?

小田根 大輔

監修税理士からのワンポイントアドバイス

病院やクリニックの税務は、一般的な個人事業主や企業と異なる特殊性がありますので、これらの税務に精通している税理士に依頼することをお勧めいたします。

①病院やクリニックの税務に精通しているのほかに税理士を探すポイントとして、②医院経営に相談は乗ってくれるのか、③税理士との相性やコミュニケーションはどうか、④税理士事務所の規模感やスタッフの体制はどうか、⑤料金体系は明確かなどが挙げられます。

税務の他、資金繰り、節税対策、事業承継といった医院経営面の問題に対応することが出来る税理士であれば、医院経営でお困りの際にも安心して相談することができます。

また、一度税理士と顧問契約を結ばれますと、長期的なお付き合いになることが多いので、税理士との相性やコミュニケーションの頻度も税理士を探す際の重要なポイントになります。

また、実際に業務の担当となる者が誰になるのかの確認も重要です。顧問契約を結ぶ際に面談を行った税理士と、実際に業務を対応する担当者が異なるケースもあります。初回面談で相性がいいと思った税理士が、その後の実務に関与しないこともあり得ますのでこの点もお気をつけください。

最後に、税理士事務所においてその料金体系は千差万別ですので事前に見積りを出してもらい、複数の税理士を比較して、ご自身に合った税理士をお探しください。

まとめ

医療機関の経営において、専門性の高い税理士の存在は非常に重要です。医療業界特有の税務・会計処理、診療報酬制度、そして経営課題に精通した税理士は、単なる税務申告だけでなく、経営全般のアドバイザーとして医療機関の持続的な成長をサポートします。

適切な税理士を選ぶ際は、医療業界での実績や専門性、サポート体制、料金体系など、多角的な視点での検討が必要です。特に重要なのは、医療機関特有の課題を理解し、実践的なアドバイスができる経験と知識を持っているかどうかです。

税理士との関係は長期的なパートナーシップとなります。選定の際は、自院の経営課題や要望を明確にし、複数の候補を慎重に比較検討することをお勧めします。当サイト「税理士紹介センタービスカス」など、専門的な紹介サービスを活用するのも一つの方法です。信頼できる税理士との出会いが、医療機関の安定した経営と発展への第一歩となるでしょう。

この記事の監修者
おだね税理士事務所
代表 小田根 大輔(税理士)
業界歴15年間で、法人・個人事業主の顧問業務、申告(法人税、消費税、所得税、相続税)業務のほか、財務・税務のデューデリジェンス業務、公益法人の顧問業務、M&Aや事業承継業務など、幅広い業務に携わってまりました。これらの経験を通じて、企業の成長と発展には、税務・会計の専門家としてのサポートが不可欠であることを確信しております。また、企業経営には、常に様々な課題がつきものです。税務・会計に関するお悩みはもとより事業に関することまで、どうぞお気軽にご相談ください。お客様の立場に寄り添い、最善のサポートをさせていただきます。

事務所公式ホームページはこちら
この記事の執筆者
税理士紹介センタービスカス編集部
税理士紹介センタービスカスは、 株式会社ビスカスが運営する、日本初の「税理士紹介サービス」サイトです。 税理士をお探しの個人事業主や法人のお客様に対して、ご要望の税理士を無料でご紹介しています。
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