フリーランスの方必見! ふるさと納税での注意点 | MONEYIZM
 

フリーランスの方必見! ふるさと納税での注意点

ふるさと納税は多くの方が利用する制度となっていますが、会社員の方に比べて、フリーランスの方は申請や利用上限額に注意が必要です。知らないうちに損をしていたということにならないために、フリーランスの方向けにふるさと納税の注意点を解説します。

ふるさと納税とは?

都市住民の少なくない部分が地方出身者です。こうした人々は進学や就職を機に東京や大阪をはじめとする都市へ移住してきたわけですが、そうなると、それまで育った地方自治体から医療や教育などコストのかかる様々な住民サービスを受けてきたにもかかわらず、移住後はその地方自治体に税金を納めることがないということになります。そのような不均衡を、都市の納税者の自発的な「寄附」によって少しでも是正できるような仕組みを整えることが、ふるさと納税の本来の目的です。

ふるさと納税は所得税および住民税の控除の対象

ふるさと納税は、正式な扱いは「寄附」とされていますが、自己負担額の2,000円を除いて全額が所得税および住民税の控除の対象となります。したがって、実質は納税先を自分の住む自治体から他の自治体に変えることと同等になっています。しかも、このふるさと納税は自分の生まれ育った自治体に限らず、ふるさと納税を受け付けている限りはどの自治体に対しても行うことが可能です。たとえ東京生まれ東京育ちであったとしても、好きな地方自治体に「納税」することが可能となったのです。

返礼品競争

この結果起きたのは、地方自治体の間の返礼品競争でした。「返礼品」というのは、ふるさと納税を行った寄附者に対して、その自治体がお礼として贈る品物で、地域の特産品などが選ばれることが多いです。納税者はふるさと納税と引き換えに価値のある返礼品を受け取ることで、実質的な納税額を減らすことができます。納税者はふるさと納税を行う先の自治体を返礼品の中身によって選ぶ傾向にあり、結果的に、ふるさと納税を集めたい地方自治体の間で、より人気のある返礼品を用意しようとする競争が起きました。
 
2017年度のふるさと納税の金額に対する返礼品のコストは4割ほどと言われています。返礼品を納税者に届けるまでには、返礼品そのもののコストだけではなく、送料や事務費、さらにはプロモーション費用などもかかります。結局、最終的に自治体の手元には納税された金額の半分も残らないというケースも少なくないようです。それでも、ふるさと納税を受けた自治体の税収は最終的には増えるわけですが、その分大きな損をするのは東京など大都市の自治体です。このままでは結果的にトータルでの税収が減ることになるため「改正地方税法」が成立し、2019年6月以降は、返礼品のコストがふるさと納税の金額の3割を超える場合や、家電製品やamazonギフト券など地場産品でないものを返礼品としている自治体に対する寄附は控除の対象としないことが定められました。

フリーランスの方は申請に注意が必要!

ワンストップ特例制度について

ふるさと納税で納めた金額を所得税および住民税の控除の対象とするには、原則として確定申告が必要です。しかし、2015年度の税制改正により、寄附先が5自治体までであれば確定申告をしなくてもよい「ワンストップ特例制度」がスタートしてより手軽になり、ふるさと納税はさらに人気となりました。
 

この制度においては、納税者がふるさと納税をした自治体にワンストップ特例申請書を提出することによって、その納税先の自治体が自分の住む自治体に控除に必要な情報を代わりに連絡してくれます。この制度の適用による税額控除を受けた場合は、ふるさと納税を行った次の年の6月以降に支払う住民税のみが減額されますが、所得税の減額は発生しません。

ワンストップ特例制度はフリーランス向けではない

ただし、ふるさと納税による申告が不要な納税者は、確定申告が不要な給与所得者などに限られます。したがって、ふるさと納税の有無にかかわらず確定申告を行わないといけない納税者が、ふるさと納税についての控除を受けるためには、ふるさと納税についても含めて記入した確定申告書を税務署に提出しなければなりません。
 

フリーランスの方の多くは確定申告を行う必要があるので、会社員と同様に「ワンストップ特例制度」が使えると思い込まず、確定申告時に記載を忘れないようにしましょう。

申請したのに控除されない?

ふるさと納税を行ったのに控除されないといった事態が起きた際、フリーランスの方の場合にまず理由として考えられるのは、上記の「ワンストップ特例制度」の対象にならない点を忘れているということです。それ以外で、控除されない、もしくは控除の金額が小さくなってしまうという場合は、以下のような可能性が指摘できます。

全額控除の上限額を超えている

ふるさと納税の控除額には上限があります。以下は、所得税と住民税における控除額の計算方法と、その上限です。下記3つの式で求めた金額の和が、ふるさと納税の控除額となります。
 

  • 所得税の控除
    (ふるさと納税額-2,000円)×(「累進課税によって変化する所得税の税率」×1.021)
    控除の対象となるふるさと納税額は、総所得金額の4割が上限です。
  • 住民税からの控除(基本分)
    (ふるさと納税額-2,000円)×10%
    控除の対象となるふるさと納税額は、総所得金額の3割が上限です。
  • 住民税からの控除(特例分)
    (ふるさと納税額-2,000円)×(100%-10%(基本分)-所得税の税率)
    この特例分の金額が住民税所得割額の2割を超える場合は、代わりに次の式によって特例分の控除額を求めます。
    住民税所得割額×20%
    こちらの式が適用される場合、全額が控除されることはなく、結果として納税者は2,000円以上の負担をする必要が生じます。

 
上記は他の控除を受けない場合の計算ですが、もし住宅ローン控除など他の所得控除などを受けている場合は、控除しきれなくなるケースも考えられるでしょう。とりわけフリーランスの方の場合、年末になるまで課税所得がわからないことも多く、予想と実際の所得金額の違いから上限額を超えてしまうことがありえます。

 返礼品ルール違反へのペナルティ

2019年6月に施行された「改正地方税法」において定められた返礼品ルールに従わなかったために、2019年6月1日から税制優遇の対象にならない自治体があります。これらの自治体は最後まで国の指導に従わなかった自治体で、今後その数が増えるとは考えにくいですが、寄附前にはどこの自治体が対象外となっているかをきちんと確認しましょう。

 

☆ヒント
お手軽でお得というイメージのふるさと納税ですが、フリーランスの方の場合、上限額の計算や控除を受ける手続きがサラリーマンのように簡易的ではありません。せっかくふるさと納税をしても控除を受けられなければ負担が増えるだけです。そのようなことを避けるためにも税理士への相談をおすすめします。

まとめ

返礼品競争への規制が法的に厳しくなっているとはいえ、返礼品がもらえる自治体もあるふるさと納税はまだまだお得な制度といえます。ただし、フリーランスの方の場合はサラリーマンとは異なる手続きが必要ですので、控除を受けるためにきちんと制度を理解しましょう。

岡田桃子
東京大学卒。
卒業後は中央官庁に勤め、退官後ベンチャー企業に転職し、経理・法務などに携わる。
経理業務で得た知見や、中央官庁時代に得た法律や制度に関するナレッジを分かりやすく解説します。
「税務/会計」カテゴリの最新記事