法人の確定申告方法は?申告の流れや期限、個人との違いを解説【税理士監修】
- 最終更新日:
- 2024/11/25
- この記事の監修者
- 佐藤大貴税理士事務所 所長 佐藤大貴(税理士)
法人の確定申告とは?
法人の確定申告の目的と必要性
法人の確定申告とは、事業年度終了後に会社の収益や経費などを計算し、納めるべき税金額を確定させて税務署に申告する手続きです。法人税法により、すべての法人は確定申告を行うことが義務付けられています。この手続きは、国や地方自治体の税収確保だけでなく、企業の適正な納税と経営の透明性を担保する重要な役割を果たしています。
法人と個人の確定申告の違い
法人と個人の確定申告には、いくつかの重要な違いがあります。まず申告期限について、個人の場合は毎年3月15日までと定められていますが、法人の場合は事業年度終了後2ヶ月以内となります。また、申告する税金の種類も異なり、法人の場合は法人税や法人住民税・事業税など、法人特有の税金を申告する必要があります。
法人の確定申告の種類
法人税
法人税は国に納める税金で、法人の所得に対して課税されます。課税所得金額に税率を乗じて計算され、資本金の額によって税率が異なります。中小法人の場合、年800万円以下の所得に対しては軽減税率が適用されます。
消費税
売上高が1,000万円を超える法人は、消費税の確定申告が必要です。課税期間における課税売上げに係る消費税額から、課税仕入れ等に係る消費税額を控除して計算します。
法人事業税
都道府県に納める税金で、法人の事業活動に対して課される税金です。所得金額を課税標準として計算され、事業の種類や規模によって税率が異なります。
法人住民税
都道府県民税と市町村民税からなり、法人の所得金額と資本金等の額を基準に課税されます。地方自治体によって税率が異なる場合があります。
法人の確定申告の流れ
確定申告の事前準備
法人の確定申告を円滑に進めるためには、日々の帳簿付けと領収書の整理が重要です。年度末に慌てることのないよう、毎月の経理処理をしっかりと行いましょう。
確定申告の準備として、以下の書類を整理することが必要です。
- 仕訳帳・総勘定元帳:仕訳帳には日々の取引を正確に記録し、総勘定元帳には各勘定科目の期首からの累計額を記入します。これらは決算書作成の基礎となる重要な帳簿です。
- 預金通帳・領収書:すべての事業用口座の通帳と、取引の証拠となる領収書を月別に整理します。特に経費の領収書は、税務調査の際の証憑となるため、品目や金額が明確に分かるものを保管しておく必要があります。
- 決算関係書類:月次試算表や在庫一覧、固定資産台帳など、決算時に必要となる書類を準備します。減価償却費の計算や棚卸資産の評価など、決算整理仕訳に必要な資料も含まれます。
- 前期の確定申告書の控え:前期の申告内容との整合性を確認するために、確定申告書や決算書の控えを用意します。税務調査の際にも確認される重要な書類となります。
決算書と申告書の作成方法
確定申告に必要な決算書類は、企業の財務状況を正確に表す重要な書類です。主に貸借対照表、損益計算書、株主資本等変動計算書で構成されます。
貸借対照表では会社の資産・負債・純資産を明らかにし、損益計算書では事業年度の収益・費用と利益を計算します。株主資本等変動計算書は、純資産の変動状況を示す書類です。
これらの書類作成には、会計ソフトの活用が効果的です。日々の取引データを正確に入力しておけば、決算時に自動で集計・作成することができます。特に複雑な仕訳や税務調整が必要な場合は、税理士に依頼することで正確な決算書作成が可能となります。
申告書の提出方法
法人の確定申告書は、e-Taxによる電子申告か書面による提出のいずれかの方法で行います。特に資本金1億円超の大法人は、電子申告が義務付けられているため注意が必要です。
e-Taxを利用する場合は、電子証明書の取得が必要となります。基本的には24時間申告が可能で、収受日時が即時に確認できる利点があります。一方、書面による提出の場合は、税務署への持参か郵送で行います。提出した申告書の控えは重要な書類として必ず保管しておきましょう。
税金の納付方法
確定した税額の納付は、企業の状況に応じて最適な方法を選択できます。主な納付方法として、口座振替、電子納税、金融機関や税務署の窓口での納付があります。
電子納税はe-Taxと連動しており、即時または予約納付が可能です。口座振替を利用する場合は、納期限までに必要な残高を確保しておく必要があります。窓口での納付は、領収証書が即時に発行される利点があります。
いずれの納付方法を選択する場合も、期限内納付を確実にするため、事前に資金繰りを検討しておくことが重要です。納付遅延による延滞税や加算税を避けるためにも、計画的な資金準備を心がけましょう。
法人の確定申告に必要な書類
決算書類
法人の確定申告では、会社の財務状況を正確に表す決算書類の提出が不可欠です。必要な決算書類は以下の通りです。
