法人と個人事業主に課税される税金は 工夫次第で節税できる | MONEYIZM
 

法人と個人事業主に課税される税金は
工夫次第で節税できる

事業活動に伴い、法人と個人事業主ともに、さまざまな税金が課されます。両者では、具体的に課される税金の種類と計算方法が異なります。また、税金の種類によって節税効果のある・なしに枝分かれします。そこで、法人と個人事業主に課税される税金の種類とその節税効果について解説します。

所得金額に課税される税金とは?

法人と個人事業主は事業活動で得た収入金額(=売上高)から経費を差し引いた所得金額に対して、さまざまな種類の税金が課されます。家賃などの経費同様に節税効果があるかどうかは気になるところではないでしょうか。

法人と個人事業主の所得金額に課税される税金

所得金額に対して課税される点では共通していますが、税金の種類は異なります。その違いについて、おもな税金を例に見ていきましょう。

(1)法人
税金の種類 内容
法人税 所得金額に税率を掛けて計算する
住民税 所得割 法人税に税率を掛けて計算する
均等割 所得金額の有無に関係なく年7万円以上課税される
利子割 預金利子に対して課税される
事業税 所得金額に税率を掛けて計算する
所得税 所得金額のうち、法人の預金利子や株式配当に課税される
(2)個人事業主
税金の種類 内容
所得税 所得金額に税率を掛けて計算する
住民税 所得割 所得金額に税率を掛けて計算する
均等割 所得金額の有無に関係なく一律5,000円課税される(非課税のケースあり)
利子割 預金利子に対して課税される
事業税 不動産投資など特定の業種に限定して、所得金額に税率を掛けて計算する

法人と個人事業主では税金の計算方法が異なる

ここでは、おもな税金の種類について、法人と個人事業主の異なる点を見ていきましょう。

具体例 適用される税金の種類 異なる点
黒字(所得金額がプラス)の場合 ・法人:法人税・住民税・事業税

・個人事業主:所得税・住民税・事業税

・法人の税率はほぼ一律なのに対して、個人事業主は累進課税制度により、所得金額に応じて7段階(5~45%)に区分される

・法人の事業税は所得金額の全額が課税対象に対して、個人事業主は年290万円の所得控除が適用される

赤字の場合 住民税の均等割 法人は必ず年7万円以上課税されるのに対し、個人事業主は一律5,000円である

節税できる税金・できない税金

節税できる税金・できない税金について、個別に解説します。

(1)節税できる税金

「経費に落とすタイプ」と「税金から控除するタイプ」に大別できます。節税できる金額は、前者が負担した金額の税率分に対して、後者は負担した金額の全額です。
・事業税
法人と個人事業主ともに経費として落とせます。経費に計上するタイミングは確定申告をした時点です。
・法人に課税される所得税
預金利子や株式配当から控除される所得税は法人税から控除できます。また、控除しきれない分は還付されます。
・法人に課される住民税の利子割
預金利子に課税される利子割は住民税から控除できます。また、控除しきれない分は還付されます。

(2)節税できない税金

次の税金は経費に落としたり、税金から控除したりできません。
・法人と個人事業主の共通する税金
法人税、住民税の所得割と均等割
・個人事業主のみ
所得税と住民税の利子割

資産に課される税金とは?

資産を保有していたり、取得(購入)したりする場合に課税されます。税金の種類と節税方法について解説します。

法人と個人事業主に課税されるおもな税金

ここでは、課税される税金のアウトラインを見ていきましょう。

税金の種類 内容
固定資産税 土地 30万円以上の土地を法務局へ登記(登録)した日の翌年に課税される
建物 20万円以上の建物を法務局へ登記(登録)した日の翌年に課税される
機械設備やパソコンなど自動車を除く動産の固定資産(ソフトウエアを除く) 保有している資産の帳簿価格(現在価値)が150万円以上の場合に課税される
自動車関連のおもな税金 自動車税 登録した日の翌月から課税される
軽自動車税 毎年4月1日に登録している軽自動車に対して課税される
不動産取得税 土地や建物を取得した場合に課税される(相続により取得した場合を除く)

リース資産に固定資産税は課税されない

そもそも固定資産税は所有者に対して課税されます。事務所を賃貸契約しても、借主は固定資産税を納付しません。リース資産も同様です。
たとえば、200万円の複合機を使用していると仮定します。取得した場合、「200万円×1.4%=2万8000円」の固定資産税が課税されます。一方リースの場合、同額2万8000円の固定資産税は所有者のリース会社が負担します。
このように、固定資産税の節税方法のひとつにリースを活用する方法があります。

賦課されたときが経費に落とせるタイミング

上記の税金は経費として計上可能です。しかし、納税の有無は関係ありません。賦課(=相手が納税通知した日)のあった年度に経費として落とすことが可能です。

たとえば、4,000万円の社屋を新規に取得したと仮定します。不動産取得税は「4,000万円×4%=160万円」が課税されます。そのとき、決算日(個人事業主の場合は12月31日)まで賦課されれば、確定申告で160万円を経費に落とせますが、決算日よりも1日でも遅ければ、経費として計上できません。

資産の購入・登録を1日延ばして節税する方法

上記の税金は資産を購入・登録したタイミングに応じて課税します。そのため、購入・登録を1日延ばすことで節税することが可能です。それでは、個々のケースを見ていきましょう。

(1)固定資産税

土地・建物は1月1日時点で法務局に登録されている資産に対して、課税されます。そのため、登録する日を1月2日以降に延ばすことで、1年分の固定資産税が免除されます。

(2)自動車税

登録した日の翌月から課税されます。そのため、自動車の登録日を月末より、月初めにすることで、1カ月分の自動車税が節税できます。

(3)軽自動車税

4月1日に登録されている軽自動車に対して課税されます。そのため、登録する日を4月2日以降に延ばすことで、1年分の軽自動車税が節税できます。

取引にかかる税金とは?

