「せどり」で得た利益の確定申告は税理士に依頼すべき?報酬相場も含めて解説
「せどり」と「転売ヤー」の違い
「せどり」とは、ネットオークションやリサイクルショップなどで人気のある品物を入手し、ネットなどで販売して利益を稼ぐビジネスをいいます。特に詳しい知識や初期投資もなく始められるため、サラリーマンの副業、主婦の小遣い稼ぎなどとして人気があります。広い意味での「転売業」ですが、希少品などを価格を釣り上げて販売し、社会的な批判を受けることもあるいわゆる「転売ヤー」のような存在とは、区別して使われているようです。
ちなみに、中古品を古物商の許可を得ずに販売したり、公演のチケットを高額で転売したりする行為は違法とされています。
確定申告が必要になるケース
ここからは、確定申告が必要になるケースについて見ていきましょう。
副業の「せどり」は「雑所得」
サラリーマン(給与所得者)は、所得税や住民税が月々の給料から天引き(源泉徴収)され、年末調整が行われます。しかし、副業で稼いだ利益については、源泉徴収などが行われないため、課税の対象になる場合には、自ら確定申告が必要です。
「確定申告」とは、毎年1月1日~12月31日までに得た所得と納税額を計算し、税務署に申告することをいいます。
サラリーマンが副業の「せどり」で得た所得は、「雑所得」という所得区分に分類されます。この雑所得は、合計金額(他に副業をしていれば、それらも合算する)が年間20万円を超えた場合に、所得税の確定申告・納税が必要になります。20万円以下ならば、申告も納税も不要です。
ただし、申告が不要なのは「所得税(国税)」についてであることには、注意しなくてはなりません。所得が20万円以内でも、各自治体への住民税の申告は必要です。
所得の計算方法
ここで注意すべきなのは、「所得」は「収入」とは違うということです。
「収入」=売上から「必要経費」を差し引いたものが「所得」で、その金額が課税対象となるのです。この所得は、給与所得などと合算され、税額が計算されます(総合課税)。
ポイントになるのは、収入から差し引くことができる必要経費です。これをきちんと計上することによって、所得を抑える(=節税する)ことが可能になるのです。
「せどり」の場合、この必要経費(費用)は、仕入に関わるもの(売上原価)と、それ以外の経費に大別されます。それぞれについてみていきましょう。
売上原価
物を販売するためには、当然、仕入が必要です。その仕入にかかった金額は、収入から差し引くことができます。ただし、差し引くことができるのは、「その年に売れた商品の原価(売上原価)」です。
例えば、100万円の仕入れを行ったものの、年内に売れたのが80万円だったら、売上原価に計上できるのは、80万円ということになります。逆に、前年以前に仕入れたものでも、その年に売れたら、売上原価に加えることができます。
それ以外の経費
「せどり」においては、次のようなものを必要経費にすることができるでしょう。
- 物品の梱包や発送にかかるコスト
- インターネット、電話などの通信費
- 金融機関の振込手数料
- パソコンなどの購入費用
生活費とこれら経費が混じる場合には、経費分を計算したうえで計上する必要があります。
収入が多ければ「事業所得」
一方、「専業並みの収入がある」や「投入している時間や物資などが事業的規模である」などの条件を満たしている場合には、雑所得ではなく「事業所得」になることもあります。
事業所得は「青色申告」が可能で、
- 最高65万円の青色申告特別控除を受けられる
- 家族の給与を経費として計上できる
- 赤字を3年間繰越せる
といった恩恵を受けることができます。
ただし、副業で「せどり」を行っているような場合には、今説明した要件を満たして事業所得として認められる可能性は、ほとんどないと考えるべきでしょう。
申告を怠ると
確定申告の必要があるのにしなかった場合、本税(本来支払うべき税額)の納税を求められるだけでなく、「無申告加算税」や「延滞税」というペナルティを課せられる可能性があります。
店舗を構えずに販売しているのだから、税務署には見つからないだろうと思うかもしれませんが、当局は近年、インターネット取引をはじめとする「シェアリングエコノミー」に対する監視の目を強めています。意図的な所得隠しなどが見つかれば、さらに重い「重加算税」の対象になることもありますから、軽く考えるのは禁物です。
「せどり」ビジネスに税理士は必要か
「せどり」ビジネスをしているケースで、税理士に申告などを依頼すると、メリットとデメリットがあります。
税理士に依頼するかどうか迷う際には、メリットとデメリットを理解し検討しましょう。
税理士に依頼するメリット
「せどり」がビジネスとして成り立ち、安定的に利益が上がっている場合、申告などの税務を税理士に依頼するのには、次のようなメリットがあります。
- 領収書の処理、帳簿付け(記帳)など煩雑な経理作業を代わってやってもらえる
- 確定申告の手間が省ける
- 節税のアドバイスがもらえる
- 申告ミスを防ぐことができる
