株式や投資信託ほどメジャーではない資産運用方法に、ソーシャルレンディングがあります。人とは違う資産運用がしたい、資産運用に対する知識を深めたい、資産運用先を増やしてリスク分散を図りたい、という方に向けて、ソーシャルレンディングの特徴や注意点、始め方を解説します。
ソーシャルレンディングはどんな資産運用方法か?
ソーシャルレンディングの特徴
インターネット上で行われる資金融資を、ソーシャルレンディングと言います。通常は銀行などの金融機関を介する資金調達を、インターネットで直接、貸し手と借り手を結びつけて行う仕組みのことです。
融資対象となるのは企業ではなく、1件1件の事業です。貸し手となる投資家は事業が成功して無事に償還が受けられる案件かどうかを検討して、投資先を決定します。
ソーシャルレンディングには事業失敗による貸し倒れ、遅延、分配金未払いといったリスクがあります。メリットは利回りが比較的良く、効率的な資産運用が可能な点です。
クラウドファンディングとの違い
クラウドファンディングは、ソーシャルレンディングと同じようにインターネット上で行われる資金調達方法です。プロジェクトを提示して賛同者を募り、資金協力を求めます。見返りの有無、協力方法によって、クラウドファンディングは大きく3種類に分類されます。
- 寄付型クラウドファンディング…見返りのないクラウドファンディング
- 投資型クラウドファンディング…リターンがあるクラウドファンディング
- 購入型クラウドファンディング…商品を購入して代金で支援するクラウドファンディング
ソーシャルレンディングもインターネット上で資金融資を行う点で、クラウドファンディングの1つだと考えられています。クラウドファンディングとしてソーシャルレンディングは、貸与型クラウドファンディングや融資型クラウドファンディングと呼ばれます。
ソーシャルレンディングのデメリットと注意点
短期的な資産運用方法で忙しい人には不向き
株式や投資信託は企業を対象にした資産運用方法であるのに対し、ソーシャルレンディングは企業が行う事業が対象になります。そのため事業が終了すれば資金の必要はなくなり、融資は償還されてしまいます。資産運用を継続して行うためには、新たに別の案件を探さなければなりません。
ソーシャルレンディングの融資案件は、ほとんどが半年から2年程度の期間設定をされています。資産を遊ばせることなく運用するためには、このサイクルで違う案件を探し続ける必要があります。資産運用のために時間がそれほど割けない人には向いていないので、注意しましょう。またじっくりと腰を落ち着けて資産運用したい人にもソーシャルレンディングはおすすめできません。
早期に償還することが多く計画変更を余儀なくされる
ソーシャルレンディングには早期償還される案件があることにも注意が必要です。早期償還とは融資対象であった事業が上手くいき、予定より早く返済されるケースです。貸倒れることなく無事に資金の償還は受けられますが、計画通りの資産運用ができなくなります。償還された資金は次の運用に回すまで遊ばせることになり、効率的ではありません。
ソーシャルレンディングでの資産運用では、早期償還された場合にすぐに対応できる柔軟性も求められます。資金を遊ばせることなく効率的に運用するためには、次の運用方法をすぐに決定できなくてはなりません。変更を余儀なくされる場合があることを考慮に入れ、すぐに対応できるようにしておくことが大切です。
取扱事業者に問題が発生するリスクも
ソーシャルレンディングでは、取扱事業者の不祥事も多く発生しています。いち早く事業開始したmaneoをはじめ数社が虚偽の表示や誤解を受ける表示を行っていたとして、金融庁(財務局)から登録取消しや業務停止命令処分などの行政処分を受けています。例えば、具体的な指摘事項には担保設定がないにも関わらず債権が保全されているように表示されている、拠出金が他の目的に流用されている、事業自体が実在していない、といったものです。
ソーシャルレンディング取扱事業者がこのような行政処分を受けると、投資した資金の回収も危ぶまれます。トラブルに巻き込まれないためには過去に問題を起こしていないか、信頼できるかどうかを十分に検討して、利用するソーシャルレンディング取扱事業者を選ぶことも重要です。
またソーシャルレンディングを取り扱うためには金融庁から第2種金融商品取引業の登録を受ける必要がありますが、登録なしで取り扱いを行っている業者も存在しています。金融庁からの注意喚起も行われているので、十分に気をつける必要があります。
ソーシャルレンディングの始め方
ソーシャルレンディング取扱事業者を決める
ソーシャルレンディング取扱事業者は日本で初めてサービス提供を開始したmaneoをはじめとして、現在は20社程度だとされています。各事業者によってそれぞれ取り扱っている案件、特徴は異なっています。違いを十分に比較・検討して、利用する取扱事業者を選ぶことが大切です。
maneo
maneoは2008年にサービスを開始した、日本初のソーシャルレンディング取扱事業者です。多くの成立案件を持ち、最大手に位置づけられています。利回りは5~8%で、主に事業会社向けの不動産担保融資を取り扱っています。運用期間が1~36ヶ月と、幅広いことが特徴です。
SBIソーシャルレンディング
SBIソーシャルレンディングは東証一部上場企業であるSBIホールディングスの子会社です。2008年に設立され、2011年3月よりサービス提供を開始しました。インターネット総合金融グループの一員として、SBIグループ企業により事業運営が行われています。利回りは2.5~10%とソーシャルレンディングとしては高くありませんが、それだけ安全な優良案件を厳選して取り扱っていると評価されています。
クラウドクレジット
海外事業への融資を行っているのが、2014年6月創業のクラウドクレジットです。様々な国の人や事業者のローンに対する投資によって、世界の成長へとつながることを目指しています。4.0~12%と高利回りになっていますが、元本割れした案件も少なくありません。
投資先と金額を決定する
ソーシャルレンディングでの資産運用を始めるためには、次に投資先を決める必要があります。事業の内容や期間、利回りの他に、ソーシャルレンディングでは担保の有無も重視するポイントになります。
事業内容は不動産や開発事業、設備投資、海外事業支援など、多岐にわたっています。社会や経済の状況、事業が行われる場所、規模などから、完遂が望めるかどうかを見極め、投資先を決定することが大切です。
またソーシャルレンディングには資産運用の他に、社会貢献の側面もあります。世の中に役立つ事業に積極的に投資する考えでの利用も可能です。期間や利回りと合わせて、事業内容についてもしっかりとした考察を行いましょう。
また、事業が不成功に終わった場合でも、投資金額が返却されるかどうかに大きく関わってくるのが、担保の有無です。担保ありの案件であれば投資金額は無事に償還されることが期待できますが、担保なしの案件であれば貸し倒れとなる危険の方が高くなります。貸し倒れリスクコントロールにつながるので、他の条件と合わせて担保の有無は投資先決定のポイントとしましょう。
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まとめ
株式や投資信託のようなありふれたものではない資産運用方法にソーシャルレンディングがあります。少額でも始められ非常に手軽ではあるものの、ソーシャルレンディングならではの手間やリスクもあります。資産運用として取り入れる際は、デメリットや注意点も十分に考慮しましょう。