法人と個人事業主、双方とも商取引そのものに課税されます。関税など多岐にわたりますが、ここではおもな税金について解説します。

おもに消費税と印紙税が課税される

消費税の納税額は多額になる傾向があります。印紙税もまたわかりにくい税金です。まずはアウトラインを押さえましょう。

(1)消費税

商取引で顧客や取引先から預かった消費税を税務署へ納税しなければなりません。納税額の計算方法は「販売により預かった消費税-購入するときに支払った消費税=手元に残った消費税」です。

しかし、納税する義務のある法人や個人事業主は一定の規模以上に限られます。具体的には次の通りです。
・前々年度の課税売上高が1,000万円を超える法人・個人事業主
・設立日の資本金が1,000万円以上の法人

(2)印紙税

領収書や契約書など税額が取引金額に比例するものから定款作成のように一律4万円まで多岐にわたります。これら課税文書は限定列挙されているのが特徴です。請求書など列挙されていない文書は非課税です。

消費税と印紙税はもちろん経費に落とせる

これらの税金は経費に落とせます。ここでは、経費に落とせるタイミングについて解説します。

(1)消費税

消費税の経理処理方法により、経費に落とせるタイミングは異なります。その経理処理方法とは「税抜経理方式」と「税込経理方式」です。

・税抜経理方式
決算書の売上高などの金額を税抜で表示する経理のことを指します。あらかじめ預かった消費税を利益(≒所得金額)と区別しているため、経費に落としているのと同じ結果となります。ただし、課税事業者(=消費税を納税すべき法人・個人事業主)のみが採用できる経理方式です。

・税込経理方式
決算書の売上高などの金額を税込で表示する経理のことを指します。預かった消費税を利益(≒所得金額)に含めているのが特徴です。そのため、経費に落とすタイミングは決算日または申告した日を自由に選択できます。たとえば、所得金額が多いときは前者を選択して前倒しで消費税を経費に落とせます。反対に所得金額が少ないときは後者を選択し、経費に落とす時期を来年度に先延ばしできます。

(2)印紙税

購入した日または使用した日を選択できます。しかし、消費税の税込経理方式と違い、「今年度は購入した日、来年度は使用した日」といったように自由に選択できません。そのため、実務上では購入した日に経費に落とすケースが多くなります。決算時に印紙の在庫を数える必要が無いため、事務負担が軽減できます。

消費税の経理処理は税抜経理方式で節税しよう

結論から申し上げます。売上高だけでなく、在庫や固定資産などを購入したときも本体価格と消費税が区別して表示されるため、税抜経理方式の場合は消費税分が経費に落とせます。

たとえば、購入金額1,080万円(本体価格1,000万円+消費税80万円)の在庫があると仮定します。税抜経理方式の場合、消費税80万円は自動的に経費に落とせます。

反対に税込経理方式の場合は、消費税80万円が資産(=利益)に計上されます。消費税分だけの資産が計上される結果、「在庫(=資産)の金額=売れ残った在庫の金額」が膨らみ、「売上原価の金額=売った商品などの原価」は小さくなるため、利益(≒所得金額)が余計に大きくなるからです。

消費税と印紙税の意外な関係

実はこの2つの税金は密接に関係しています。具体例を2つ挙げます。

(1)消費税を用いると印紙税が節税できる

領収書は5万円以上から印紙税が課税されます。その金額を判定するときに消費税が関係してきます。

たとえば、購入価格5万1,840円(本体価格4万8,000円・消費税2,840円)の領収書があると仮定します。領収書に消費税が記載されていれば本体価格が印紙税の基準となり、5万円未満なので非課税です。

反対に消費税が記載されていなければ、本体価格は領収書からは読み取れません。そのため、購入価格5万1,840円が印紙税の基準となり、200円が課税されます。

(2)金券ショップで印紙を購入すると消費税が節税できる

通常、印紙は非課税です。そのため、購入するときには消費税を支払いません。つまり、「本体価格」のみを負担するだけです。したがって、預かった消費税(納税額)を計算するときに、印紙を購入しても消費税分はマイナスできません。

ところが、金券ショップで印紙を購入した場合には、文房具店で事務用品を購入するのと同じように、「本体価格+消費税」を支払ったものとして取り扱われます。そのため、金券ショップで印紙を購入すると、預かった消費税から差し引くことが可能です。

要するに、印紙は金券ショップで購入したほうが消費税の節税につながります。

まとめ

法人と個人事業主に課税される税金の種類とそれに関連する節税方法を解説してきました。工夫次第で節税につながります。たとえば、不動産取得税は賦課されると経費に落とせますが、実際に役所と交渉して前倒しで決算日までに通知してもらったというケースも存在します。印紙を金券ショップで購入するなど、上手に節税に活用しましょう。

阿部正仁
TAX(税金)ライター。会計事務所で約10年間の勤務により調査能力を身に付けた結果、企業分析の能力では高い定評を得、法人から直接調査を依頼される実績も持つ。コーチングスキルを活かした取材力で、HP・メディアでは語られない発言を引き出すのが得意。
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