改正電子帳簿保存法の全貌と税理士の役割

改正電子帳簿保存法の全貌と税理士の役割
最終更新日:
2024/10/23
この記事の監修者
徳永税理士事務所
所長 徳永 圭(税理士)
 
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2022年に施行された改正電子帳簿保存法は、企業のデジタル化を加速させる重要な転機となりました。この法改正により、電子帳簿の保存やスキャナ保存、電子取引データの電子保存が義務化され、業務効率化とペーパーレス化が進んでいます。税理士には、これらの新たな要件に対応するため、顧問先に対してシステム導入の支援や、事務処理規程の策定などの包括的なサポートが求められています。

令和3年度電子帳簿保存法改正

2022年1月に電子帳簿保存法の大幅な改正が施行されました。この改正は、企業がより効率的にデジタル化を進めるためのものです。税理士が企業の法令対応をサポートする重要性が一層増しています。

電子帳簿保存法の3本柱

改正後の電子帳簿保存法には、以下の3つの区分があります:

  1. 電子帳簿: 電子的に保存される会計帳簿や決算書類。
  2. スキャナ保存: 紙の証憑書類をスキャンして電子データとして保存。
  3. 電子取引: オンライン上でやり取りされる取引情報の電子的保存。

これらの区分に応じた要件が定められており、税理士はそれぞれの要件を理解し、顧問先企業に適切なアドバイスを行う必要があります。

スキャナ保存の規制緩和

スキャナ保存の要件は大幅に緩和され、企業がペーパーレス化を進めるうえで重要なステップとなっています。主な変更点は以下の通りです:

  • タイムスタンプの要件緩和: 厳しい条件が緩和され、運用がしやすくなっています。
  • 検索要件の緩和: 検索機能の導入条件が簡略化され、費用対効果が向上しました。
  • 適正事務処理要件の廃止: これにより、柔軟な対応が可能となりました。

この緩和により、特に中小企業がスキャナ保存を導入しやすくなり、コストの削減や業務効率化が期待されています。

電子取引データの保存義務化

2022年1月以降、電子的に受領した請求書や領収書などの取引データを電子保存することが義務化されました。紙での保存が認められず、すべての取引データを電子データとして保存しなければなりません。
この保存義務化により、税理士は顧問先に対して、電子取引データの保存方法やシステム導入についてアドバイスすることが求められます。

電子取引の範囲と具体例

電子取引の定義

電子取引は、取引情報の授受を電磁的方式で行うすべての取引を指します。代表的な例としては以下が挙げられます:

  • EDIシステムを介した発注や請求書の送受信。
  • クラウドサービス経由の請求書や注文書のやり取り。
  • 電子メール添付の見積書や注文書。
  • ECサイトでの商品購入。

保存が必要な電子取引データ

電子取引に関する保存データには、請求書、領収書、注文書などの証憑書類が含まれます。また、取引の日付、金額、取引先情報、商品の詳細も保存が求められます。これらのデータは、税務調査や社内監査時に必要となるため、正確かつ適切に保存することが必須です。

電子取引データの保存方法

電子保存の2つのアプローチ

電子取引データの保存方法は大きく2つに分かれます:

  1. システムを利用した保存クラウド会計ソフトやERPシステムを導入し、電子データを効率的に管理します。これにより、データの一元管理が可能になり、迅速な検索や保存ができるようになります。
  2. 手動による保存自社サーバーや外部ストレージに保存する方法。フォルダ分類などでデータを手動で管理します。導入コストは低いですが、運用に手間がかかることがあります。

保存時の留意点

電子取引データを保存する際は、以下の要点に注意します:

  • 真実性の確保: データの改ざんを防ぐために、タイムスタンプや電子署名を活用することが推奨されます。
  • 可視性の確保: データをディスプレイやプリンタで出力可能な状態にしておく必要があります。
  • 検索機能の実装: 必要な情報を迅速に検索できるよう、システム導入時に検索機能を確認することが大切です。
  • バックアップと復元手順の確立: データの喪失に備えて、定期的にバックアップを取り、復元手順を明確にしておきます。

システム未導入企業のための対応策

事務処理規程の策定

システムを導入していない企業でも、法令に準拠した運用を行うためには、事務処理規程の策定が重要です。具体的には、データの取得・保存手順や検索方法、改ざん防止策、バックアップの方法を明文化します。これにより、法令遵守を確保しつつ、適切な電子取引データの保存が可能になります。

手動保存の実践例

システムを導入せずに手動で保存する場合、以下のような方法が実践的です:

