リースと購入ではどちらが良い? 基本から税務処理まで徹底比較 | MONEYIZM
 

リースと購入ではどちらが良い?
基本から税務処理まで徹底比較

設備投資をする際には、購入のほかにリースという手段があります。それぞれのメリットや会計上の取扱には違いがあります。本記事では購入とリースの長短を比較・整理しました。

設備投資の手段

パソコン、複合機、レジ、自動車といった設備の入れ替えや導入を行う設備投資では、購入リースのいずれかを選択するのが一般的です。購入とリースのそれぞれの違いや特徴を知っておくと、節税や資産収益率に違いが出てきます。

購入の特徴

自己資金で購入する場合、長期利用を考えると割安になり、さらに自社の所有物となります。ただし、初期導入費用が高額になることが多いため、手持ち資金が急激に減少します。また、購入金額がそのまま経費に計上されるのではなく、多くの設備は減価償却によって経費を計上していきますので、経費化されるまでに年数がかかります。

リースの特徴

リースには、ファイナンス・リースオペレーティング・リースという2つの種類があります。

ファイナンス・リースとは、リース会社が設備投資をしたい企業に代わってレジやIT機器などの機械設備といった固定資産を購入し、それを長期に渡って賃貸する取引のことをいいます。リースできる資産は、パソコンや複合機などのIT関連機器、産業用機械、自動車、店舗に必要なレジPOSシステムなど、あらゆるものが対象となり、企業はリース会社にリース期間に応じたリース料を支払っていくことになります。中途解約は原則として不可で、リース会社がリース契約に要した資金のほぼ全額が、リース料の総額によって賄われます。
 
ファイナンス・リースはさらに、所有権移転ファイナンス・リースと、所有権移転外ファイナンス・リースに分けられます。所有権移転ファイナンス・リースでは、リース期間が終了すると所有権はリース会社から企業へと移転します。他方の所有権移転外ファイナンス・リースでは、リース期間が終わりリース料を全額支払っても、所有権はリース会社に残ります。リース取引といえば通常、後者の所有権移転外ファイナンス・リースのことを指します。
 
オペレーティング・リースは、ファイナンス・リース以外のリースのことを指し、借りる企業側の計画に合わせて短期間で契約することができます。リース期間が終われば設備はリース会社に返却します。オペレーティング・リースは不特定多数の企業に反復して賃貸しますので、いわばレンタルのようなものだと考えるとわかりやすいでしょう。

メリット・デメリット

では、ここからはそれぞれのメリット・デメリットについて見ていくことにしましょう。

購入のメリット

まず購入のメリットは前述のとおり、資産が自社の所有物になることです。長期利用を考えるとリースより割安になる場合が多いです。また、移転や買い替えが自由にできるだけでなく、不要ならば売却できます。

購入のデメリット

購入のデメリットはなんといっても、初期導入費用が高額になることです。設備投資の金額が大きければ大きいほど負担が増えます。余剰資金が少なければ借り入れも選択肢に入ってくるでしょう。また、減価償却計算、償却資産税の申告など事務手続きの負担が大きくなることもデメリットのひとつといえます。

リースのメリット

  • 初期費用が抑えられる
    リースは、購入のような多額の初期費用が不要であることが最大のメリットです。手持ちの資金を他に有効活用することができます。
  • 新しい設備の入れ替えが容易になる
    リース期間が終了すれば新しい機種を導入できるというメリットもあり、設備の陳腐化を防ぐことができます。
  • 費用の平準化
    購入した場合は耐用年数に応じて減価償却をするため、定率法で償却すれば初期ほど多くの費用が計上されていきます。他方のリースは、リース料がリース期間中一定ですのでコストの把握が容易です。また、所有権はリース会社にあるため事務管理を省略できることもメリットのひとつです。

リースのデメリット

  • 中途解約できない
    ファイナンス・リースは中途解約できません。もし解約するのであれば未経過リース料の支払いを求められます。
  • 支払総額が割高である
    リース料には、設備本体価格、保険料、固定資産税、金利、リース会社の利益が含まれています。そのため、自己資金での購入に比べれば支払総額は割高になってしまいます。

