個人事業主の方必見! 電子帳簿の保存がスマホ撮影でも! | MONEYIZM
 

個人事業主の方必見!
電子帳簿の保存がスマホ撮影でも!

国税関係帳簿の電子媒体による保存を認める電子帳簿保存法。この法律が改正され、スキャナを所有していない個人事業主の方でも、スマートフォンやデジカメでの撮影によって領収書の電子データでの保存が可能になりました。今回は、改正された電子帳簿保存法の概要と、保存の手順について解説します。

電子帳簿保存法とは

成立の背景

平成10年より施行されている電子帳簿保存法は、会計における納税者や会社の負担を軽減する目的で作られました。その背景には、当時すでにコンピュータが普及して会計処理の分野でも書類作成などに用いられるようになっていたため、電子機器による帳簿保存の容認を求める経済界等から強い要望が出ていたことがあります。こうした声を受けて、平成10年度の大規模税制改正の一環として同法が制定され、国税関係帳簿書類の電磁的記録等による保存等に関する制度が整えられました。

制度の概要

本制度の概要は、次の4点にまとめられます。

 

  • 国税関係の帳簿書類を作成する際、そのプロセスにおいて一貫して電子計算機を用いる場合は、税務署長の許可が下りれば、電磁的記録を正式な書類の代用とすることが認められます。ここでいう電磁的記録とは、磁気的方式等によってフロッピーディスク、コンパクトディスクなどに保存される情報、すなわち電子データを指します。
  • COMと呼ばれる、電子計算機を用いて電磁的記録を出力することにより作成するマイクロフィルムにも、上記と同様の条件が適用されます。
  • 紙媒体で作成される会計資料については、決算関係書類を除き、スキャナを用いて画像データ化を施した電磁的記録による保存が認められます。このスキャナ保存によってペーパーレス化を進めれば、大幅な負担減が可能となります。
  • インターネット上での売買など、電子取引を行った場合は、それに関係する電磁的記録を必ず保存しなくてはなりません。
  • 税制改正による変化

    上記の概要のうち3点目のスキャナ保存は、従来、対象となる書類とスキャンを行う機器について厳しい条件が課されていました。しかし平成27年と28年にそれぞれ改正が行われ、決算関係書類以外のすべての書類のスキャンが可能になり、また、原稿台のついた据え置き型のスキャナによる記録でなくても正式なものとして認められるようになりました。

    この2つの改正は、会計業務においては非常に重要な意味を持ちます。特に大きいのが、スキャン機器の要件の緩和により、デジタルカメラやスマートフォンのスキャンソフトを利用して領収書などのデータをすべて電子データ化することが可能になった点です。スマートフォンのアプリには、「CamScanner」をはじめとするフリーのスキャンソフトがすでにたくさん登場しています。それらのアプリを利用して、例えば出先で領収書が発生したときなど、オフィスに戻る前にその場でスキャンし、帰社後にまとめて会計データを経理に提出するということが可能になりました。

    電子保存を行うために

    電子保存全般の要件

    電子保存全般に関して、次のような要件を押さえて適切な手順を踏む必要があります。

     

  • 書類の保存と帳簿の備え付けを開始する3ヶ月前の日までに、所定の承認申請書と添付書類を税務署に提出します。申請書の様式は、書類と帳簿で異なるので注意しなくてはなりません。
  • 書類の場合、システム概要書、操作説明書などのシステム関係書類等を備え付けることなどが条件とされます。
  • 帳簿の場合、書類に課される要件に加えて、「記録事項の訂正・削除を行った場合の事実内容を確認できること」、「通常の業務処理期間を経過した後の入力履歴を確認できること」など、編集に関する要件も課されます。
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    電子保存全般について、その他の要件の詳細は国税庁発行のこちらのパンフレットをご参照ください。

