新型コロナウイルス感染症の影響拡大により、テレワークや地方での働き方の重要性が、改めて注目されています。政府においても、地方に住みながらテレワークで働くことを奨励しており、100万円の支援についても検討し始めました。
この記事では、政府が公表した、地域移住テレワークで支給される100万円について解説します。
政府が公表した地域移住テレワークで100万円がもらえる内容とは
政府は令和2年度予算の概算要求に、地方創生推進交付金として1,000億円を計上することを決定しました。これは令和3年度から、東京の仕事を続けつつ、テレワークを活用して地方に移住した人に対して、最大100万円を交付することを目的としたものです。
新聞などの報道によるところでは、地域移住テレワークの場合には最大で100万円、地方でIT関連の事業を立ち上げた場合は、最大で300万円の交付を受けられるものになると予想されます。
地域移住テレワークの交付金については、まだ制度の詳細は決まっていません。ただし、今までの地方創生推進交付金に追加(継続)という形で、概算要求がされています。そこで、次項からは、今までの地方創生推進交付金がどのようなものであったのかを確認していきましょう。
まち・ひと・しごと創生法と地方創生推進交付金
実は、地方創生推進交付金は「まち・ひと・しごと創生法」という法律に則った交付金になります。ここでは、まち・ひと・しごと創生法と地方創生推進交付金について見ていきます。
地域移住テレワーク支援金(仮)の背景とまち・ひと・しごと創生法
そもそも、なぜ地域移住テレワーク支援金(仮)の政策が打ち出されたのでしょうか。それには、政府がこれまでに打ち出してきた地方創生の考え方を理解する必要があります。
地方創生についての法律には、平成26年に公布された「まち・ひと・しごと創生法」があります。近年、少子高齢化や東京一極集中により、地方の衰退が問題視されてきました。そうした背景により誕生したのが、まち・ひと・しごと創生法です。
まち・ひと・しごと創生法は、将来にわたって活力ある日本社会を維持していくために、次の施策を講じることを目的として制定された法律です。
- ①少子高齢化の進展に的確に対応し、人口の減少に歯止めをかける
- ②東京圏への人口の過度の集中を是正する
- ③各地域で住みよい環境を確保する
また、平成30年に閣議決定した「まち・ひと・しごと創生総合戦略」では、まち・ひと・しごと創生法に則り、「地方創生版・三本の矢」として「情報支援」「人材支援」「財政支援」の3つの支援をしていくことを掲げています。この財政支援の中に、地方創生推進交付金が含まれています。
地方創生推進交付金とは
地方創生推進交付金とは、「まち・ひと・しごと創生総合戦略」による地方創生の推進に向けた取組を支援するための交付金のことです。地方公共団体の自主的・主体的で先導的な事業や、従来の「縦割り」事業を超えた取組を支援し、安定的な制度の運用を確保することを目的としています。
基本的には、国から都道府県や市町村など、地方自治体への交付金になります。個人や企業は、地方自治体から支援金を受ける形になっているため、地域移住テレワーク支援金についてもこの形をとることが予想されます。
すでに起業支援金、移住支援金もある
実は、地域移住テレワーク支援金(仮)と同様に、地方創生推進交付金を使った支援金もあります。それが、起業支援金と移住支援金です。このたびの地域移住テレワークで100万円の公布が受けられる制度は、起業支援金と移住支援金がもとになっていると考えられます。
ここでは、すでにある起業支援金と移住支援金について見ていきましょう。
起業支援金、移住支援金とは
地方へ移住して社会的事業を起業したり、地域の中小企業に就業したりする場合に、最大300万円の支援金を受け取ることができる制度です。内訳は、起業支援金が最大200万円、移住支援金が最大100万円となっています。
起業支援金とは、地域の課題に取り組む「社会性」「事業性」「必要性」の観点をもった起業に対する支援金のことです。起業に必要な経費の2分の1に相当する額の交付を受けることができます。
移住支援金とは、地域の重要な中小企業等への就業や社会的起業をする移住者に対する支援金のことです。都道府県が主体となって、企業や個人を選定し、100万円以内(単身の場合は60 万円以内)の支援金の交付を行います(都道府県によって金額が異なります)。
起業支援金と移住支援金の内容を見ると、地域移住テレワーク支援金(仮)と似ています。ただし、起業支援金と移住支援金は、2019年度から6年間を目途に地方公共団体が主体となって実施しているものになるため、起業支援金・移住支援金と地域移住テレワーク支援金(仮)は、別枠で創設されるものと考えられます。
起業支援金、移住支援金の対象者
地域移住テレワーク支援金(仮)の対象者も、詳細はまだ決まっていませんが、起業支援金、移住支援金の対象者と同様かそれに近いものになると考えられます。そこで、起業支援金、移住支援金の対象者についても見ていきましょう。
①起業支援金の対象者
起業支援金の対象者は、次のすべての要件を満たす個人または法人です。
- 東京圏以外の道府県又は東京圏内の条件不利地域で、社会的事業の起業を行うこと
- 公募開始日から、補助事業期間完了日までに個人で開業もしくは法人の設立を行うこと
- 起業した都道府県内に居住していること、又は居住する予定であること
東京圏とは東京都、埼玉県、千葉県、神奈川県のことをいいます。条件不利地域とは、過疎地域自立促進特別措置法や山村振興法の対象地域などの一定の地域のことです。
起業支援金の交付までの流れは、次のようになります。
引用:内閣官房・内閣府 総合サイト
まずは、執行団体への起業支援金の申請をし、審査後に交付が決定します。その後、法人設立または個人の開業を行い、執行団体の支援を受けながら、事業を進めていきます。起業などに実績報告を行った後、支援金が交付されます。
支援金は後払いとなるため、あらかじめ起業にかかる費用の準備をしておく必要があります。
②移住支援金の対象者
移住支援金の対象者は、次のすべての要件を満たす個人です。
- 移住前に東京 23 区の在住者又は通勤者(5年以上)であったあること
- 移住先が東京圏以外の道府県又は東京圏内の条件不利地域であること
- 移住支援事業を実施する都道府県が、マッチングサイトに移住支援金の対象として掲載する求人に新規就業した人又は起業支援金の交付決定を受けた人
移住支援金では、起業する場合と就業する場合で、交付までの流れが異なります。
引用:内閣官房・内閣府 総合サイト
起業する場合は、まずは起業支援金の申請と交付の決定を受けます。その後、1年以内に移住先市町村に移住支援金の申請を行い、交付を受けます。
就業する場合、まずはマッチングサイトに移住支援金の対象として掲載される求人に応募します。対象企業への就職活動を行い、実際に就業してから3か月以上を経過して初めて、移住先市町村に移住支援金の申請を行うことができます。
まとめ
新型コロナウイルス感染症の影響拡大で、テレワークの重要性に気付いた企業も多いです。テレワークを導入することで、感染症などが拡大しても、事業を継続できるのは大きな利点になります。
令和3年度から始まる、地域移住テレワーク支援金(仮)では、最大100万円の交付を受ける事が可能です。支援金を活用し、賢くテレワークを導入しましょう。