最近何かと話題に取りざたされるビットコインですが、税金の取り扱いが分からないため迂闊に手を出せずにいるという方も少なくないのではないでしょうか。今回は、ビットコインの取引のケース別に税金の取り扱いをまとめています。ビットコインを始めてみるきっかけにしてみてはいかがでしょうか。
ビットコインとは
ビットコインとは仮想通貨の一種で、現在最も影響力の強い通貨です。平成30年1月中旬時点での時価総額は1954億ドルで、2位のイーサリアムとは2倍近くの差を引き離しており、数ある仮想通貨の中でも一強状態を誇っています。平成21年の開発以来その価値を伸ばし続け、現在1ビットコインの価値は約11,600ドルという高い水準になっています。もっとも、ビットコインの最小単位はsatoshi(=1億分の1ビットコイン)なので、bitFlyerやcoincheckなどの取引所で、どんな人でも手軽に購入できます。ちなみにこのsatoshiといういかにも人名らしい名称は、ビットコインの開発者であるサトシ・ナカモト氏に由来します。
ビットコインをはじめとする仮想通貨の運用は、株の投資と似ています。取引所で一定量の仮想通貨を購入し、価格変動に応じて売買を行うことで利益を追求します。この価格変動において仮想通貨と株には大きな違いがあり、株がその会社の業績に左右されるのに対し、仮想通貨は純粋な需要と供給によって価格が決定します。仮想通貨を保有する人々の意思ひとつで、大きく価格が上昇することもあれば、その逆もあり得ます。例えば、平成30年1月半ばにはビットコインはその価値を4割近く下落させました。その原因として、中国と韓国がビットコイン規制の動きに出るという報道が出たとことで、それを危惧した投資家が一斉にビットコインを売りに出したと指摘されています。まさに、保有者の意思がそのままビットコインの価格に直結した例と言えるでしょう。
このように固有の特色を持つ仮想通貨ですが、お金が絡む事案である以上、税務と切り離して考えることはできません。以下では、国税庁の公式発表に基づいて、ビットコインに関連した税務の話を取り上げていきます。
ビットコインで得た利益の税務上の扱い
ビットコインによる損益の所得区分
そもそも、ビットコインで利益を得た場合、その所得は税制上どのように扱われるのでしょうか。以下、国税庁の説明を引用してみましょう。
ビットコインは、物品の購入等に使用できるものですが、このビットコインを使用することで生じた利益は、所得税の課税対象となります。このビットコインを使用することにより生じる損益(邦貨又は外貨との相対的な関係により認識される損益)は、事業所得等の各種所得の基因となる行為に付随して生じる場合を除き、原則として、雑所得に区分されます。
(国税庁タックスアンサー「ビットコインを使用することにより利益が生じた場合の課税関係」より)
このように、ビットコインによって得られる利益は雑所得してカウントされます。
そもそも所得には、「利子所得」「配当所得」「不動産所得」「事業所得」「給与所得」「退職所得」「山林所得」「譲渡所得」「一時所得」「雑所得」の10種類の区分があります。雑所得は、他の9つのどれにも属さない所得であり、年金などが該当します。雑所得における所得税は、給与所得などの他の所得の金額と合計して総所得金額を求めた後に、納める税額が算出されます。つまり、ビットコインで得た利益は、まずそのまま所得として計上し、最後に所得税を個別に計算して納入すれば良いということになります。
所得の計算方法
それでは、ビットコインで得られた所得額はどのように算出すればいいのでしょうか。実は、そこまで難しく捉える必要はありません。基本となる考え方は「ビットコインを購入した時点で、1ビットコインがいくらだったか」を「どれだけビットコインを使用したか」に掛け合わせた金額を、「本来法定通貨で支払うはずの金額」から引いて所得を算出します。以降では、想定可能な様々なケースを個別具体的に見ていきましょう。
取引のケース別に解説
ビットコインをモノや法定通貨と交換した場合
最初に、ビットコインをある製品の購入に使用した例を考えてみます。
平成30年1月に300万円で3ビットコインを購入し、翌月の平成30年2月に10万円の商品を0.05ビットコインで購入したと仮定します。この場合の所得は、
ということになります。
これだけでは分かりづらいと思うので、もう少し説明を加えてみましょう。まず、1月の時点で1ビットコインの価値は100万円でした。しかし2月には10万円の商品を0.05ビットコインで購入したということは、ひと月の間にビットコインの価格が変動し、1ビットコインは倍の200万円に跳ね上がったことになります。それにより本来は10万円支払わなければいけないところを、購入時点の価値で計算すると5万円だけで購入が可能になったものと考えられます。従って、その余剰分の5万円が所得となります。
