法人税や法人住民税(地方税)、消費税など、法人は多くの税金を納める必要があります。しかし、業績の低迷による資金繰りの悪化などの理由で、税金を滞納する場合があります。そんな時「財産が差押えられるのでは?」と心配になるのではないでしょうか。ここでは、税金の滞納から差押えまでの流れを詳しく解説します。
滞納から差押えまでのおおまかな流れ
税金を滞納してもすぐには差押えされない
実は、税金を滞納しても、すぐに差押えられることはありません。税金の滞納から差押えまでは、いくつかのステップがあります。ここでは、税金の滞納から差押えまでの大まかな流れを見ていきましょう。
①税金の滞納
税金の滞納とは、税金を納付期限までに納付しないことです。何日間納付しなければ滞納ということではなく、1日でも納付期限を超えて納付していなければ滞納です。
主な税金の納付期限は、法人税、法人住民税(地方税)、消費税が決算から2ヵ月以内、従業員の給料から天引きする源泉徴収税が毎月10日(納期特例の場合は7月10日と1月20日)です。
②督促状の送付
税金が納付期間を過ぎても未納だった場合は、まず督促状が送付されます。督促状は税金を支払うことを督促する書面で、差押えをする前に送ることが前提条件となっています。管轄税務署や滞納している金額によって差はありますが、概ね納付期限から1ヵ月程度(原則50日以内)滞納が続くと督促状が届きます。
③電話や書面などでの催促
督促状が届いたから、すぐに差押えされるというわけではありません。通常は、その後電話や書面などでの催促が行われます。場合によっては、税務署の担当の人が直接、滞納者の会社等に訪問することもあります。
④人物や財産の調査
税務署は、電話や書面などでの催促とともに、納税者自身の情報や持っている財産などについて情報収集を行います。
⑤差押え
電話や書面などで、何回か催促しても納税に応じない場合は、いよいよ差押えとなります。
⑥公売・換価
差押えされた財産は、公売にかけられ、換価されます。
⑦税金への充当や配当
換価された金額は税金へ充当され、余ったものは滞納者に配当され(支払われ)ます。
差押えされるものとされないもの
税金を滞納し、差押えがあったとしても、すべての財産が差押えられるわけではありません。当然預金や株式などの財産は差押えされますが、生活をする上で最低限の財産については、差押えられることはありません。差押えができない財産のことを差押禁止財産といいます。一般的に、差押禁止財産は次のようなものが該当します。
- ①生活に欠くことができない衣服、寝具、家具、台所用具、畳及び建具
- ②生活に必要な3月間の食料及び燃料
- ③業務に欠くことができない器具その他の物(商品を除く)
- ④実印など職業に欠くことができないもの
- ⑤その他生活をする上で最低限の財産
税金を滞納するときに押さえておきたい延滞税と督促について
税金を滞納すると延滞税がかかる
やむを得ない理由で、税金を滞納してしまう事態は起こりうることです。しかし、税金を滞納する際には押さえておきたいポイントがあります。それが延滞税と督促です。
まずは延滞税から見ていきましょう。
税金を滞納すると、その翌日から税金の納付が完了するまでの期間に応じて、延滞税が課されます。延滞税の利率は次のように決まっています。
- ①納付期限の翌日から2月を経過する日までの期間については、年「7.3%」と「特例基準割合+1%」のいずれか低い割合
- ②納付期限の翌日から2月を経過する日の翌日以後については、年「14.6%」と「特例基準割合+7.3%」のいずれか低い割合
延滞税は、税金を納付期限までに納めなかったことへのペナルティです。また、納付期限の翌日から2月を経過すると利率が高くなります。税金の滞納が続くと、それだけ国に支払う金額が高くなるので注意が必要です。
延滞税は国税庁のホームページから計算ができます。実際に延滞税の金額を知りたい場合は次のページを参照し計算してください。
督促状が届くと注意が必要
上述したとおり、税金が納付期間が過ぎても未納の場合は、督促状が送付されます。督促状とは、税金の納付を督促する文言と納付期限や税目、問い合わせ先などが記載されている書類です。
差押えではこの督促状がポイントになります。実は、法律上では、督促のため督促状を送付してから10日までに税金を完納しない場合は、差押えができることになっています。督促状が届いて、きっちり10日後に差押えがあることは、ほとんどありませんが、法律上は差押えすることができるので、そのまま放っておくことはしないようにしましょう。
差押えされないための注意点
督促状が届いたら納税について税務署と相談を
ここからは、差押えされないための注意点を見ていきましょう。
差押えされないためのポイントは何といっても、督促状です。督促状を送付してから10日までに税金を完納しない場合は、差押えができることになっています。そのため、督促状が届いたら、まず税務署と納税についての相談を行うことが重要です。税務署は、滞納分の税金を必ずしも一括で支払うことを求めてきません。滞納者の状況に応じて、分割での納税や、小切手や手形での支払いに応じることも多くあります。ただし、1年間を超えての支払いは納付計画書などの提出を求められることがあります。
税務署と納税の相談をしている最中や分割納付している間に、財産が差押えされることは、まずありません。督促状が届いたら、すぐに税務署と相談し、納付の意思があることを示しましょう。
財産調査ではいろいろなことを調べられる
税金の滞納が続くと、滞納者の財産調査が行われます。財産調査では、持っている預金や不動産などの情報はもちろんのこと、生命保険の加入状況や代表者の家族構成、戸籍、取引先にどのような会社があるか、売掛債権はいくら残っているのかなどを詳しく調査されます。税金を滞納することは、これらの財産調査が行われる可能性があるということなので、注意が必要です。
消費税と源泉徴収税に注意
税金にはさまざまな種類があります。もちろん、どの税金も滞納しないに越したことはありません。しかし、税金の性格的に、滞納すると差押えが起こりやすいといわれている税金があります。それが消費税と源泉徴収税です。
この2つの税金は、その法人の税金ではなく、いわば他人から預かっている税金です。消費税は消費者が負担する税金であり、商品やサービスを販売する法人は、消費者から売上代金の回収とともに、消費税を預かっています。源泉徴収税は従業員の所得税であり、従業員の給料などから法人が天引きして預かっています。
どちらも、法人の税金ではなく、他者の税金を預かっているだけなので、この2つを滞納し続けると、税務署の対応も厳しくなります。どの税金から支払うか迷ったら、まず消費税と源泉徴収税から納めるようにしましょう。
まとめ
税金を滞納すると、最終的に財産を差押えされてしまいます。しかし、差押えは最後の手段です。税務署としても差押えしたくないのが本音です。重要なのは、税金を支払う意思を税務署に見せることです。もし、税務署から督促状が届いた場合は、速やかに税務署に連絡を取り、納税について相談するようにしてください。
参考URL