会社(法人)が決算をする際に税理士は不要なのか?自力決算のメリットデメリットを解説
- 最終更新日:
- 2024/05/07
税理士がいない状態での決算をするメリット
税理士への顧問費用がかからない
一般的に、法人が会計業務及び税務申告の監査を税理士に依頼する場合、税理士と顧問契約を結んで業務を依頼することになります。契約の形態は、月次監査を含め全ての業務を一括で依頼するケースや、月次は社内監査で済ませ決算のみ税理士に依頼するケースなど様々です。当然ですがいずれのケースも税理士に対する報酬費用が発生します。特に決算に関しては月次監査と異なり、計算した利益をもとに税額を確定する重要な作業を行いますので報酬額は高くなります。かつては税理士の報酬規程がありましたが、現在は廃止されていますので報酬に関する明確な基準はありません。しかし相場としては「月次監査料金の5~6ヶ月分」を請求されるケースが多いようです。自社で決算をすればこの決算費用を抑えることができます。
決算業務にかかる煩雑なやり取りが不要
税理士に決算業務を依頼した場合、税理士は月次の会計処理や税務申告の内容について必ず精査を行います。クライアントからの依頼で税務申告書類を代理で作成・提出したり、税務調査に立ち合うことができる「税務代理」を行います。税務代理をする以上、税理士には利益や税額に対する責任が生じますので、決算内容について細かくチェックするのは当然であるといえます。結果として、決算では税理士に証拠資料を提出したり、内容について答弁したりといった業務が増えることになります。例えば、棚卸資産の残高を証明する資料として作成する「在庫表」は、ご自身で在庫数量を実地でカウントして作成します。税理士によっては、この在庫表の内容は勿論のこと、在庫表を作成するにあたって記入した在庫数量のメモ(原始記録)も含めて細かに精査するケースがあります。在庫表とメモをセットで税理士に提出し精査を受け、質問事項に答弁して間違いがあれば訂正したうえで再提出といった流れです。在庫表に限らず決算業務全般でこのような作業を行う可能性がありますので、やり取りが非常に煩雑になる可能性があります。その点、自力で決算を行えば、こういった税理士とのやり取りを省くことができるのもメリットです。
税理士がいない状態での決算をするデメリット
決算・申告のための税務作業を自分でやる必要がある
自力決算はコストや書類等のやり取りの時間でみれば業務負担を省略できるメリットは大きいのですが、反面、デメリットもあります。まずは決算業務の流れを簡単なフローチャートにしてみましょう。
顧問契約の内容にもよりますが、もし税理士に会計から税務申告まで一連の監査業務を依頼した場合、上記の作業は税理士が関与してくれます。特に、期限のある確定申告書の提出や納税についての期日管理をしてくれるのは安心感があります。しかし自力で決算をするケースでは、決算監査から確定申告書提出・納税までの業務を全て自分で行わなければなりません。月次処理や決算処理を独自に監査し利益額を確定させ、その利益をもとに税額を計算して確定申告書を作成することになります。申告書の提出や納税は、原則として「決算日後2ヶ月以内」です。決算というボリュームのある一連の作業を期限までに完了させなければならないので簡単ではありません。青色申告の届出をしている会社は、確定申告書の提出が2年連続で遅延してしまうと青色申告の取り消し処分を受けてしまいます。また、納期限を過ぎてしまうと、不納付加算税や延滞税といったペナルティが発生します。自力で決算を行う際にはこれらの期限を常に意識しながら進めなければなりませんので、負担となることが考えられます。
決算内容の信頼性が低下する
税理士は「税務のエキスパート」として、税額を計算・確定させたり税務書類を作成する業務を独占的に行うことが税理士法により認められています。それだけに、税理士が職責を果たして行う決算監査の内容は信憑性の高いものとなります。仮に自力決算を行った場合、税理士が付与する決算の信憑性を欠くことになるのです。これは税務当局は勿論のこと、取引先や金融機関といった第三者の立場にある方の判断にも影響を与えます。会社が計算する利益や税額に恣意が入ってはいけませんが、公平な立場にある第三者からの監査を受けていない分、公平性・正当性があるのか疑問を抱かれる可能性があるのです。会社にとって決算は受注や資金繰りなどに影響を与えかねない大切なものですから、信憑性が低下するのは良いことではありません。
また、税理士は顧問契約を結んでいる他のクライアントの税務調査で得たノウハウを豊富に持っています。「このような事例ではこういう指摘を受けた」「このような会計処理をすると税務調査で否認される」といった、税法には書いていない活きた情報を提供することができる分、税務申告の信頼性は高まります。
決算・法人税申告を税理士なしで行なうことのリスク
決算に誤りが発生するリスク
決算業務に税理士を介さないことはデメリットばかりか、リスクも発生する可能性があります。例えば、会計処理において税法上認められていない費用計上を行い、経理担当者がそれについて正しい知識を持ち合わせていなければ、利益の計算を間違えることになります。利益は税額計算に直結しますので、利益の間違いは税額の間違いにつながります。また、税額計算においても適用すれば自社に有利な税制を失念してしまい、過大な税額を納めてしまうといった事態も想定されます。もし税理士が決算業務を行っていれば、こういった間違いや失念に気付き、指摘してくれるかもしれません。しかし自力決算を行った場合、これらの間違いで生じる不利益はご自身が負担しなければならないのです。これからはインボイス制度や電子帳簿保存法が施行され、税法の適用はますます複雑化されることが予想されます。会計処理や税法に関する最新情報について常にアンテナを張り、知識の習得に努める手間を考えた場合、少なくとも決算に関してはプロである税理士に依頼するほうがリスク回避という点では正しい選択かもしれません。
税務調査・追徴課税のリスク
先にも述べましたが、税理士は税務に関する「独占業務」として、税務調査の立ち合いをする権限を有します。税務調査は、会計処理や税務申告全般を対象として、疑義がある点を税務署が直接検証するものです。したがって、税務調査を受ける側もその内容について十分理解し、適切な答弁をしなければなりません。税理士に依頼していれば、税務のエキスパートとして会計処理から税務申告まで内容を把握した上で調査に立ち合いしてくれるでしょう。しかし、自力で決算を行った場合には、税務署に対しご自身で対応しなければなりませんので、不適切な答弁で不利益を被る可能性もあります。結果として、延滞税や加算税も含めた追徴課税が発生するリスクも考慮しなければなりません。
まとめ
税理士の有資格者や税理士業務経験者など、十分な知識を持っている方であれば自力での決算もできるでしょう。しかし、デメリットやリスクを考えた場合、特に決算に関してはプロである税理士に依頼することをおすすめします。
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