同じような計算を、次は法定通貨と交換した場合で考えてみましょう。
今度も平成30年1月に300万円で3ビットコインを購入し、平成30年2月に0.5ビットコインを60万円で売却したとします。この場合の所得は、
となります。
もし1月の時の価格のままであれば、0.5ビットコインは50万円で売却されなければならないはずです。しかし価格の変動があり、60万円で売却することができました。よって、その差分の10万円が所得ということになります。
ビットコインを他の仮想通貨と交換した場合
平成30年1月に300万円で3ビットコインを購入し、平成30年3月に時価総額40万円のイーサリアム購入に0.3ビットコインを充てたものとします。この場合だと、所得は
になります。
本来、3月に買った量のイーサリアムは40万円支払わないと手に入れることができません。しかし、ビットコインのレート変動の影響で、0.3ビットコインで購入することができました。ビットコインを購入した1月時点の価値で考えれば、0.3ビットコインは30万円の価値しかありません。よって、その差分の10万円が、所得となります。
ビットコインを年間で複数回取得した場合
これは少々厄介なケースです。というのも、購入のタイミングによってビットコインの時価が異なるからです。以下の例を考えてみましょう。
平成30年1月 300万円で3ビットコインを購入
平成30年2月 40万円の商品を0.2ビットコインで購入
平成30年3月 0.5ビットコインを60万円で売却
平成30年4月 時価総額40万円のイーサリアム購入に0.3ビットコインを消費
平成30年5月 200万円で1ビットコインを購入
平成30年6月 15万円のものを0.1ビットコインで購入
6月時点での所得を考える際、今まで通りの方法でやるならばまず「5月時点で保有する1ビットコインあたりの価格」がわからないといけません。これは、「移動平均法」という平均換算の方法によって以下のように求めることができます。
まず、1月時点の保有する1ビットコインの価格は100万円で、5月までに1ビットコインを消費していますので、残っているビットコインの簿価は、
です。そしてこの後、200万円で1ビットコインを買っていますので、5月時点の保有する1ビットコインの価格は、
となります。これがわかれば、先ほどと同じ方法で6月の所得を算出することができます。
このように、複数回ビットコインを購入したならば、その都度「移動平均法」で保有するビットコインの取得価額を求めなくてはいけません。
以上の方法では、5月時点の保有する1ビットコインの価格を、使用したビットコインの量や時価の変化に対応して計算しています。これが移動平均法ですが、長期的にビットコインを保有し使用し続けることを条件に、総平均法という手法をとることもできます。これは簡単に言えば、時価の変化などを一切無視し、決められた区間の平均をただ単純に計算する方法です。上の例であれば、「5月時点で保有する1ビットコインの価格」は、
ということになります。
ビットコインを雑所得以外で扱う場合
上述のように通常ビットコインでの所得は全て雑所得に換算され、他の所得の金額と合計して総所得金額を算出してから、個別に収める税額を計算されますが、雑所得以外の区分で扱う場合もあります。
例えば、ある事業の経営者が経営における資産としてビットコインを保有し、事業の決済に使用している場合です。この場合は明らかに、ビットコインを通して出た損益が事業に付随して生じているといえるので、「事業所得」の区分になります。また、ビットコイン取引がそのまま生活における収入に直結しているなど、事業としてビットコイン取引が行われていると認められる場合にも、同じく「事業所得」と認定されます。
損失が生じた場合
所得税法の上では、他の所得と通算できる所得の種類は「不動産所得」「譲渡所得」「事業所得」「山林所得」の4種類のみとされています。雑所得はここに含まれていないので、所得計算上損失があったとしても、他の所得と通算することはできません。ただし上記のようにビットコインの所得を「事業所得」として扱う場合には、通算しても問題ありません。
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まとめ
今回は、ビットコイン運用で考えられる様々な所得発生のケースについて、その計算方法や分類をご紹介しました。目に見えない通貨だからこそ、税制なども厄介なのではないかと最初は敬遠してしまうこともあるかもしれませんが、ルールはきちんと定まっており、正しく計算すれば問題は生じません。正確な所得の計算・納税のためにも、まずは税理士に相談し、判断を仰ぎましょう。