飲食店経営に欠かせない経営指標! メシも経営も“ウマく”なるコツ | MONEYIZM
 

飲食店経営に欠かせない経営指標!
メシも経営も“ウマく”なるコツ

飲食店を長く続けていくにあたって、もちろん料理の味も大切ですが、経営者に必要なのはいかに資金繰りをし、お金を管理していくのかということです。いくら美味しい料理を提供しても、最終的に利益を得られなければ店は潰れてしまいます。その上で知っておくべき、大切な経営指標について紹介していきます。

売上とコストの関係

飲食店は、日々お金が入ってくる現金商売のため、掛売りのような商売と比較して資金繰りは楽だと思われがちです。しかしキャッシュフローを蔑ろにしていると、月末の給与支払いや家賃支払い時に、資金繰りで困ってしまう事態も起こりかねません。
ここで大切にすべきなのは、売上とコストの関係です。利益は、売上からコストを差し引くことで得られます。

■ 利益=売上-コスト

つまり利益を得るためには、売上を上げる努力と平行して、コストを下げる努力も忘れてはならないということです。

ここで、コストを下げる指標として
・FLコストとFL比率
・営業利益率
売上を上げる指標として
・客席回転率と客単価
・人時売上高
について紹介していきたいと思います。

☆ヒント
「あまり数字は得意ではない…」という経営者の方も少なくはないと思いますが、お金の管理をしっかりとし、キャッシュフローを改善することは経営者としての重要な役割です。未経験の状態から飲食店経営を始めた場合、3年以内に潰れてしまう確率は90%といわれていますので、お店を続けるためにも損益計算書や貸借対照表がある程度は読めるようになる必要がありそうです。

FLコストとFL比率

飲食店を経営していくにあたって、売上に対してコストがどの程度かかっているのかを把握することは大変重要です。あくまで参考ですが、一般的に飲食店経営を続けていくためには、売上とコストの比率については以下が目安であると考えられています。

図1 飲食店経営に関わる費用

FLコスト

FLコストとは、売上高のうち”FOOD(食材費≒原価)”と”LABOR(人件費)”の合計のコストのことを指します。

■ FLコスト=FOOD+LABOR

原価を低く抑えるには、まず無駄な食材が使われていないかチェックが必要です。例えば、売れていない死に筋のメニューがあり、そこにしか使われていない材料があるときは、それが無駄な在庫となり腐ってロスとなります。また、オーダーミスによる不必要な調理での食材ロスなども含まれるため、メニューの工夫に加えてオペレーションの適正化も必要となるでしょう。
原価は生産の状況に応じて変動します。例えば2016年の夏は台風が何度も本土を直撃し、その結果野菜の価格は高騰しました。そのような場合は、食材の提供量を減らしたりメニュー価格を上げたり、代替の食材を用いたりするなどの必要があります。原価が高騰してからメニューや施策をあれこれ考えていては遅いので、それが予想できる場合は早めに動いて先手を売っておくと良いでしょう。
一方、人件費についても、基本は無駄を削減する必要があります。きちんと繁忙時間帯を把握して、暇な時間の無駄な人員配置を減らし、人件費を低く抑えましょう。

FL比率

FL比率とは、食材費と人件費の合計が、売上高に対して占める割合のことを指します。

■ FL比率=(FOOD(食材費)+LABOR(人件費))÷売上高

業態によっても違いますが、FL比率は平均的に55%〜65%が理想と言われています。売上高からFLコストを差し引いた金額で、家賃や光熱費などの諸経費を賄うため、この程度の数字に留めることが求められます。
FL比率は低いほど望ましいですが、下げることを意識しすぎると過度な食材の質の低下や人員不足につながり、結果的に顧客満足度が下がってしまって競争に勝つことができません。まずは一般的な目標値である「FL比率55%」を目指しましょう。

営業利益率

営業利益とは、売上高からFLコストと光熱費などの販売管理費などを差し引き、営業活動の結果として最終的に得られる利益のことを指します。営業利益率は、売上高のうち営業利益が占める割合のことです。

■ 営業利益率=(売上高-FLコスト-その他販売管理費)÷売上高

営業利益率は、その飲食店の「儲ける力」を直接判断できる指標として、営業目標に据えている店舗も多くあります。営業利益率は平均8%程度と言われていますが、優秀な飲食店は10%以上の数字を残しています。FL比率を始めとしたコストをきちんと管理することで、営業利益率を高める努力をしましょう。

☆ヒント
どのような事業を展開する場合でも、数字目標は決して避けて通れる道ではありません。FLコストや営業利益率などは比較的馴染みやすいものだと思いますので、まずは身近なものから始めると良いでしょう。
事業を始めたばかりの経営者の方にとって慣れないことが多々あるかもしれません。損益計算書や貸借対照表について、気軽に相談できるアドバイザーとして良い税理士がいると安心できます。

