利益が多く出た年度は経費をつかって節税対策をするのが定番でしょう。確かに所得金額を減らすことで法人税などの節税につながります。しかし、所得金額に関係なくかかる税金は存在し、しかも高度なテクニックを使わなくても簡単に節税ができます。そこで、法人にかかる税金の種類とその節税対策を説明します。
法人にかかる税金を紹介
法人にかかる税金はさまざまであり、国税・地方税の種類は多岐にわたります。まずは性質ごとに税金を見ていきましょう。
法人所得にかかる税金
法人所得とは事業活動でのもうけを意味します。次の税金がかかります。
(1)法人税
国税であり、法人所得に税率をかけて計算します。
(2)法人事業税
地方税であり、法人所得に税率をかけて計算します。また、期末時点での資本金が1億円を超える法人は外形標準課税という税が、法人所得以外に対しても課税されます。
(3)法人住民税
地方税であり、「法人税に税率をかけて計算する所得割」と「事業規模に応じて課税される均等割という税額」の合計額で計算します。
取引自体にかかる税金
法人所得の有無に関係なく、取引自体にかかる税金は次の通りです。
(1)消費税・地方消費税
消費税が国税、地方消費税が地方税であり、法人が得意先など消費者から預かった消費税を納付します。
(2)印紙税
国税であり、領収書など20種類の課税文書に対してかかる税金です。
(3)宿泊税
地方税であり、宿泊施設が宿泊者から預かった宿泊税を納付します。
固定資産・事業所にかかる税金
固定資産の保有、事業所の使用に対してかかる税金について紹介します。
(1)固定資産税・償却資産税
地方税であり、固定資産の保有に対してかかる税金です。固定資産税は土地・家屋、償却資産税は土地・家屋・自動車以外の償却資産に課税されます。
(2)自動車税・軽自動車税
地方税であり、自動車の保有に対してかかる税金です。自動車税は三輪以上の小型自動車、普通自動車(特殊自動車を除く)、軽自動車税はバイクや軽自動車などに課税されます。
(3)事業所税
地方税であり、事業所の使用に対してかかる税金です。
税金の種類ごとの納税義務者
上記の税金を納付するのは、納税義務者に該当する場合です。つまり、納税義務者に該当しなければ、非課税になります。
(1)法人税・法人事業税・法人住民税
すべての法人
(2)消費税・地方消費税
原則、次のいずれかの条件に該当する法人
- 前々年度の課税売上高が1,000万円を超える場合
- 前年度の期首から6ヵ月間の課税売上高および給与等支給額が1,000万円を超える場合
(3)印紙税
20種類の課税文書を作成または所持している法人(ただし、課税文書のうち非課税文書を除く)
(4)宿泊税
東京都、大阪府、京都市の宿泊施設(ただし、東京都と大阪府の場合、宿泊料金が1人1泊あたり1万円未満は非課税)
(5)固定資産税・償却資産税
毎年1月1日時点で所有者として登記または登録している法人(ただし、保有している土地の評価額が30万円未満、家屋の評価額が20万円未満、償却資産の評価額が150万円未満の場合は免税)
(6)自動車税
4月1日(新車登録は登録月の翌月)時点で所有者として登録している法人
(7)軽自動車税
毎年4月1日時点で所有者として登録している法人
(8)事業所税
特定の地域において事業所を使用している法人(ただし、床面積1,000㎡以下および事業所内の従業者数100人以下の場合は免税)
税金の種類ごとの計算方法
税対策に役立てるために税金の種類ごとの計算方法を説明します。
法人税・法人事業税・法人住民税
前述の通り、法人所得にかかる税金です。それでは、それぞれの税金の計算方法を詳しく見ていきましょう。
(1)法人税
次の算式で計算します。
法人所得の中には銀行利子や株式配当などが含まれて、天引きされた源泉所得税を法人税から控除することができます。
(2)法人事業税
外形標準課税を適用しない法人と適用する法人によって計算方法が違ってきます。
1.外形標準課税を適用しない法人
所得割のみで計算します。算式は次の通りです。
2.外形標準課税を適用する法人
次の算式で計算した金額の合計額になります。
・付加価値割:(報酬給与額+純支払利子+純支払賃借料)×税率
・資本割:資本金等の額(または資本金+資本準備金)×税率
(3)法人住民税
前述の通り、所得割と均等割の合計額で計算します。ただし、銀行利子から天引きされた住民税利子割の控除が可能です。
1.所得割
2.均等割
事業規模が大きいほど税金は多くかかります。事業企画の指標が資本金等の額(または資本金+資本準備金)と従業員数であり、たとえ赤字でも、最低年7万円が課税されます。
