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知っているようで知らないのが帳簿書類の知識。たとえば、「帳簿のつけ方」「どの書類を何年保存するのか」などが挙げられます。帳簿書類は保存・作成方法にとどまらず、税金の計算にまで影響を及ぼします。そこで、帳簿のつけ方と保存方法、そして法人の税金に及ぼす影響について解説します。
そもそも帳簿書類は4種類ある
帳簿書類は4種類あり、保存方法など税法上のルールが異なってきます。まずは帳簿書類のアウトラインを紹介します。
紙ベースで保存する帳簿書類と電子取引による書類に大別できる
紙ベースで保存する帳簿書類と電子取引による書類では、税法上の取り扱いが異なってきます。前者は本人が申請しない限り電子帳簿保存法は関係ありません。しかし、後者は申請をする・しないに関係なく、電子帳簿保存法で保存方法が定められています。そのため、両者を区別することが帳簿書類の知識を身につける第一歩といえます。
(1)紙ベースで保存する書類
①帳簿
基本的に会計ソフトで作成して出力された帳簿です。具体的には「時系列の取引明細書である仕訳帳」と「名目別の取引明細書である総勘定元帳」などが挙げられます。
②自分で作成した書類
販売管理ソフトなどにより自分で作成した売上に対する請求書、納品書、見積書などが挙げられます。
③相手から受け取った書類
典型的なのが領収書でしょう。他にも購入先から発行された請求書、納品書、見積書などが挙げられます。
(2)電子取引による書類
4種類目は電子取引による書類です。紙を介さないでやり取りする書類のことを指します。
なお、上記①~③までの紙ベースで保存する帳簿書類は電子帳簿保存法に基づき、申請することで電子媒体の保存に代えることができます。
いったい電子取引とは何か?
税法上、電子取引は次のように定められています。
(1)いわゆるEDI取引
請求書などの書類のやり取りを企業間の独自のネットワークで行うことを指します。
(2)インターネット等による取引
直接インターネットで企業間取引することを指します。
(3)電子メールにより取引情報のやり取りをする取引
メールや請求書などの添付ファイルのことを指します。
(4)インターネット上にサイトを設け、サイトを通じて取引情報の受け渡しをする取引
アマゾンなどのサイトがよい例でしょう。
(5)その他
紙を介さない取引の例として、請求書などをFAXサーバーで受信することが挙げられます。
保存すべき帳簿書類の種類と保存方法
法人・個人事業主を問わず、帳簿書類の保存が義務付けられています。その種類と保存方法について見ていきましょう。
保存すべき帳簿書類の範囲
税法上、保存すべき帳簿書類の範囲と保存期間が定められています。そこで、法人の青色申告を例にしましょう。
(1) 保存すべき帳簿書類の範囲
保存が必要なもの | ||
---|---|---|
帳簿 | 仕訳帳、総勘定元帳、現金出納帳、売掛帳、買掛帳、経費帳、固定資産台帳など | |
書類 | 決算関係書類 | 損益計算書、貸借対照表、棚卸表など |
その他の書類 | 領収証、小切手控、預金通帳、借用証、請求書、見積書、契約書、納品書、送り状、注文書など |
(2)保存期間
黒字の年度と赤字の年度に大別できます。
① 黒字の年度
7年間
② 赤字の年度
決算日 | 保存期間 |
---|---|
決算日が3月31日までの年度 | 9年間 |
決算日が4月1日以降の年度 | 10年間 |
電子取引による書類の保存方法
前述の通り、電子取引による書類は電子帳簿保存法で定められています。基本的にプリントアウトをせず、電子媒体で保存します。次のいずれかの条件を満たす必要があります。
・タイムスタンプを付与する(電子データがある時刻に確実に存在していたことを証明する電子的な時刻証明書)
・運用規定を作成する
要するに電子取引による書類が社内で改ざんすることができないような仕組みづくりが求められます。
しかし、上記の方法に代えて、プリントアウトをして紙媒体で保存することが認められています。
帳簿をつけるときのポイントを解説
帳簿のつけ方について気になる方は多いでしょう。そこで帳簿のつけ方にプラスアルファして、合理的に記帳するためのポイントを解説します。
帳簿の作成は会計ソフトへデータを入力するのが基本
帳簿を作成するときには最低限、仕訳帳と総勘定元帳につけることが求められます。取引データを入力することでこれらの帳簿を自動的に作成してくれるのが会計ソフトです。つまり、帳簿のつけ方とは会計ソフトへの入力方法といえます。そのため、合理的に記帳する方法とは、効率よく会計ソフトへ入力することを意味します。
取引データを効率よく入力することをゴールにする場合、CSV読み込みの機能がついている会計ソフトを使用することがポイントとなります。
他の業務用ソフトを連動させるのがポイント
会計ソフトへの入力は領収書や請求書などを参照して入力するのが基本です。しかし、CSV読み込みの機能を活用すれば、参照して入力する手間が省けます。具体的には、他の業務用ソフトからCSVで切り出し、会計ソフトへデータを読み込ませることです。他の業務用ソフトの例として、ネットバンキング、クレジットカードの取引明細書、販売管理ソフト、経費精算ソフトなどが挙げられます。
帳簿書類を保存しないと税金はどうなるの?
