【5月に関係する税金】 法人・個人事業主が資金繰り対策に生かす方法 | MONEYIZM
 

【5月に関係する税金】
法人・個人事業主が資金繰り対策に生かす方法

年度末(3月)決算の法人の納税月は5月であることを象徴するように、5月に関係する税金は法人・個人事業主の資金繰りに影響を及ぼします。しかも、自動車など納税月が5月の一回のみの税目も存在します。そこで、法人・個人事業主が資金繰り対策に生かすためにも、5月に関係する税金について解説します。

5月に関係する税金のスケジュール

5月に関係する税金のスケジュールを紹介します。

確定申告にかかる税金

法人と個人事業主の確定申告にかかる税金は次の通りです。

(1) 3月決算法人

3月決算法人は原則、5月末日までに確定申告をし、同日(5月末日)までに確定申告にかかる法人税・地方法人税、法人住民税、法人事業税、消費税・地方消費税、法人事業所税を納付します。また、特例により申告期限を延長しても、5月末日過ぎに納付すると、金利に相当する利子税が発生します。ただし、「災害等による期限の延長」の場合は利子税が免除されます。

(2)3・6・9・12月決算法人および個人事業者

消費税・地方消費税の課税期間を3ヵ月に短縮している場合、5月末日までに確定申告をし、同日(5月末日)までに納付します。

(3)1ヵ月ごとに消費税の確定申告をしている法人・個人事業者

消費税・地方消費税の課税期間を1ヵ月に短縮している場合、5月末日までに確定申告をし、同日(5月末日)までに納付します。

(4)延納の届出(納付期限の延長)をしている個人事業主

確定申告にかかる所得税の延納の届出をしている場合、延納した税額の納付期限は5月末日になります。

予定納税にかかる税金

確定申告にかかる税金以外にも、予定納税という税金の前払いをしなければなりません。そこで、納付期限が5月末日の予定納税について紹介します。

(1)9月決算法人
①法人税・地方法人税・法人事業税・法人住民税

前年度の法人税が20万円を超える場合、6ヵ月分に相当する「前年度の法人税・地方法人税・法人事業税・法人住民税×2分の1」を5月末日までに納付するのが原則です。

②消費税・地方消費税

前年度の消費税・地方消費税の合計税額が60万円を超える場合には、6ヵ月分に相当する「前年度の消費税・地方消費税の合計税額×2分の1」を5月末日までに納付するのが原則です。

(2) 3・6・9・12月決算法人および個人事業者

前年度の消費税・地方消費税の合計税額が500万円を超える場合、3ヵ月分に相当する「前年度の消費税・地方消費税の合計税額×4分の1」を5月末日までに納付するのが原則です。

(3)大規模な法人および個人事業主

前年度の消費税・地方消費税の合計税額が6,000万円を超える場合、1ヵ月分に相当する「前年度の消費税・地方消費税の合計税額×12分の1」を5月末日までに納付するのが原則です。ただし、1月決算法人および個人事業主は次の予定納税額になります。

・1月決算法人:前年度の消費税・地方消費税の合計税額×12分の2(2ヵ月分相当)
・個人事業主:前年度の消費税・地方消費税の合計税額×12分の3(3ヵ月分相当)

また、2・3月決算法人は消費税・地方消費税の予定納税の対象外になります。

自動車税・軽自動車税・鉱区税

4月1日現在において、次の資産の所有者は5月末日までに納税する必要があります。

・軽自動車を除いた自動車:自動車税
・軽自動車:軽自動車税
・鉱業権(鉱物のある地層から鉱物を採掘し、取得する事ができる権利):鉱区税

従業員の雇用にかかる税金・社会保険料

雇用している従業員の給与支払いにかかる次の税金と社会保険料を5月末日までに納付します。

(1)源泉所得税

4月に支払った給与が一定額(独身の従業員の場合は月額給与8万8,000円以上)を超える場合、徴収した源泉所得税を5月10日までに納付するのが原則です。

(2)特別徴収住民税

4月に給与天引きした住民税を5月10日までに納付します。

(3)社会保険料

4月に給与天引きした厚生年金、健康保険、介護保険を5月末日までに納付します。

(4)4月10日までに開業した法人、個人事業主

開業日から7月末日までの期間の概算労働保険料(労災保険・雇用保険)は5月中に納付しなければなりません。納付期限は開業日の翌日から50日以内です。ただし、4月1日に開業した場合に限り、開業日からカウントするため、納付期限は5月20日になります。

特別農業所得者の承認申請

個人事業主の予定納税は原則年2回ですが、特別農業所得者に限り、納付回数を年1回にすることが認められて、その承認申請の期限が5月末日までになります。

税金のスケジュールの影響より資金繰りを苦しくしないためには?