消費税・地方消費税・印紙税・宿泊税
取引自体にかかる税金でも、税目ごとの計算方法は違います。
(1)消費税・地方消費税
消費者から預かった消費税を次の算式で計算します。
数値がプラスなら納付して、マイナスなら還付されます。
(2)印紙税
20種類の課税文書のうち、おもな文書を取り上げます。
- 不動産の譲渡契約書
- 請負に関する契約書
- 定款
- 売上代金にかかる金銭または有価証券の受領書(領収書)
なお、請求書や納品書は課税文書に該当しないため、印紙税は非課税です。
(3)宿泊税
前述の通り、1人1泊あたりの宿泊料金に対して課税され、東京都の場合は次の通りです。
- 10,000円以上15,000円未満:100円
- 15,000円以上:200円
固定資産税・償却資産税・自動車税・軽自動車税・事業所税
それぞれの税金の計算方法は次の通りです。
(1)固定資産税・償却資産税
土地、家屋、償却資産ごとに次の算式で計算します。
(2)自動車税・軽自動車税
車種、排気量、用途(自家用・営業用)によって税額が決まってきます。4月1日からの所有期間が1年未満の場合、自動車税は月割計算をして課税しますが、軽自動車税は月割計算をせず、免税になります。
(3)事業所税
資産割と従業者割の合計額で計算します。
1.資産割
・事業所床面積(㎡)×税率600円
2.従業者割
・従業者給与総額×税率0.25%
4種類の節税対策
税金の種類に応じた節税対策を4種類紹介します。
所得金額を圧縮する方法
所得金額の圧縮は法人税、法人事業税、法人住民税の節税につながります。たとえば、今年度のもうけが予測より大きくなる場合、ネット広告などに先行投資をして損金計上すれば、所得金額を圧縮することができます。
免税点を利用した方法
免税点を利用すれば、本来納めるべき税金を法人にプールすることができます。たとえば、今期の課税売上高を1,000万円以下に抑えれば、再来年、消費者から預かった消費税・地方消費税が手元に残ります。
なお、免税点を利用した節税対策は固定資産税・償却資産税と事業所税でも可能です。
購入日を遅らせる方法
固定資産税、償却資産税は1月1日登録時点の土地・家屋・償却資産、自動車税は登録月の翌月登録の自動車、軽自動車税は4月1日の登録時点の軽自動車に課税されます。そのため、土地・家屋・償却資産を1月2日以降、軽自動車を4月2日以降に登録すれば、1年間の税額が免除になります。また、自動車の登録を月末ではなく、月初めにすれば、1ヵ月間の自動車税の節税につながります。
立地場所を利用した方法
事業所税、宿泊税は特定の地域に限定されています。そのため、非課税の地域に立地すれば節税につながります。たとえば、東京23区内の工場を東京都日野市に移転すれば、事業所税は課税されません。
まとめ
法人にかかる税金の種類に応じた税金対策を施すことで、節税効果がより得られます。もうけた年度での所得金額の圧縮はもちろん、固定資産や自動車の購入を1日遅らせるだけでも節税につながります。つまり、簡単なところから手を打つことが節税対策のポイントになってきます。
▼参考URL
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hojin/5759.htm
http://www.tax.metro.tokyo.jp/kazei/houjinji.html#ho_02_01
http://www.tax.metro.tokyo.jp/kazei/houjinji.html#ho_03_01
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shohi/6303.htm
https://www.mof.go.jp/tax_policy/summary/consumption/d04.htm#a01
https://www.nta.go.jp/publication/pamph/inshi/pdf/zeigaku_ichiran.pdf
http://www.tax.metro.tokyo.jp/shisan/kotei_tosi.html
http://www.tax.metro.tokyo.jp/shisan/shokyak_sis.html#gaiyo_01
http://www.tax.metro.tokyo.jp/kazei/car.html#j_1
http://www.city.itabashi.tokyo.jp/c_kurashi/000/000337.html