法人を合同会社にした場合の税金 その種類と税率等について | MONEYIZM
 

法人を合同会社にした場合の税金
その種類と税率等について

会社法が施行されたときに、初めて日本に登場した合同会社。今では、広く知られる存在となり、その数も増加しています。しかし、合同会社とはどのようなものか、どのようなメリットがあるのかなど、その内容を詳しく知っている人は少ないかもしれません。ここでは、税金面を中心に合同会社について詳しく解説します。

合同会社の仕組みと特徴

そもそも合同会社とは

合同会社とは簡単にいうと、出資をする人と経営する人が同じ会社のことです。

株式会社は、出資者が株式を取得し株主となることで設立され、株主が選任した取締役が経営を行います。

 

それに対し、合同会社は社員が出資金の払い込みをします。また、出資金の払い込みをした社員が経営を行います。株式会社も合同会社も有限責任であることに変わりはありません。

会社が倒産して、その負債が残っても自分が出資した以上の額の責任をとる必要はありません。

 

株式会社と合同会社の主な違い
株式会社 合同会社
出資者と経営者 異なる 同じ
代表者の名称 代表取締役 代表社員
重要事項の決定機関 株主総会の決議

(出資者=株主)

社員全員の同意による

(出資者=社員)

経営上の意思決定機関 取締役会の決議

(経営者=取締役)

(業務執行)
社員の過半数の同意が必要(経営者=社員)
責任範囲 有限責任 有限責任
役員の任期 10年(株式の譲渡制限がない場合は2年) なし(退社するまで)

合同会社にかかる税金について

では、合同会社を設立して経営していくうえで支払いが生じる税金について見ていきましょう。

①法人税

法人税は国に支払う税金です。会社のもうけ(所得)に対して、一定の税率の税金を支払います。また、合同会社も株式会社や個人事業主と同じように、通常1年の事業年度ごとに所得を計算し、税金を納付します。

②法人住民税・法人事業税

法人住民税は、都道府県と市区町村のそれぞれに支払う税金です。法人税と同じように、会社のもうけ(所得)に対して、一定の税率の税金を支払います。

 

法人住民税は、その都道府県や市区町村に所在することに対する「均等割」と、法人税額を基礎として計算される「法人税割」の2つから構成されます。均等割はその都市に所在することに対する税金のため、赤字であっても納付する必要があります。

 

法人事業税は、都道府県に支払う税金です。都道府県の公共サービス等を利用していることに対する負担として、主に会社のもうけ(所得)に対して、一定の税率の税金を支払います。

③消費税等

消費税等は、商品やサービスの消費に課される税金です。合同会社も、株式会社や個人事業主と同じように、消費税等を納付します。消費税等とは、国に対する「消費税」と都道府県や市区町村に対する「地方消費税」の総称です。申告や納付は、国に一括して行います。

合同会社と個人事業主の違い

ここまで、合同会社について見てきました。では、合同会社と個人事業主や株式会社にはどのような違いがあるのでしょうか。ここでは、合同会社と個人事業主の違いについて見ていきましょう。

個人事業主と比べた合同会社のメリット

まずは合同会社のメリットから見ていきましょう。

①経費にできる幅が広い

合同会社は、個人事業主に比べ経費にできる幅が広くなります。個人事業では経費にできないものでも、合同会社では経費にできます。

 

代表的なものが生命保険と家族への給料です。個人事業主の場合、生命保険は全額が経費にならず、一定金額のみ所得控除になります。また、家族は1つの財布という考えから、家族への給料も原則経費になりません。合同会社ではどちらも経費になるため節税効果があります。

②赤字の繰り越し期間が長い

合同会社も個人事業主(青色申告者)も赤字を繰り越すことができます。しかし、その繰越期間が異なります。個人事業主(青色申告者)の場合は3年ですが、合同会社の場合は9年(平成30年4月1日以後に開始する事業年度は10年)です。赤字を繰り越せば、翌年以降の黒字と相殺することができるため節税効果があります。

③消費税

消費税は以下の条件のときに納税義務が生じます。

(1)2年前の売上が1,000万円を超える場合

(2)前年度上半期の課税売上高、給与支給額のどちらも1,000万円を超える場合

 

