在宅ワーカーは確定申告が必要かどうかが話題になることがあります。そもそも在宅ワーカーは税法上、「アルバイトと同じ雇用契約」または「個人事業主」なのか疑問を持つ人も多いでしょう。そこで、内職・在宅ワーカーの税金について詳しく解説します。
在宅ワーカーは確定申告が必要
在宅ワーカーは原則、確定申告が必要であり、例外として不要な場合もあります。それでは、詳しく見ていきましょう。
在宅ワーカーは個人事業主
在宅ワーカーは個人事業主です。アルバイトのような雇用契約でない以上、申告納税制度にのっとり、確定申告が必要になります。
確定申告の方法
確定申告とは、在宅ワーカーでの「もうけ」と「もうけにかかる税金」を計算し、税務署に申告・税金を納めるまでのプロセスを指します。具体的には次の手順を踏みます。
(1)収入金額を計算する
在宅ワークでの売上高を計算します。たとえば、オークションの売上高なら商品の販売金額、Web制作なら納品した分にかかる請求額を集計します。
(2)必要経費を計算する
必要経費とは、在宅ワークで収入を得るために必要な費用のことを指します。たとえば、オークションに必要な商品の仕入金額やWeb制作の打ち合わせに必要な交通費など、収入を得るために直接必要な費用を集計します。また別の例として、確定申告をするための書籍代など、収入を得るために間接的に必要な費用も必要経費に計上できます。
(3)合計所得金額を計算する
合計所得金額とは、在宅ワークでのもうけのことを指し、「収入金額-必要経費」で計算します。また、アルバイトを兼業している場合は、給料にかかる所得金額(給与所得)も加算します。
(4)所得控除を計算する
所得控除とは、税法上の生活費に相当し、最低額は基礎控除38万円になります。医療費控除や生命保険料控除などがある場合は、それらにかかる所得控除も加算します。
(5)課税所得金額を計算する
税額計算のベースとなるのが課税所得金額であり、「合計所得金額-所得控除」で計算します。
(6)税額計算をする
「課税所得金額×税率」で計算します。累進課税制度を採用しているため、課税所得金額に比例して税率が高くなるのが特徴です。また、源泉徴収税額(入金時に天引きされた源泉所得税)や住宅ローン控除など税額控除がある場合は、「課税所得金額×税率」から差し引くことができます。
(7)税務署に申告をする
毎年3月15日までに税務署に所得金額や納める税金を申告します。申告する方法は、税務署の窓口への提出、郵送での提出、電子申告によるオンラインでの送信の3種類あります。
(8)税金を納める
原則、3月15日までに税金を納めます。例外として、振替納税やクレジットカード納税により、税金を納める時期を先延ばしにすることができます。
確定申告が不要な場合もアリ
在宅ワーカーにも、例外として確定申告が不要な場合があります。具体的には、次の通りです。
(1)収入が在宅ワークのみの場合
合計所得金額が所得控除より下回り、課税所得金額が0円以下なら確定申告は不要です。そのため、合計所得金額が基礎控除38万円以下なら確実に確定申告は不要といえます。また、住民税の申告も、合計所得金額が基礎控除33万円以下なら確実に不要です。
(2)アルバイトを兼業している場合
在宅ワークでの合計所得金額によって次のように区分されます。
①在宅ワークでの合計所得金額が20万円以下(黒字)
確定申告は不要ですが、在宅ワークでの合計所得金額にかかる住民税の申告は必要になります。
②在宅ワークでの合計所得金額がマイナスの場合(赤字)
確定申告、住民税の申告はともに不要です。
確定申告のポイントと申告ミス・無申告のリスク
確定申告のポイントは金銭的に得をし、申告ミスや無申告によって損をしないことに尽きます。具体的には次の通りです。
(1)確定申告のポイント
節税対策をします。また、確定申告をすることで源泉徴収税額の一部が還付(返金)されるケースもあります。
(2)申告ミス・無申告のリスク
申告ミス・無申告が発覚した場合、本来納めるべき税金以外に金銭的な損失を被る可能性があります。
在宅ワークの節税対策について解説
在宅ワーカーの実情に即した節税対策について解説します。
青色申告の特典を利用する
青色申告の特典を利用することで、より多くの必要経費および所得控除を計上することができます。おもな項目は次の通りです。
(1)青色申告特別控除65万円
毎年3月15日の申告期限までに税務署へ申告することを条件に、現金支出をすることなく、65万円の所得控除ができます。なお、申告期限を過ぎると、青色申告特別控除は10万円に減額されてしまいます。
(2)30万円未満の備品を全額必要経費に計上する
通常は10万円以上の備品などの固定資産を購入すると、全額必要経費に計上できません。しかし、青色申告の特典により、全額必要経費に計上できる限度額が「10万円未満→30万円未満」に拡大されます。たとえば、パソコンの購入費用などは青色申告の特典により、全額必要経費に計上できる可能性が高くなります。
できるだけ必要経費を計上する
在宅ワークの収入を得るためのみの費用はもちろん、次の項目も仕事とプライベートの兼用の費用として、事業割合(全体のうち仕事に使用した割合)に応じた金額を必要経費に計上することができます。
- 車両の購入費用やガソリン代などの自家用車にかかる費用
- 自宅家賃
- 携帯電話代などの通信費
源泉徴収税額をもれなく申告する
デザイナーや執筆業などの在宅ワーカーは入金時に源泉所得税が天引きされている可能性があり、源泉徴収税額として税額控除が受けられます。その結果、納める税金が減額され、または源泉徴収税額の一部が還付されます。そのため、たとえ在宅ワークが赤字で確定申告と住民税の申告が不要でも、申告をすることで源泉徴収税額の一部が還付される可能性があります。まずは天引きされた源泉所得税をもれなく集計しましょう。
申告ミス・無申告のリスク
合計所得金額や税額の計算が誤っていたなどの申告ミス・無申告のリスクについて説明します。
本人の納税額が増える
税務署から間違いを指摘されると、所得税などの本税といった本来納める税金が増えます。本来納める税金に加えて、延滞利息に相当する延滞税などの追徴課税(ペナルティー)も納めなければなりません。
配偶者の納税額が増えることもある
たとえば、配偶者(妻)が在宅ワークをし、夫の扶養に入っているとします。税務署から在宅ワークの申告ミスや無申告が指摘され、合計所得金額が増額すれば、税法上の扶養から外されてしまう可能性があり、夫の納税額は増えてしまいます。
配偶者の勤務先に本人の申告ミス・無申告の情報が通知される
配偶者が給与所得者(会社員)の場合、申告ミスや無申告の指摘により、扶養から外れる情報は勤務先に通知される仕組みになっています。特に配偶者に隠れて在宅ワークをしている場合、在宅ワークの存在が発覚する可能性が高くなります。
保育料も増える
申告ミスや無申告の指摘により、在宅ワークの合計所得金額と住民税が増えれば、保育料も増える可能性があります。たとえば、世田谷区の場合、世帯の住民税の所得割(課税所得金額×住民税率10%)によって、保育料が算定されます。
まとめ
在宅ワーカーは個人事業主であり、確定申告は必要であるという認識を持つことが大切になってきます。申告ミスや無申告のリスクは納める税金が増えるだけでなく、在宅ワークの存在が配偶者に分かってしまったり、保育料にまで影響を及ぼしたりします。