税金のスケジュールや納付期限を把握することも大切ですが、たとえば今年度の納付税額が多すぎた場合などは、次年度以降の資金繰り対策に生かすことで、資金繰りを優位にすることができます。

確定申告にかかる税金を資金繰り対策に生かす方法

確定申告にかかる税金を次年度以降の資金繰り対策に生かす方法について説明します。

3月決算法人の場合

3月決算法人で5月に法人税などの法人所得にかかる税金を納めるのが大変な場合、決算月および納税月を変更することで、資金繰りを楽にすることができます。具体的には、景気の良い月を決算月にし、収入の多い月を納税月にするのがポイントになります。たとえば、稲作をメインとする農業法人の場合、収穫時期の9月を決算月、11月を納税月にすれば、現金預金残高が比較的多い月を納付期限にすることが可能です。

個人事業主の場合

そもそも個人事業主が所得税の延納を選択する場合、利子税を追加納付します。しかし、延納額を29万6,200円以下に設定すれば、利子税を0円にすることができます。29万6,200円以下に設定すれば、利子税は1,000円未満となり免除されるためです。シミュレーションをすると、次の通りになります。

所得税29万6,200円×利子税率(年1.6%)×延納の期間(3/16から5/31までの77日)÷365=999円

予定納税を実額で計算する方法

予定納税は前年度実績をベースに計算するのが原則ですが、今年度の実績をベースに実額で計算することも認められています。そこで、実額で計算する場合のアウトライン、注意点などを説明します。

法人税・地方法人税・法人事業税・法人住民税

9月決算法人は5月に納付する法人税・地方法人税・法人事業税・法人住民税の予定納税を実額で計算することができます。たとえば、今年度は赤字の法人が前年度実績をベースに計算した予定納税が大変な場合、実額で計算することで、納税額を0円にすることができます。

消費税・地方消費税

次の法人・個人事業主は5月に納付する消費税・地方消費税の予定納税も実額で計算することができます。

(1)前年度の消費税・地方消費税の合計税額が500万円を超える3・6・9・12月決算法人および個人事業者

(2) 前年度の消費税・地方消費税の合計税額が6,000万円を超える大規模な法人および個人事業主(2月、3月決算法人を除く)

税務署に申告しないと実額での計算は認められない

予定納税の実額での計算が認められるためには、税務署に申告することが条件になります。そのため、申告を怠ると、原則通り前年度実績により申告したものとみなされます。たとえば、前述の今年度は赤字の法人が申告を怠ると、たとえ実額で計算した税額が0円でも、前年度実績をベースに計算した税額を納付しなければなりません。

予定納税額がマイナスでも還付は受けられない

消費税・地方消費税の実績をベースに計算した予定納税額は「売上税額-仕入税額」となるため、マイナスになるケースがあります。しかし、予定納税の場合、計算上マイナスになっても、差額分の還付(返金)は受けられません。あくまでも消費税・地方消費税の還付が受けられるのは確定申告の場合に限られます。

まとめ

5月に関係する税金のスケジュールを把握し、次年度以降の資金繰り対策に生かすのがポイントです。資金繰り対策の例として、「確定申告にかかる税金」と「予定納税を実額で計算する方法」を挙げましたが、先行投資による節税対策など他にも資金繰り対策に生かす方法は存在します。税理士を上手に活用し、資金繰りを優位にしましょう。

阿部正仁
TAX(税金)ライター。会計事務所で約10年間の勤務により調査能力を身に付けた結果、企業分析の能力では高い定評を得、法人から直接調査を依頼される実績も持つ。コーチングスキルを活かした取材力で、HP・メディアでは語られない発言を引き出すのが得意。
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