個人事業主が合同会社を設立した場合(資本金1,000万円未満の場合に限る)は、2年前の売上がないため、(2)の条件をクリアすれば2年間、消費税を納税する必要がありません。個人事業主の時に消費税を納付していた場合は大きな節税になります。

④相続税がかからない

相続税は個人が所有している財産に対して課税されます。個人事業主の場合、事業用の財産もプライベートの財産も個人が所有していることには変わりないので、すべての財産が相続税の対象となります。しかし、合同会社の場合、事業用の財産は会社の財産のため相続税の対象にはなりません。

⑤決算日を自由に設定できる

個人事業主は決算日が12月31日と決まっており、毎年1月1日~12月31日までの確定申告を、翌3月15日までに申告・納税しなければなりません。これに対し、合同会社は決算日を自由に設定できます。資金繰りのことを考慮に入れたり、繁忙期を避けたりするなど、決算日を会社の状況に合わせることができるメリットがあります。

個人事業主と比べた合同会社のデメリット

次にデメリットを見ていきましょう。

①設立費用がかかる

合同会社を設立するためには、定款の作成や登記費用、資本金の準備など多くの費用がかかります。資本金を除いても6万~10万円程度の費用がかかります。

②赤字でも税金がかかる

上述しましたが、合同会社ではその都道府県や市区町村に所在することに対する法人住民税の均等割がかかります。これは赤字でも支払わないといけない税金で、最低でも7万円程度(自治体等で異なる)かかります。

③社会保険への加入

個人事業主の場合は、従業員が5人未満の場合は社会保険に加入する必要がありませんが、合同会社は従業員数に関係なく社会保険に加入する義務があります。従業員の社会保険料の半分は会社負担のため、経費が多くかかります。

合同会社と株式会社の違い

次は株式会社と合同会社の違いについて見てみましょう。

合同会社と株式会社はどちらも普通法人

合同会社と株式会社の仕組みの違いについては既に説明しましたが、法人税法上では実は、どちらも同じ普通法人に属します。普通法人とは所得に対して、特別な税率ではない普通税率を乗じて税金を計算する法人のことです。そのため、合同会社にしても株式会社にしても税率や税金は同じで、どちらが有利ということはありません。

 

合同会社の場合、業務執行社員は株式会社の役員と同じであるため、その報酬は税法で認められたものしか経費になりません。業務執行社員以外でも、報酬を受け取れば役員報酬とみなされ、経費計上に制限がかかる可能性があるため注意が必要です。

株式会社と比べた合同会社のメリット・デメリット

合同会社は株式会社と同じく普通法人です。しかし、株式会社と比べたときにメリット・デメリットが存在します。

①メリット
・設立費用が安い

合同会社は定款の認証が必要なかったり、登録免許税が安かったりと株式会社より設立費用が少なく済みます。

設立費用の目安は、合同会社6万円~10万円程度、株式会社で20万円~25万円程度です。

・役員変更などの手続きが不要

合同会社は社員に任期がありません。一方、株式会社は2~10年の任期があります。株式会社の場合は任期が終わると新任の役員を選んだり、今の役員を再任したりしますが、任期の都度、法務局に変更登記が必要になります。

②デメリット
・信用度が低い

合同会社は一般的になりつつありますが、株式会社に比べると認知度が低くなります。総体的には株式会社に比べて信用度が低く、取引に影響を与える可能性もあります。

・上場できない

合同会社は株式会社と異なり上場できません。そのため、会社を大きくするときに、株式公開などによる、第三者からの資金調達ができないデメリットがあります。

まとめ

合同会社とは、出資をする人と経営する人が同じ会社のことです。平成18年の会社法の施行で有限会社が廃止される代わりに登場してきました。出資をする人と経営する人が同じであるため、経営の自由度が増すことになります。合同会社には株式会社、個人事業主と異なる特徴が多くあります。合同会社の設立や経営を考える場合は、まず、その特徴をしっかり把握しましょう。

長谷川よう
会計事務所に約14年、会計ソフトメーカーに約4年勤務。個人事業主から法人まで多くのお客さまに接することで得た知見をもとに、記事を読んでくださる方が抱えておられるお困りごとや知っておくべき知識について、なるべく平易な表現でお伝えします。
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