自己都合退職の「失業保険」の給付が 3ヵ月後→2ヵ月後に短縮されました | MONEYIZM
 

自己都合退職の「失業保険」の給付が
3ヵ月後→2ヵ月後に短縮されました

会社を自己都合で退職した場合の「雇用保険の失業等給付」(失業保険)を受け取れるのは、従来、手続きした日から3ヵ月後でした。これが、2020年10月1日から「2ヵ月後」に短縮されたのをご存知ですか? 転職を考える人にとっては、朗報と言えますが、そもそも失業保険とはどういうもので、どのくらいの期間もらえるのでしょうか? わかりやすく解説します。

2024/3/29追記

厚生労働省は失業手当に関し、毎月振り込まれる受給額をマイナンバーカードの個人向けサイト「マイナポータル」でいつでも確認できるよう変更することを明らかにしました。
ハローワークのシステムとマイナポータルのシステムを連携し、2027年1月の運用開始を目指すとしています。

失業者の求職活動支援が目的

公的保険である雇用保険には、「求職者給付」「就職雇用促進給付」「教育訓練給付」「雇用継続給付」の4種類があります。今回、給付までの期間が短縮されたのは、求職者給付の基本手当で、一般に失業保険と言われるものです。

 

失業状態で無収入の状態が長引けば、日々の生活に支障をきたし、次の職場を探す活動もおぼつかなくなってしまう可能性があります。そうしたリスクを軽減し、円滑に再就職を果たしてもらおうというのが、今回の措置の目的です。

 

ところで、今回対象になったのは、「自己都合による退職」です。「自己都合ではない退職」、例えば会社の倒産や解雇などによる離職の場合は、どうなっているのでしょうか?

「会社をやめたら必ずもらえる」わけではない

失業手当は、失業した人全員に支給されるわけではなく、次のような条件をクリアする必要があります。

 

  • (1)退職日前の2年間に、雇用保険に加入していた期間が12ヵ月以上あること。
    この場合の1ヵ月にカウントされるのは、「賃金支払基礎日数」(有給休暇取得日も含めた出勤日)が11日以上ある月になります。
    なお、解雇などの会社都合で退職した人(後述する「特定受給資格者」)や、65歳以上の人が退職した場合には、「退職日前1年間に、雇用保険に加入していた期間が6ヵ月以上」あれば、適用されることになっています。
  • (2)失業の状態にあること
    支給対象となる「失業」の定義は、「就職しようとする積極的な意思があり、いつでも就職できる能力があるにもかかわらず、職業に就けない」状態を言います。「実際に仕事を探している」ことも条件です。

 

従って、退職後速やかに転職する場合や、逆に当面再就職の意思がない場合、また病気やけが、妊娠・出産などですぐに就職するのが困難な人は、この手当は受け取ることができません。

いつからもらえるのか?

では、実際の支給は、どのように行われるのでしょうか? これも、失業した人が置かれた状況などによって異なります。

 

失業手当をもらうには、離職後にハローワークで所定の手続きをする必要があります。しかし、手続き後すぐに支給されるわけではありません。受給資格決定日(離職した会社から受け取った「離職票」の提出と、求職の申し込みを行った日)から7日間は「待期期間」といって、離職理由にかかわらずすべての人が失業手当を受給できません。

 

  • 自己都合による退職の「給付制限」が短縮された
    通常の転職や独立など、自己都合によって退職した「一般の離職者」の場合には、待期期間の後、さらに「給付制限」の期間が設定されています。今回3ヵ月から2ヵ月に短縮されたのは、この給付制限期間なのです。
    安易な転職を防ぐのが目的で意図的に設けられているのですが、人材の流動化が進む現状に合わせて、1ヵ月短くなりました。ただし、この給付制限が緩和されるのは、「5年間のうち2回の離職まで」という縛りがかけられています。「5年で3回以上」の場合は、従来通り支給まで3ヵ月となります。
  • 「特定理由離職者」には給付制限期間なし
    ただし、自己都合による退職でも、自分の意思に反する正当な理由がある場合は「特定理由離職者」に認定され、待期期間後、給付制限期間なしに、すぐに支給が開始されます。特定理由離職者には、主に以下の人が該当します。