税法上、帳簿書類の保存が定められている以上、保存していない場合には税金面でデメリットが生じます。そこで、税金の計算に及ぼす影響を紹介します。
青色申告には帳簿書類の保存が必須
そもそも青色申告は申告した所得の信ぴょう性を持たせる制度です。そのため、所得の計算を裏付ける帳簿書類の保存が求められます。その代わり、青色申告の優遇税制を受けることができます。
(1)固定資産を一括で経費として落とせる金額の上限が10万円未満→30万円未満までに拡充されます。
(2)赤字分を翌年度以降の所得から控除できます。
仮に青色申告を申請しているにもかかわらず、帳簿書類の保存がされていない場合、過去にさかのぼって青色申告の承認が取り消されます。
たとえば、初年度と2年目の赤字の合計額が300万円、3年目の所得が500万円とします。初年度に青色申告の承認を受ければ、3年目の税金は所得500万円から赤字300万円を控除した残額200万円に税率を掛けて計算します。しかし、初年度にさかのぼって青色申告の承認が取り消された場合、赤字300万円を所得から控除することが認められなくなります。その結果、3年目の税金は控除できなくなった300万円に税率を掛けた税額と追徴課税を余分に負担しなければなりません。
帳簿書類の保存は消費税の計算に影響する
そもそも消費税は「預かった消費税-支払った消費税」の残額を納付します。特に支払った消費税のことを仕入税額控除といいます。一回の取引金額が3万円以上の場合、仕入税額控除を受けるためには帳簿書類の保存が必要です。つまり、帳簿への記入と書類の保存の両方が求められます。
たとえば、税抜価格1,000万円の商品を一括で仕入れたとします。「1,000万円×消費税率」だけ仕入税額控除が認められます。しかし、請求書や納品書などの書類の保存がされていないことを税務署から指摘された場合、仕入税額控除は認められません。その結果、「1,000万円×消費税率」の消費税とその追徴課税を余分に負担することになります。
まとめ
いかがでしたか。
帳簿書類の基本的な内容から税金に及ぼす影響まで説明してきました。特に帳簿のつけ方は「書類を参照して入力する→自動入力」と合理的に記帳できるように会計ソフトの機能が進化しています。これを機に、帳簿書類の保存方法や作成方法を見直してみてはいかがでしょうか。
参考サイト
- http://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/sonota/1706/pdf/01.pdf
- http://www.jiima.or.jp/pdf/denchohou_kaisetusho_vol2_201610.pdf
- http://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hojin/5930.htm
- https://www.nta.go.jp/publication/pamph/koho/kurashi/html/01_2.htm
- http://j-net21.smrj.go.jp/well/zeikin/cat4/cat4-2/20100624_02.html
- http://www.nta.go.jp/law/jimu-unei/hojin/000703-3/01.htm
- http://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shohi/6621.htm
- http://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shohi/6496.htm