中小企業庁による中小企業へのサポートとして、認定経営革新等支援機関(認定支援機関)が存在します。この機関を活用すれば、あなたの会社が抱える経営課題を解決することが可能になるかもしれません。今回は、認定支援機関を通じて受けられる支援について解説します。
認定経営革新等支援機関とは?
制度の概要
日本の経済状況が変化していくなかで、中小企業は絶えず様々な課題に直面します。それらには、中小企業の製品の品質のみならず、経営に関わる税務や経理、金融なども含まれます。しかし、税務や経理などの高度な専門知識を必要とする分野は、中小企業が単独で対応することが困難な場合が多々あります。そのため、国は公認会計士や税理士など高度な専門知識を有する機関や人を「認定経営革新等支援機関」として認定し、中小企業の経営全般に関するサポートを行っています。2017年12月時点で、27,000超の機関や人が認定を受けており、金融機関や商工会などの各種団体、公認会計士、税理士など、中小企業に特化した様々なサービスの窓口として機能しています。国の認定を受けたこれらの機関からの支援があることで、経営状況の改善だけでなく、企業としての信頼性も高まります。
主な支援内容
高度な専門性を有する認定経営革新等支援機関は、様々な課題を抱える中小企業に対して質の高い支援を提供しています。その内容は多岐にわたり、以下の3項に大別されます。
- 経営革新等支援およびモニタリング支援等
様々な財務書類から企業の経営状況の調査・分析を行い、経営者とともに改善点を検討していきます。その結果に基づき、事業計画の策定と実行に関する実践的な指導や助言を行い、策定した計画が適切に実施されているかどうかも継続的にチェックします。さらに、企業の信頼性を向上させるための会計システムの指導など、手厚い支援を受けることができます。より具体的には、支援内容として以下の5点が挙げられます。
1. 経営の「見える化」支援
2. 事業計画の策定支援
3. 事業計画の実行支援
4. モニタリング支援
5. 中小企業・小規模事業者への会計の定着支援 - その他経営改善等に関する支援全般
中小企業が抱える課題全般についての指導と助言を行います。売り上げ増のための経営改善や創業、新事業開拓、事業再生など、経営一般にまつわる様々な事柄を相談することができます。 - 中小企業支援施策と連携した支援
中小企業向けの公的な支援策には様々なものが存在しますが、そのすべてが必ずしも当の中小企業経営者に知られているわけではありません。利用可能な助成金や融資制度を紹介し、また申請時の事業計画策定の支援およびフォローアップを行うことで企業の競争力を向上させます。
相談できる企業の課題とは?
相談できる課題
上述のように、認定経営革新等支援機関にも様々な業種がありますので、それぞれ特化した得意分野があります。主な専門分野は下記の通りです。
創業支援、人材育成、事業計画作成支援、人事・労務、事業承継、海外展開、M&A、BCP作成支援、生産管理・品質管理、物流戦略、情報化戦略、金融・財務、知財戦略、販路開拓・マーケティング、その他
認定経営革新等支援機関からの支援を希望する場合は、それぞれの状況と課題に応じて自社のニーズに適した支援機関を見つけましょう。
実際の事例
ここでは、創業支援について事例を紹介していきます。企業を創業する際、多くの場合は資金の調達先として
- 日本政策金融公庫の創業融資
- 各行政機関と連携した制度融資
のどちらかを受けることをまず検討します。このうち、無担保・無保証の融資が可能な日本政策金融公庫の創業融資は起業家にとって大変魅力的ですが、自己資本の2倍までしか融資を受けることができないという欠点があります。実現可能性の高い事業計画を策定したものの通常の創業融資のみでは難しいというような場合は、認定経営革新等支援機関のサポートによって活路を開くことができます。認定経営革新等支援機関の指導・助言を受けていることを条件に、日本政策金融公庫との連携による中小企業経営力強化資金という制度を用いて、自己資本の制限を超えて融資を受けることが可能になるケースがあります。
支援を受けるメリット
支援の流れ
認定経営革新等支援機関による支援には、いくつかのステップがあります。
- ニーズを明確化する
支援を受けて業績アップを図りたいのか、経営の向上を図りたいのか、支援を受けるための目的を明確化しておきましょう。 - 経済産業局掲載のリストの中から認定経営革新等支援機関の選定或いは各都道府県に設置されたよろず支援機関等に相談し、紹介を受ける
- 認定経営革新等支援機関に相談をする
- 経営状況を把握する
長短借入金の構造が経営に与える影響を分析したりすることで、財務内容等経営状況の分析や経営課題の抽出を行います。 - 事業計画の策定
財務の安定化に係るアドバイスや強みを生かした戦略立案支援など、計画策定に向けた支援・助言を受けます。 - 事業計画の実行
金融機関への経営状況の説明補助や月次決算書等の作成指導など、事業の実施に必要な支援・助言を受けます。 - 支援の効果を測定する
定期的にモニタリングやフォローアップを受けて計画の進捗状況をチェックします。
期待される効果
認定経営革新等支援機関の支援を受けることで、主に次の2つのメリットが期待できます。
- 早期に経営を改善できる
経営に関する課題や悩みは企業により様々です。現状を把握して課題と対応策を明確にすることで、停滞や衰退が始まる前の段階から早期の対処が可能になります。 - 経営力が向上する
専門家の指導を受けて経営のノウハウを身に付けることはもちろん、税金や融資の面での優遇措置を受けられる可能性が増大します。こうした特典には、先述の政策金融公庫による特別融資の他にも、認定経営革新等支援機関より経営上の改善に資するものとして証明された備品や設備について特別償却か税額控除が認められる商業・サービス業等活性化税制などがあります。結果として、資金調達が容易になり、海外や国内での事業展開がしやすくなります。
認定支援機関の活用方法
認定経営革新等支援機関の活用を希望する場合、いくつかの調べる方法があります。
- 地域検索をする
各地域を管轄する経済産業局のウェブサイトで、都道府県別に認定経営革新等支援機関をリストアップしたExcelファイルが公表されていますので、そこから認定支援機関を探します。例えば埼玉県でしたら、関東経済産業局で認定支援機関の一覧を見つけることができます。 - 目的から検索する
自社の抱える課題が明確で、その分野に対応可能な認定経営革新等支援機関を調べたい場合は、上記の都道府県別のExcelファイルより、フィルタ機能を使って検索します。 - 相談機関がわからない場合の窓口
認定経営革新等支援機関について、各地域を管轄する経済産業局に窓口が存在します。例えば関東の場合、関東経済産業局産業部中小企業課まで連絡をします。
まとめ
今回扱った認定経営革新等支援機関の制度をはじめとする中小企業への公的支援の存在は、充分に知られているとは言い難いのが現状ですが、こうした施策を有効に活用することで経営を改善することができます。積極的に活用して資金繰りを良くし、企業の成長に繋げてみてはいかがでしょうか。