社員研修の費用を、経費として計上する条件とは | MONEYIZM
 

社員研修の費用を、経費として計上する条件とは

社員のスキルアップのために研修を実施した場合、この費用を経費計上することが可能です。ただし、研修の内容によっては経費として認められない場合がありますので、条件を知っておく必要があります。今回は、社員研修の費用の扱いについて詳しく解説していきます。

研修費用は経費計上が可能

社員研修とは

社員研修は、社員のスキルアップや新たな知識の取得を目的として行われます。対象とする社員をどのように設定するかによって、研修の具体的な目標や適切な手法も変わってきます。例えば、最も代表的な社員研修である新入社員研修は、新卒向けであれば、初めて社会人となる新入社員にビジネスマナーや仕事に関する知識をつけさせることにより、スムーズに会社のメンバーとなれることを目的としています。しかし、即戦力となることが期待される中途採用の新入社員が対象の場合は、ビジネスマナーなどの基本的スキルなどはすでに身についているものとし、自社の理念や社内のルールを伝えて新たな環境での仕事に早く慣れてもらうことが優先されます。また、新卒向けの研修は規模が大きくなる傾向があるのに対して、中途採用は対象者の数が限られます。そのため同じ新入社員向けであっても、両者の間では、一番適した研修の形も異なります。

社員研修の方法

社員研修には、主に次の2つの方法があります。研修の目的に応じて使い分けたり、組み合わせたりすると良いでしょう。

OJT

OJTはOn the Job Trainingの略であり、配属先の職場で上司や先輩の指導を受けながら実際の業務を行い、必要な知識を身につけていきます。この方法は、教える側の成長にもつながるというメリットもあります。

Off-JT

Off-JTはOff the Job Trainingの略であり、OJTとは違って職場の外で、専門の講師を招いてセミナーを開催するなどして必要な知識を得る方法です。普段交流を行わない違う部署との交流する機会となり、つながりが強まるというメリットも存在します。

社員研修を経費計上するための条件

社員研修に要する費用は、その研修が会社の事業に直接関係したものであるならば、通常その研修を受けるために必要であると認められる額の範囲内で経費に計上することができます。事業に直接関係しているとは、研修によって得られるスキルや資格がなければ仕事ができない場合や、業務遂行に必要な技術や知識を向上させることを目的としている場合のことを指します。

研修費用は、主に採用教育費(研修費)として経費計上されます。具体例としては、以下のものが挙げられます。

 

・新入社員に対するマナー研修・実務研修にかかる費用

・技術革新に対応するための訓練にかかる費用

・業務に必要となる資格を取るために通う学校の受講料

・業務に必要となる知識や技術を身に付けさせるための講習会を開催するにあたって必要な教材や機器の購入費用

・社外で開催されているセミナーや講習会への参加費用

研修費用の負担について

会社が研修を受けるのを強制しているかどうかによって、負担割合が変わります。また、研修を受けた社員がその直後に退職した時、研修に要した費用の返還を請求できる場合があります。

強制参加の場合

会社が社員に研修の受講を指示した場合は、すべての費用を会社側で負担しなければなりません。その際の賃金は、就業規則等に定められている場合はその額を、定められていない場合は通常の賃金と同額を支払います。また、会社で研修を強制していない場合でも、部署内のメンバーが全員受けているような状況だと、事実上の強制とみなされることがありますので注意してください。

任意参加の場合

研修への参加が任意の場合、法的な規定はなく、その費用については会社が負担することも、社員に請求することもできます。しかし業務上有用な知識や技能に関する研修であれば、業務との関連性に応じて会社側の補助率を上げることで、社員にスキルアップへのインセンティブを与えることができます。

研修費用の返還請求

資格の取得や海外留学などの長期にわたる研修を補助するような場合、会社としても少なくない負担を背負うことになります。期待をかけて研修を受けさせていた社員が研修直後に退職したとすれば、せっかくの投資が無に帰してしまいます。このような時に、研修費用の返還を請求できる場合があります。ただしこれは、早期退職に対して違約金を要求するなどの、労働者の退職する自由を侵害するものであってはなりません。

具体的な対策法としては、研修に先立って、社員と金銭消費貸借契約を交わしておきましょう。これは、会社負担分の費用については会社が社員に貸与して、研修終了後の一定期間の勤務をもって返済を免除するというというものです。その際、以下の点に注意する必要があります。

研修内容

当該の研修は、業務遂行上の必要性はないが、社員自身が自発的に受講を望んだものでなくてはなりません。業務に必要となる内容の研修である場合、金銭消費貸借契約を結ぶこと自体が違法となってしまいます。また、会社が業務命令として受講を指示している場合は、返還請求が認められません。

請求額

研修費用の内訳のどの部分についての返還となるか、詳細に取り決めておきましょう。実費を超える金額を請求することは、退職に対するペナルティという性格を強め、労働基準法に抵触する可能性が高くなります。

期間

研修後に働かなければならない期間は、短くなればなるほど認められやすくなります。研修費用額などによって様々なケースがありえますが、高額に及ぶ場合でも最長で5年としていることが多いようです。

現実的でない内容の契約をすることは、結果的に企業にとって不利となりますので、しっかりと内容を精査した上で契約書を作成するようにしましょう。

研修等に対する助成制度

社員に研修を受けさせた会社に対して、その費用や期間中の賃金の一部を補助してくれるのが、人材開発支援助成金です。2018年度に従来の関連諸制度を統廃合してスタートしたこの助成金制度は、以下の7つのコースに分かれています。各コースの対象や助成金額などの詳細については、厚生労働省が公開しているパンフレット等をご覧ください。

 

・特定訓練コース

・一般訓練コース

・教育訓練休暇付与コース

・特別育成訓練コース

・建設労働者認定訓練コース

・建設労働者技能実習コース

・障害者職業能力開発コース

☆ヒント
社員研修は会社に大きなメリットをもたらしますが、それには少なからぬ費用がかかります。そのため、研修費用を経費として計上できるかどうかが、会社の負担額を減らすために重要となってきます。株式会社ビスカスでは、各種税制に精通した税理士を多数紹介しております。是非一度ご利用を検討されてみてはいかがでしょうか。

まとめ

今回は社員研修の経費計上について解説してきました。経費計上が可能であれば選択肢の幅が増え、企業の成長にも繋がります。実施しようとしている研修が経費として計上できるかどうか確認しましょう。

岡田桃子
東京大学卒。
卒業後は中央官庁に勤め、退官後ベンチャー企業に転職し、経理・法務などに携わる。
経理業務で得た知見や、中央官庁時代に得た法律や制度に関するナレッジを分かりやすく解説します。
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