  • フォルダ分類: 取引先ごとや日付ごとにフォルダを作成し、電子データを整理します。
  • PDFファイルの命名規則: 保存するファイルに一貫した命名規則を適用し、検索しやすい状態にします。
  • エクセル管理台帳: 保存したデータを一元的に管理するための台帳を作成し、フォルダと紐付けて保存場所を明確にします。

これにより、システムを使わずとも法令に準拠した形でのデータ保存が実現できます。

電子帳簿保存法対応のロードマップ

企業が電子帳簿保存法に対応するためには、以下のステップを踏むことが推奨されます:

  1. 現状の分析: 現在の保存状況を評価し、改善が必要な箇所を特定します。
  2. 対応方針の決定: システムを導入するか、手動で対応するかを決定します。
  3. 社内規程の整備: 保存方法に適した規程を整備し、運用手順を策定します。
  4. システム選定・導入: システム導入が必要な場合、最適なシステムを選定し、導入を進めます。
  5. 社員教育と運用テスト: 新たなシステムや保存方法に関する社内教育を実施し、運用テストを行います。
  6. 本格運用開始: 全社的に法令に準拠した保存方法を開始し、適切な運用を徹底します。

税理士は、このプロセス全体を支援し、顧問先の企業がスムーズに移行できるようアドバイスします。

税理士に求められる専門性と支援

電子帳簿保存法における税理士の役割

電子帳簿保存法への対応において、税理士は単なる会計処理のサポートだけでなく、デジタル化や業務の効率化を推進するコンサルタントとしての役割も求められます。具体的には、企業がスムーズに電子保存の要件を満たすよう、システム選定や事務処理規程の策定、社員教育まで幅広い支援を行うことが重要です。

具体的な支援内容

税理士が顧問先に提供すべき具体的な支援内容は、以下の通りです:

  • 法令順守のためのアドバイス: 最新の電子帳簿保存法に対応するための適切な手段を提案。
  • システム導入のサポート: クラウド会計ソフトやERPシステムの選定、導入支援を行う。
  • 事務処理規程の作成支援: 手動保存対応時の適切な事務処理規程の策定をサポート。
  • 社内研修の実施: 社員が電子保存に関する業務フローを理解し、適切に運用できるよう指導。
  • 定期的な監査と運用の見直し: 定期的に電子帳簿保存の状況を確認し、必要に応じて改善提案を行う。

これらの支援を通じて、税理士は企業の信頼を高め、長期的な顧問契約の維持や新規顧客の獲得につなげることができます。

監修者

徳永 圭

監修税理士からのワンポイントアドバイス

デジタル庁創設など政府が強力に推し進めていることもあり、世の中の流れとしてDX化が推進されるであろうことに異論がある方はいないでしょう。税制もこの流れに合わせた動きをしています。その一つが改正電子帳簿保存法です。
税理士の主なお客様である中小企業経営者さんの話を大まかにまとめると、世の中の流れは理解しているが電子帳簿保存法に対応する為だけに大規模システムを導入するのは難しいという声が圧倒的でした。
そうした声が政府に届いたのか、当初の要件から大幅に緩和されておりシステム導入しなくても対応可能となっています。最低限法令順守をしつつ、記事で取り上げられている項目の内、タイミングを見て取り組めるものがあれば取り組むという姿勢から入るのが良いでしょう。
私のオススメはクラウド会計導入。仕訳データに直接証拠書類添付が可能で、クラウド上にデータ保存でき、かつ、検索も容易です。

まとめ:デジタル化時代の税理士の役割

改正電子帳簿保存法への対応は、企業にとって単なる法令順守を超えて、デジタル化と業務効率化を推進する重要なステップとなります。税理士は、専門知識を活かして顧問先に適切なソリューションを提案し、法令順守だけでなく、企業の成長に寄与する役割を担うことが期待されます。

今後、企業のデジタルトランスフォーメーション(DX)が進む中で、税理士の役割はより一層多岐にわたり、専門性の高いアドバイザーとしての価値がますます重要になってくるでしょう。法対応を支援するだけでなく、業務効率化のパートナーとしても、税理士は不可欠な存在となることが予測されます。企業の成長と効率化を支えるパートナーとしての税理士の役割を再認識し、電子帳簿保存法を効果的に活用していくことが求められています。

この記事の監修者
徳永税理士事務所
所長 徳永 圭(税理士)
大学で財務会計ゼミに入ったことがきっかけとなり税理士資格を取得。総合不動産会社、不動産証券化(SPC)特化型事務所、総合会計事務所を経て令和へ年号が変わるとともに開業。これまでの職歴から不動産周りの税務会計、資産税(相続)に強みがあります。

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この記事の執筆者
税理士紹介センタービスカス編集部
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