- 貸借対照表:会社の資産・負債・純資産の状況を示す基本的な財務諸表です。決算日時点での財政状態を表すため、現金預金や売掛金、固定資産などの資産と、借入金や買掛金などの負債を正確に計上する必要があります。
- 損益計算書:1年間の企業活動による収益・費用と利益を示す書類です。売上高や売上原価、販売費及び一般管理費などの項目を適切に区分し、経営成績を明確に表示します。
- 株主資本等変動計算書:純資産の各項目がどのように変動したかを示す書類です。当期純利益による増加や配当金の支払いによる減少など、資本金や利益剰余金の動きを記録します。
- 勘定科目内訳明細書:各勘定科目の内容を詳細に記載する書類です。売上高の取引先別内訳や、固定資産の取得・売却の明細など、重要な取引の詳細を明らかにします。
申告書類
法人税の確定申告では、以下の申告書類を作成し、提出する必要があります。
- 法人税申告書:申告書の基本となる書類で、課税所得金額や税額の計算結果を記載します。各種税額控除の適用状況も、この別表で明らかにします。
- 事業年度分の所得に係る計算書:確定した決算を基に、税務上の加算・減算項目を調整して課税所得を計算する書類です。役員給与や交際費、減価償却費などの処理が適切か確認が必要です。
- 所得の金額に関する明細書:税務上の欠損金や各種引当金など、期中の増減や期末残高を記録する書類です。繰越欠損金の控除限度額の計算なども含まれます。
- その他、事業内容に応じた必要な別表類:特別な税額控除を受ける場合や、グループ法人税制を適用する場合など、事業内容に応じて必要な別表を追加で作成します。
添付書類の一覧
確定申告書には、企業活動の実態を示す各種の添付書類が必要です。主な添付書類は以下の通りです。
- 決算書一式:先に挙げた貸借対照表や損益計算書などの決算書類一式です。注記表なども含めて提出することで、会社の財務状況を詳細に説明します。
- 勘定科目内訳明細書:主要な勘定科目の内容を詳しく記載する書類です。現預金や売掛金、買掛金、在庫、固定資産、借入金など、重要な項目については取引先や金額の内訳を明記します。
- 会社事業概況書:会社の基本情報や事業内容、従業員数などを記入する書類です。事業年度における経営状況の変化や今後の展望なども記載します。
- 適用を受ける税額控除等の明細書:研究開発税制や賃上げ促進税制など、各種の税額控除を適用する場合に必要な明細書です。控除の要件を満たしていることを示す資料も添付します。
- 地方税の申告書類:法人住民税や事業税の申告に必要な書類です。事業所が複数の地域にある場合は、所在地ごとに必要な申告書を作成します。
法人の確定申告の期限とペナルティ
法人の確定申告期限
法人の確定申告は、事業年度終了後2ヶ月以内に行う必要があります。例えば、3月決算の会社であれば、5月末日が申告期限となります。なお、申告期限の延長申請を行うことで、1ヶ月の期限延長が認められる場合があります。
期限を過ぎた場合のペナルティ
申告期限を過ぎると、以下のようなペナルティが課されます:
- 無申告加算税:期限内に申告しなかった場合、税額の15%〜20%
- 延滞税:納付期限を過ぎた場合、年率2.4%〜8.7%
- 過少申告加算税:申告額が過少だった場合、税額の10%〜15%
法人の確定申告に役立つサポートツール
クラウド会計ソフトの紹介
近年、確定申告の業務効率化に大きく貢献しているのが、クラウド会計ソフトです。インターネット環境があれば、いつでもどこでも会計業務が行える利便性が特徴です。
- 自動仕訳機能:銀行口座やクレジットカードと連携することで、取引データを自動的に仕訳に変換します。これにより、手入力の手間が大幅に削減され、入力ミスも防ぐことができます。
- 決算書の自動作成:日々入力された仕訳データをもとに、貸借対照表や損益計算書などの決算書を自動で作成します。決算時期の作業負担を軽減し、効率的な確定申告準備が可能となります。
- e-Tax連携機能:確定申告データを電子申告用の形式に変換し、e-Taxへスムーズに連携できます。これにより、申告書類の作成から提出までの一連の作業を効率化できます。
- 領収書のデータ化機能:スマートフォンで撮影した領収書を自動的にデータ化し、必要な情報を抽出します。紙の領収書の管理や手入力の手間を省き、経費処理を効率化できます。
税理士のサポート活用方法
税理士は会計・税務の専門家として、確定申告業務を総合的にサポートします。
- 決算書・申告書の作成代行:確定申告に必要な書類を正確に作成します。税法の改正にも対応した適切な処理を行い、申告書の記載漏れや誤りを防ぐことができます。
- 税務調査への対応:税務調査の立ち会いや、必要書類の準備、質問対応など、調査全般のサポートを行います。事前の対策から事後のフォローまで、安心して任せることができます。