    スキャナ保存の要件

    帳簿書類のスキャナ保存を行う場合は、以下のような要件を満たさなければなりません。なお、書類の区分には、契約書や納品書など資金や物の流れに直結・連動する書類である「重要書類」と、見積書や注文書などそれらに直結しない「一般書類」の2種類が存在します。対象の書類がどちらであるかによって、保存に関わる要件が異なるので注意が必要です。

     

  • スキャナ保存を開始する3ヶ月前の日までに、所定の承認申請書と添付書類を税務署に提出します。
  • スキャンを行う機器は、画像解像度200dpi以上での読み取りができ、カラー画像対応のものである必要があります。ただし「一般書類」に関してはグレースケールでの読み取りが認められます。
  • 領収書等の書類を受領した後、経理担当者がスキャンしたデータに下記の必要な記録処理を行う入力方式として、「早期入力方式」と「業務処理サイクル方式」の2種類があります。そのどちらを選ぶかによって、入力を行わなければならない期間が異なります。早期入力方式の場合は受領後1週間以内、業務処理サイクル方式の場合は受領後1ヶ月を経過した後、1週間以内となっています。ただし「一般書類」に関しては適時入力が認められます。
  • 書類を読み取ったデータには、必ずタイムスタンプが付与されてなくてはなりません。タイムスタンプとは、電磁的記録が変更・改ざんされていないことについて、保存期間を通じて常に確認・検証を行うことを可能にするための記録事項を指し、一般財団法人日本データ通信協会による認定を受けたサービスによって利用が可能です。
  • 書類の受領者がスマホ等でスキャンを行う場合は、受領者本人が受領後3日以内に当該書類に自分の名前をサインした上で読み取り、タイムスタンプを付与することが義務付けられています。なお、受領者以外の第3者によるチェック体制が確保されている場合には、受領後3日を過ぎても受領者本人が受領後1ヶ月1週間までにスキャンを行うことが認められます。
  • 「重要書類」については、読み取り時の解像度と階調、当該書類の大きさについての情報を保存しなければなりません。ただし、書類受領者本人がスキャンを行う場合で、当該書類がA4サイズ以下のときは、書類の大きさに関する情報を保存する必要はありません。
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    スキャナ保存について、その他の要件の詳細は国税庁発行のこちらのパンフレットをご参照ください。

    電子保存を行う上での注意点

    電子帳簿保存法が定める要件に違反すると、所得税法における帳簿書類の適切な備え付けと保存の義務を履行していないとみなされるおそれがあります。特に悪質だと判断された場合は、確定申告における青色申告の承認を取り消され、青色申告に伴う所得控除などの様々な恩恵を失うことになります。そればかりか、最悪の場合は脱税の容疑をかけられることも考えられます。電子媒体による帳簿書類の取り扱いには、紙媒体と同等以上に細心の注意が求められます。

     

    ☆ヒント
    紙媒体と比べて、電子媒体での帳簿書類の保存にはより多くの規定が存在します。前もっての申請が必要なだけでなく、保存データが要件を満たしていなければ罰則が科されるリスクすら存在します。すべての要件をクリアしているかどうかを、最初から自力でチェックすることは困難を極めます。特に電子保存を導入したばかりで慣れないうちは、税の専門家である税理士のアドバイスを参考にしましょう。ビスカスでは、様々な業務形態に対応した税理士をご紹介しておりますので、この機会にぜひご利用をご検討ください。

    まとめ

    平成27年、28年の法改正により、会計書類の電子データによる一括整理がより簡便に行えるようになりました。スマートフォンの便利なアプリを駆使して、煩雑な作業を手早く済ますことができるのは大きなメリットですが、電子媒体特有の様々な規定に注意する必要があります。要件をきちんと確認して、帳簿書類の管理を適切に行いましょう。

    山田隆裕
    慶應大学卒。現、同大学院所属。
    大学4年時に公認会計士試験に突破。
    自分の知識の定着も兼ねて、会計・財務などに関する知識を解説していきます。
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