それぞれの会計・税務処理

ここからは、購入の場合とリースの場合での税務処理の違いを見ていきます。まず注意しなければならないのは、2008年に「リース取引に関する会計基準」が変更になったことです。これにより、所有権移転外ファイナンス・リースにおいては、賃貸借処理(オフバランス)を原則廃止し、売買処理(オンバランス)することとなりました。そのため、以後は通常の自社資産と同様の処理が必要となり、多くの上場企業は、所有権移転外ファイナンス・リースのメリットを享受できなくなりました。当該の会計基準は、2008年4月1日以後に開始するリース契約から適用となっています。

購入の場合

購入の場合は、購入金額の全額を購入年度に経費計上せず、耐用年数に応じた減価償却費を計上します。主な減価償却資産の耐用年数は税法でそれぞれ定められており、それに応じた年数で償却していきます。償却の方法は資産の種類によって決められていることが多いですが、定率法と定額法のいずれかを選択できる場合もあります。定率法では、未償却金額が多い最初の年ほど減価償却費を多く計上することができるのに対し、定額法では耐用年数を通じて一定の額が減価償却費として計上されます。

リースの場合

前述のように「リース取引に関する会計基準」が2008年に改正されたため、会計処理の方法はリース期間やリース金額によって変わります。リース取引の税務処理は以下のとおり処理方法が分かれます。
 

  • 所有権移転ファイナンス・リース
    原則として、購入による通常の自社資産と同様の売買処理が必要です。リース資産とリース債務を計上(オンバランス)し、リース資産は自己所有の資産に対して行うのと同じ減価償却の方法により法定耐用年数にわたって償却されます。
  • 所有権移転外ファイナンス・リース
    所有権移転外ファイナンス・リースは、売買取引に準じた処理を行います。リース期間中はリース資産・リース債務を計上(オンバランス)し、「リース期間定額法」という特別な方法により減価償却します。この方法における各年の償却限度額は、「(リース資産の取得価額-借手の残価保証額)×当該事業年度のリース期間の月数÷リース期間の月数」という式により求められます。また、利息相当額はリース料から分離し、利息法または定額法で処理していきます。
  • 300万円未満のリース取引及びオペレーティング・リース
    300万円未満の少額の所有権移転外ファイナンス・リース及びオペレーティング・リースは、これまで通り、賃貸借処理(オフバランス)できます。税務上、支払ったリース料は減価償却費として計上され、固定資産台帳での管理等が必要なくなるので会計処理を簡易化できます。

中小企業での税務処理

中小企業での税務処理は「中小企業会計指針」によって、所有権移転外ファイナンス・リースは賃貸借処理(オフバランス)が可能です。つまり、2008年に改正された「リース取引に関する会計基準」の適用外ということになり、これまでと同じくリースのメリットを享受することができます。ここでいう中小企業には、金融商品取引法の適用を受ける企業並びにその子会社及び関連企業、会計監査人を設置している企業及びその子会社が含まれます。

 

☆ヒント
設備投資を進める上で重要なのが、いかに節税しながら進めていくかということです。貴重な時間を無駄にしてしまわないためにも、減価償却費の計算などの煩雑な作業は、専門家に頼んでしまうのも一計といえます。ビスカスでは、税理士のご紹介・ご相談を無料で承っております。

 

【関連記事】:設備投資で使うことができる法人税法・租税特別措置法の特典を解説

Youtube動画でポイントを解説中!

事業を始める時の設備投資は「購入」と「リース」どちらがよい?|3分でわかる!税金チャンネル

ビスカス公式YouTubeチャンネルのご案内

ビスカス公式YouTubeチャンネル「3分でわかる!税金チャンネル」では、お金に関する疑問を分かりやすく簡単に紹介中!
チャンネル登録はこちら:3分でわかる!税金チャンネル

まとめ

今回はリースと購入の違いについてお伝えしてきましたが、単純にどちらが正解か不正解かということではありません。資金繰りやリース期間を考慮しながら、それぞれのメリット・デメリットを比較して選ぶことが大切です。

岡田桃子
東京大学卒。
卒業後は中央官庁に勤め、退官後ベンチャー企業に転職し、経理・法務などに携わる。
経理業務で得た知見や、中央官庁時代に得た法律や制度に関するナレッジを分かりやすく解説します。
「税務/会計」カテゴリの最新記事