- 税務相談や節税アドバイス:日常的な税務相談から、節税対策の提案まで、企業の状況に応じた適切なアドバイスを提供します。特に決算期前の税額試算や対策は、計画的な資金管理に役立ちます。
- 経営に関する助言:税務面だけでなく、財務分析や事業計画の策定など、経営全般についての助言も得られます。企業の成長をサポートする良きアドバイザーとなります。
確定申告を税理士に依頼すると、煩わしい申告作業から解放されます。税理士に支払う費用はかかるものの、専門的な知識をもとに節税対策の提案を受けることができます。
確定申告を依頼できる税理士を見つけたい方は、まずは税理士紹介センターの無料相談窓口で問い合わせてみるのがおすすめです。
法人の確定申告を効率的に進めるポイント
申告準備のタイミング
確定申告を効率的に進めるためには、計画的な準備が不可欠です。以下のようなスケジュール管理を心がけましょう。
- 毎月の経理処理:日々の取引を着実に記録し、月末には必ず残高確認と帳簿の締めを行います。遅れを出さない習慣づけが、後の作業を円滑にします。
- 四半期ごとの確認:3ヶ月ごとに帳簿の確認と修正を行い、問題点の早期発見と対応を図ります。特に税金の中間申告がある場合は、この機会に書類の準備も進めます。
- 決算期2ヶ月前の準備:本格的な決算準備を開始し、必要書類の収集や税額の試算を行います。税理士への依頼がある場合は、この時期に相談を始めることをおすすめします。
- 余裕をもった申告完了:申告期限の直前は税務署が混雑するため、前倒しでの申告完了を目指します。不測の事態に備えた時間的余裕も確保できます。
会計システムの活用
会計システムを導入することで、確定申告業務の効率化と正確性の向上が図れます。主な利点は以下の通りです。
- 経理業務の効率化:自動仕訳や領収書のデータ化により、日常の経理業務が大幅に効率化されます。作業時間の短縮と人件費の削減につながります。
- ミスの軽減:手入力を減らすことで、人為的なミスを防ぐことができます。データのチェック機能により、入力ミスも早期に発見できます。
- 経営状況の把握:リアルタイムで財務状況を確認できるため、タイムリーな経営判断が可能になります。グラフや分析機能により、経営課題も視覚的に把握できます。
- 税理士との連携:クラウド上でデータを共有することで、税理士とのやり取りがスムーズになります。質問や修正にも素早く対応できます。
税理士の選び方とメリット
確定申告を確実に行うため、信頼できる税理士を選ぶことが重要です。以下のポイントに注目して選定しましょう。
- 専門知識と経験:業界特有の会計処理や税務上の注意点を熟知していることが重要です。豊富な経験により、適切なアドバイスが得られます。
- コミュニケーション力:質問や相談にわかりやすく回答し、必要な情報を的確に伝えられる税理士を選びましょう。定期的なコミュニケーションにより、信頼関係を築けます。
- 事務所の体制:複数の税理士や職員がいる事務所では、急な対応や繁忙期でも安定したサービスが期待できます。バックアップ体制も確認しましょう。
- 費用対効果:顧問料や記帳代行料などの費用が、提供されるサービスに見合っているか検討します。節税効果なども含めた総合的な判断が必要です。
佐藤 大貴
監修税理士からのワンポイントアドバイス
法人の確定申告は、個人の確定申告と違い申告書も多岐にわたり、かつ、複雑といえます。
日々の記帳や領収書の整理は個人と同じといえます。しかし、個人の確定申告を自身でやっていたので、法人の確定申告もできるということではありません。法人の確定申告は、本文にもあるとおり、個人の確定申告には無い、別表が複数存在すること、科目内訳書や概況書もあります。
また、個人の確定申告であれば、国税庁が提供している確定申告書作成コーナーで作成することができますが、法人はそのようなツールはありません。
したがって、法人の確定申告は、税理士に依頼をすることが一般的といえます。自身でおこなうこともできないことはないですが、ミスなどが生じる可能性も高いので、税理士に依頼をすることを推奨します。
まとめ
法人の確定申告は、企業経営において避けて通れない重要な業務です。適切な準備と計画的な実行、そして必要に応じて専門家のサポートを受けることで、正確かつ効率的な申告が可能となります。特に、税務の専門家である税理士のサポートは、企業の健全な成長に大きく貢献します。
確定申告でお悩みの方は、4,200所以上の税理士事務所と提携し、29年の実績を持つ税理士紹介センターにご相談ください。経験豊富な税理士コーディネーターが、お客様の状況やニーズに合わせて最適な税理士をご紹介いたします。まずは気軽にお問い合わせください。
- この記事の監修者
- 佐藤大貴税理士事務所 所長 佐藤大貴(税理士)
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