売上を上げるための客席回転率・客単価

ここまでコストを評価するための指標について紹介してきましたが、利益を生むためには何より売上を上げることが大切です。ここで売上高は、以下の式で表すことができます。

■ 売上高=(客席回転率×座席数×満席率×客単価)×営業日数

客席回転率とは、1日の客数を座席数で割ることで得られる指標です。例えば、席数が50席の店舗に1日150人の客が入れば、客席回転率は150÷50=3回転となります。この式においては、客席回転率×座席数によって1日の客数を表しています。
客席回転率を上げるためには、業態にもよりますが、一般的に店側の持ち時間を短くすることである程度改善することができます。つまり、オーダーの承りや料理の提供時間、中間下げや最終下げをスピーディーに行うことがポイントとなります。
満席率とは、例えば店内満席だが、6人テーブルに4人客が座るなど、満席=満員でないことを考慮する指標です。この満席率については、一人客が多いのか、2人組のサラリーマンが多いのか、家族連れが多いのか、あるいは平日・休日で客層が変わっているのかなどを分析し、店のレイアウトを変更するなどで改善することが可能です。

次に、客単価を上げるための方法は大きく分けて3つあります。

アップセル

アップセルとは、より上位単価のメニューにお得感を出すことで、単価アップを狙う方法です。例えば、有名なものに「松竹梅商法」というものがあります。これはコース料理などをいくつか用意し、値段に差をつける方法です。例えば、「低価格のコースAばかりが頼まれていて、利益率の良い高単価のコースBが頼まれない」といった悩みを抱えているとき、更に高単価のコースCを追加することで、お客さんは「BはCに比べてお得で、Aに比べるとバリューがある」と思うようになり、結果Bの売上が伸びる、といったものです。

クロスセル

クロスセルとは、注文された料理と関連するものを同時に注文してもらうよう、おすすめする方法です。例えばアヒージョを注文したお客様に対して、「ご一緒にバケットはいかがですか」と勧めることで、1人あたりの売上や収益を上げることにつながります。

値上げ

飲食店経営者は値上げに抵抗を感じがちですが、よりよいサービスを提供するためには必要な対策です。値上げをする一方で別のメニューを値下げしたり、メニュー紙を従来のものから一新したりすることによって、クレームが集まらないような工夫をしましょう。

人時売上高を意識しよう

最後に、人時売上高とは店舗の月間売上高を総労働時間で割った値のことです。社員・アルバイトなどの雇用形態や残業かどうかは関係なく、1人の従業員が1時間にいくら稼ぐかという収益性を示した指標です。

■ 人時売上高=店舗の月間売上高÷店舗の月間総労働時間

人時売上高は、店長の能力を評価するための指標として便利です。人時売上高が5000円を超えるような飲食店の店長は、利益を生み出しやすい店をマネジメントできていると評価できます。
ここで1点注意しなければならないのは、人時売上高を意識しすぎると、顧客満足度が低下してしまう可能性があるということです。ただ従業員を少なくして、人時売上高を一時的に上げたとしても、料理やサービスの質の低下によって顧客満足度が下がり、結果的に売上が低下していきます。このことによって売上低下の負のスパイラルに陥りかねないので注意が必要です。単純に人時売上高が高い店長を評価するのではなく、料理やサービスの質を維持した上で、徐々に人時売上高を高めていけるような店長を評価しましょう。
人時売上高を上げるために必要なのは、「仕事ができる人」を雇うことです。この指標にアルバイトの時給は含まれていませんが、多少は時給をアップしてでも、優秀なアルバイトを雇うことが店のためになると言えるでしょう。

☆ヒント
飲食店経営をうまくやるためには、客層や傾向などをしっかり把握する必要があります。雇うアルバイトの数やメニュー、店のレイアウトなどを変えて、今回紹介したFLコストや営業利益率がどのように改善されていったのか、あるいは悪化してしまったのかをチェックする必要があります。
全てを経営者の方が一人でやろうとすると、やることが膨大になってしまうかもしれませんので、税理士をうまく使って会計業務の一部を任せたり、アドバイスをもらったりすると良いでしょう。

まとめ

飲食店を経営する上で、消費者のニーズは日々変化していくため、多角的な目線で店を評価する必要があります。ここまで紹介してきたような経営指標をうまく使って、適切に経営状態を把握し、長く経営していけるような飲食店作りを目指しましょう。

細井山豊
東京大学卒。現、同大学院所属。
ベンチャー企業の経営やビジネスを学んでおり、経営に役立つ様々な知識やノウハウを習得中。
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