    • 有期労働契約の更新を希望したが、認められず離職した人
    • 出産や育児により離職し、受給期間の延長措置を受けた人
    • 父・母の扶養や介護など、家庭事情の急変により離職した人
    • 配偶者や扶養親族と別居生活を続けることが困難になり離職した人
    • 特定の理由で、通勤が困難になり離職した人
    • 企業の人員整理などで、希望退職者の募集に応じて離職した人
  • 「特定受給資格者」にも給付制限期間はない
    また、自己都合ではなく、会社の倒産や解雇などにより、再就職の準備をする時間的な余裕もなく離職を余儀なくされた人は、「特定受給資格者」に該当し、やはりすぐに支給が始まります。

どのくらいの期間、いくらもらえるのか?

次に、どのくらいの期間支給されるのかをみましょう。これは、雇用保険に加入していた期間や年齢、今述べた退職の理由により、以下のように決められています。

 

●自己都合退職の場合(「一般の離職者」、一部を除いた「特定理由離職者」等)

被保険者期間
10年未満 10年以上20年未満 20年以上
65歳未満 90日 120日 150日

 

●会社都合退職の場合(「特定受給資格者」等)

被保険者期間
1年未満 1年以上
5年未満
5年以上
10年未満
10年以上
20年未満
20年以上
離職時の年齢 30歳未満 90日 90日 120日 180日
30歳以上
35歳未満
90日 120日 180日 210日 240日
35歳以上
45歳未満
90日 150日 180日 240日 270日
45歳以上
60歳未満
90日 180日 240日 270日 330日
60歳以上
65歳未満
90日 150日 180日 210日 240日

 

また、支給金額は、退職日以前6ヵ月間の給与の平均から計算します。

 

1日当たりの給与額(「賃金日額」)=退職日以前6ヵ月の給与÷180日

 

賃金日額には、賞与や臨時に支払われた給与は含まれません。失業保険の1日当たりの金額(「基本手当日額」)は、これに50%~80%の給付率を掛けたものになります。失業手当の総額は、この基本手当日額に、上の表の給付日数を掛ければ、算出することができます。

 

給付率は、年齢や賃金日額によって決まります。また、賃金日額、基本手当日額には、年齢による上限が設けられていて、毎年8月1日に見直しが行われます。詳しくお知りになりたい方は、厚生労働省ホームページ「雇用保険に関する業務取扱要領(令和2年10月1日以降)」をご覧になるか、ハローワークにお問い合わせを。

新型コロナによる離職も対象に

新型コロナウイルス感染症は、雇用にも大きな影響を与えています。その状況を踏まえて、国は、以下の条件に該当する人も特定理由離職者と認める特例措置を設けています。

 

  • ①同居の家族が新型コロナウイルス感染症に感染したことなどにより看護または介護が必要となったことから自己都合離職した場合
  • ②本人の職場で感染者が発生したこと、または本人もしくは同居の家族が基礎疾患を有すること、妊娠中であることもしくは高齢であることを理由に、感染拡大防止や重症化防止の観点から自己都合離職した場合
  • ③新型コロナウイルス感染症の影響で子(小学校、義務教育学校*1、特別支援学校*2、放課後児童クラブ、幼稚園、保育所、認定こども園などに通学、通園するものに限る)の養育が必要となったことから自己都合離職した場合
    *1小学校課程のみ *2高校まで

 

これらの人は、給付制限期間なしに失業手当を手にすることができます。
 

併せて「新型コロナで会社を休んでも傷病手当金がもらえる!傷病手当金の税金とは」をご覧ください。

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緊急事態宣言コロナ時代の失業保険!自己都合退職の給付開始が短縮!|3分でわかる!税金チャンネル

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まとめ

自己都合による退職の場合に設けられている、失業保険の支給までの給付制限期間が、3ヵ月から2ヵ月に短縮されました。新型コロナに対応した、特例措置も講じられています。
 

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マネーイズム編集部
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