ドライバーの税金は個人事業主と同じルールが適用される傾向にあります。その一方、サラリーマンと同じように給与所得者となるドライバーも存在します。個人事業主と給与所得者によって税金の計算方法は異なりますが、今回は計算が複雑になりがちな個人事業主の税金について解説します。
ドライバーにかかる税金のアウトライン
ドライバーにかかる税金は元請業者の運送業者との契約形態によって異なります。契約形態ごとの税金について見ていきましょう。
ドライバーの収入に対する税目
ドライバーの収入に対する税目は次の契約形態によって決まってきます。
(1)業務委託契約およびフランチャイズ契約
元請業者の運送業者と業務委託契約およびフランチャイズ契約を結んでいる場合、ドライバーの仕事が「本業」または「副業」によって次の税目が課税されます。
1.本業の場合
ドライバーの収入に対する所得金額は事業所得に該当し、事業所得にかかる所得税・事業税・住民税および消費税が課税されます。
2.副業の場合
ドライバーの収入に対する所得金額は雑所得に該当し、雑所得にかかる所得税・住民税が課税されます。事業所得と違い、事業税と消費税は課税されません。
(2)雇用契約
元請業者の運送業者と雇用契約を結んでいる場合、ドライバーの収入に対する所得金額は給与所得に該当し、給与所得にかかる所得税・住民税が課税され、入金時に源泉所得税が天引きされます。
また、雇用契約の範囲は幅広く、たとえ業務委託契約およびフランチャイズ契約であっても、サラリーマンと同じ勤務形態など実質雇用契約に該当し、税金の計算では給与所得者として取り扱われます。
確定申告の方法
確定申告の方法は契約形態によって決まってきます。
(1)業務委託契約、フランチャイズ契約
ドライバーの仕事が本業また副業によって確定申告の方法は少し異なります。
1.本業の場合
ドライバーの収入に対する事業所得の確定申告が必要になります。
2.副業の場合
「ドライバーの収入に対する雑所得」と「本業の勤務先に対する給与所得」の確定申告が必要になります。ただし、次の要件を満たす場合、雑所得の確定申告は不要です。
- 雑所得が20万円以下
- 勤務先の年間給与収入が2,000万円以下
(2)雇用契約
確定申告は不要です。その代わり、勤務先での年末調整が必要であり、その段階で所得税と住民税の計算が完結します。ただし、勤務先で年末調整が実施されていない場合、給与所得について確定申告(還付申告)をすることで、天引きされた源泉所得税の一部を取り戻すことができます。
事業所得・雑所得の計算方法
給与所得は年間給与収入から自動的に計算されるのに対し、事業所得と雑所得は自分で計算しなければなりません。そこで、事業所得と雑所得の計算方法について説明します。
(1)事業所得
算式は次の通りです。
(2)雑所得
ドライバーの収入に対する所得金額は収入金額と必要経費の金額によって決まり、税額の計算にも影響します。
収入金額の計算方法
事業所得・雑所得の収入金額は入金されたタイミングで計上せず、税法上のルールが適用されます。
原則は役務の提供が完了したタイミング
事業所得・雑所得の収入金額は原則、役務の提供が完了したタイミングで計上します。役務の提供の完了とは、ドライバーの仕事が完了した時点であり、納品書をベースに収入金額を計算します。そのため、締め後の売上など元請業者の運送業者から発行される請求書に記載されていない金額の計上漏れについて税務調査で指摘されるケースがあります。
契約ごとの収入金額
業務委託契約とフランチャイズ契約は手数料の取り扱いの違いにより、収入金額の計算も違ってきます。
(1)業務委託契約
売上高から元請業者の運送業者に手数料を差し引いた残額が収入金額になります。
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
---|---|---|---|
売掛金 | 9万円 | 売上高 | 9万円 |
(2)フランチャイズ契約
フランチャイズ本部に対する手数料に相当するロイヤリティを差し引く前の金額が収入金額になります。
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
---|---|---|---|
売掛金 | 9万円 | 売上高 | 10万円 |
支払手数料 (ロイヤリティ) |
1万円 |
必要経費の計算方法
事業所得・雑所得の必要経費について、ドライバーに即した内容を説明します。
必要経費に計上できる項目
ドライバーが必要経費に計上できる項目は次の通りです。
(1) 車両関連費用
- ガソリン代
- 高速代金など有料道路代
- 駐車料金、月極駐車場代
- 車のリース代
- 自動車保険
- 自動車税、軽自動車税
- 車検代、修理費用
- ドライバー業務に必要なカー用品
- 後述する購入した車両の購入金額の一部
(2)その他の費用
- 携帯電話代
- 固定電話代
- 自宅家賃
- 電気代
- 事務用品
- 交際費(取引先に対する贈答費用、香典代など)
- 会議費(取引先との打合せなど)
- 行政書士などに対する許認可申請の代行費用
- 税理士報酬
- 加盟本部に支払う手数料
- フランチャイズ本部に支払うロイヤリティ
購入した車両の必要経費の計算方法
購入金額30万円以上の車両は一括で必要経費に計上できず、減価償却という手続きを踏みます。減価償却とは、車両の購入金額を税法上の使用可能期間である耐用年数に応じて、複数年で必要経費に計上する方法のことを指します。たとえば、耐用年数4年のトラックを100万円で購入した場合、必要経費の年平均の計上額は「購入金額100万円÷耐用年数4年=25万円」になります。
車両関連費用は事業按分が原則必要
自宅家賃など事業用とプライベート用に区分できない費用は事業割合(全体のうち事業用にかかる割合)で按分計算が必要ですが、ドライバーの場合は車両関連費用の事業按分が重要になってきます。車両の購入費用やガソリン代などの事業按分はドライバーの仕事にかかる走行距離や週あたりの稼働日数(例 1週間のうち、週5日稼働している)などの算定がポイントになってきます。
ドライバー用の車両を買い替えた場合の税金
個人事業主の場合、ドライバーの車両を買い替えた場合の税金の計算が少し複雑になります。そこで、下取りに出した場合と除却した場合に分けて説明します。
車両を下取りに出した場合
そもそも車両を下取りに出すとは、業者への売却を意味し、たとえ事業用資産であっても、総合課税の譲渡所得に該当します。算式は次の通りです。
そのため、譲渡益が50万円以下なら課税されません。一方、事業用資産に限り、譲渡損が生じた場合、事業所得など他の所得から差し引くことができます。
また、下取りに出した車両については所有期間が5年以下なら「短期譲渡所得」、5年超なら「長期譲渡所得」になり、総合課税の所得金額に加算する金額は次の通りです。
- 短期譲渡所得:譲渡所得の全額
- 長期譲渡所得:譲渡所得の2分の1相当額
車両を除却した場合
除却については車両の帳簿価額に相当する未償却残高(「購入金額-減価償却費」)を必要経費に計上します。たとえば、未償却残高30万円の車両を除却した場合は同額(30万円)が必要経費になります。
まとめ
ドライバーの税金は元請業者の運送業者との契約形態によって計算方法が決まってきます。業務委託契約とフランチャイズ契約の場合、個人事業主に該当します。自分でドライバーの収入にかかる収入金額や必要経費などを計算し確定申告をする必要があります。