「せどり」は基本的に「薄利多売」のビジネスですから、利益を上げようとすれば、取引の量は増えます。確定申告のためには、日々の記帳なども必要になり、別に本業を持っているような場合には、これらの作業をすべて自分でこなすというのは、かなりの負担になるでしょう。
なお、ビジネスがさきほどの事業所得に該当するような規模の場合には、税理士への依頼は「マスト」に近いものになります。単純に申告のための作業量が増えることに加え、青色申告をするためには、さらに厳格な記帳(複式簿記)なども必要になるためです。
税理士に依頼するデメリット
確定申告を税理士に依頼するデメリットは、いうまでもなく費用が発生することです。具体的にどれくらいの報酬が必要なのかは、売上規模や依頼内容(記帳も依頼するかなど)によって異なりますが、一般的に5万円~20万円程度が相場です。
そのため、税理士に頼むかどうかは、さきほどのメリットと、コストを天秤にかけて考えることになります。稼ぎの多くが税理士費用で消えてしまうような場合には、多少大変でも自分で申告する方が良いでしょう。
税理士に依頼した場合の報酬相場
次に、せどりで利益がある場合に、税理士に業務を依頼する場合の報酬相場を見ていきましょう。
丸投げした場合
税理士に丸投げする場合、1年間の売上によって税理士報酬は異なります。また、売上の金額が大きくなると顧問契約をするケースもあり、その場合は顧問先への訪問回数によっても税理士費用が変わります。
税理士に丸投げする場合の税理士費用の目安は、次のようになります。
年商・年間売上高 | 訪問回数 | 料金の目安 |
---|---|---|
年商500万円未満 | 確定申告のみの場合が多い | 70,000~80,000円/年 |
年商500万円以上 1,000万円未満 |
3-4ヶ月に1回 | 10,000円~/月 + 確定申告料 |
年商1,000万円以上 3,000万円未満 |
2ヶ月に1回 | 20,000円~/月 + 確定申告料 |
3-4ヶ月に1回 | 15,000円~/月 + 確定申告料 | |
年商3,000万円以上 5,000万円未満 |
毎月1回 | 25,000円~/月 + 確定申告料 |
2ヶ月に1回 | 20,000円~/月 + 確定申告料 | |
3-4ヶ月に1回 | 15,000円~/月 + 確定申告料 | |
年商5,000万円以上 1億円未満 |
毎月1回 | 30,000円~/月 + 確定申告料 |
2ヶ月に1回 | 25,000円~/月 + 確定申告料 | |
3-4ヶ月に1回 | 20,000円~/月 + 確定申告料 | |
年商1億円以上 | 要相談 | 30,000円~/月 + 確定申告料 |
上記の金額は、あくまで目安です。税理士によって、あるいは作業量によって報酬金額が異なることがあります。
記帳代行のみ依頼した場合
記帳代行だけを税理士に依頼することも可能です。この場合は、仕訳数に応じて報酬金額が異なります。記帳代行の相場は、次のようになります。
仕訳数 | 料金の目安 |
---|---|
~200枚 | 15,000円 |
201枚~300枚 | 20,000円 |
301枚~400枚 | 25,000円 |
401枚~500枚 | 30,000円 |
501枚~ | 35,000円 |
上記の金額は、あくまで目安です。税理士によって報酬が異なることがあります。
「せどり」に適した税理士とは
税理士にも「得意分野」があります。もし依頼する場合には、「せどりビジネス」に実績があり、同業(転売業)に多く携わっている事務所がベストといえるでしょう。
反対に、こうしたビジネスに不慣れで、例えばクレジット決済をスムーズに処理できない税理士だったりすると、作業が滞ったり報酬が高くなったりすることもありますから、注意が必要です。
まとめ
「せどり」で得た利益は、基本的に雑所得となり、年間20万円を超えた場合には、確定申告が必要になります。安定的な利益を得ている場合には、このビジネスに詳しい税理士に申告を任せれば安心でしょう。実績のある税理士紹介会社に依頼すれば、ビジネスに適した税理士を効率的に探すことができます。
よくある質問
せどりの利益は確定申告が必要ですか?
はい、せどりの利益は年間20万円を超える場合、確定申告が必要です。また、所得が20万円以下でも住民税の申告が必要です。
確定申告を税理士に依頼するべきですか?
確定申告を税理士に依頼することで、経理作業の負担を軽減し、節税のアドバイスを受けられるメリットがあります。特に規模が大きい場合はおすすめです。
必要経費にはどのようなものがありますか?
仕入れにかかる費用、梱包・発送費、通信費、振込手数料、パソコンの購入費用などが必要経費として計上できます。
所得の計算方法はどうなりますか?
所得は売上から必要経費を差し引いた金額です。必要経費を正確に計上することで節税が可能です。
事業所得として申告する条件は何ですか?
専業並みの収入や事業的規模である場合は事業所得として申告でき、青色申告特別控除などのメリットがあります。
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