決算期、「期ずれ」という言葉をよく耳にしますが、期ずれが税務調査で見つかると、修正や更正などで余計な手間や費用がかかり、かなり厄介なことになってしまうことをご存知ですか?今回はこの「期ずれ」について解説していきます。
そもそも期ずれとは?
期ずれとは、売上や経費が、本来計上されるべき年度とは異なる年度で計上されている状態のことを指します。例えば、2016年度に買ったはずのパソコンの経費が2017年度に計上されている場合など、期ずれが発生している状態と言えます。
しかし、今述べたことは期ずれのごくごく表面的な内容にすぎません。期ずれを理解するにあたり、知っておかなくてはならない知識が2つあります。それは、「発生主義」と「費用収益対応の原則」です。
決算における原則-発生主義と費用収益対応の原則
発生主義とは
例えば、ある商品の取引が成立した場合について見ていきましょう。2016年12月にその商品を納品して相手に請求書を出し、2017年1月に相手から支払いを受けたとします。この場合、売上計上するのは2016年12月になります。
このように、発生主義とは、現金の収入や支出に関係なく、売上や経費が発生した時点でこれらを計上しなければならない、という考え方で、会計原則のひとつです。つまり、今回の例では、2016年12月時点で商品を納品しているので2016年12月に計上しなくてはならず、もし会計期間が1月1日から12月31日と定めている事業ならば、この場合の売上は2016年度に計上されている必要があります。
費用収益対応の原則も同様
費用収益対応の原則とは、事業の経費を計上する時期に関する概念であり、収益と費用をできる限り企業活動上の経済的因果関係と対応するように把握するべきであるといった考え方です。企業の業績を正しく把握するためには、その企業がどれだけ支出を行い、それに対してどれだけの収益を得たのかといったことをきちんと把握する必要があります。
費用収益対応の原則には、1.会計期間を媒介とする期間的対応 と2.売上と売上原価のような個別的対応 があります。
期間的対応では、一会計期間の収益と費用を、期間を通じて間接的に対応させる方法です。売上と直接対応させるのが難しい販売費及び一般管理費、広告宣伝費、水道光熱費、家賃などの費用項目が該当します。
一方で、個別的対応では、商品1個を売上げた場合、これに対応する1個分を費用計上して、損益計算をします。
例えば商品販売において、商品の仕入れ値は売上に対する原価として扱われ、これは法人税を計算する際、経費に該当します。しかし、原価が経費になるタイミングは、商品を売り上げたタイミングとなるので、売上が計上されて初めて原価も経費として計上されることになるのです。
適切な節税を行うためには、まず会計原則をきちんと把握して、その上で専門家から細かい部分のアドバイスをもらうと良いでしょう。
注意!税務調査官は期ずれを見る
なぜ税務調査官は期ずれを見るのか?それを理解するためにより詳しく考えてみます。まず、上記で紹介した発生主義と費用収益対応の原則という観点から見ると、期ずれとは、「発生主義と費用収益対応という2つの原則を破り、誤った時期に売上計上もしくは経費計上をすること」と、言い換えることができるでしょう。
なぜ税務調査で期ずれがチェックされるのか
期ずれは、税務調査で必ずチェックされる項目です。その理由は、期ずれによって調査した年度の法人税が正しく支払われない、という事態が起こるからです。法人税は売上から経費を差し引いた利益に法人税率をかけて計算するので、期ずれが起きていると当然、法人税も支払われるべき金額とは異なったものになってしまいます。こういった状況を避けるためにも、税務調査官は厳しく期ずれを調査するのです。
期ずれはあまり対策されない!?
期ずれが起こっている場合、誤って記録してしまっているか、節税や利益率を高く見せる目的で意図的にずらしているか、が考えられます。しかし、残念ながら、期ずれは税務調査でほぼ100%指摘されているというのが現状です。冒頭で述べた通り、期ずれが見つかると、修正申告や更正が必要になるため、そこで手間やコストがかかってしまいます。
期ずれ対策はきちんとできていますか?
税理士がチェックしていても、売上がないのに原価だけ経費になっているといったことが往々にして起こってしまうので注意が必要です。また、税理士は決算書や申告書を作成しますが、売上と原価を個別に対応させて一つ一つ確認するといった作業を行わない場合が多いので、税理士に記帳から丸投げする場合でも、きちんと信頼できる先生にお願いする必要があります。
また、税理士の中には期ずれをあまり問題視しない先生もいるようですます。今期の経費を来期に計上した場合、今期の利益が多くなり、その分来期の経費が多くなります。その結果、今期の法人税は本来よりも多くかかりますが、来期その分少なくて済むため、トータルで支払う法人税の合計額という側面から見ると問題ないと考えているようです。
特に期ずれに関してミスが起こりやすいのは、代金の前払いが生じた場合や事業年度をまたいだ取引が行われた場合です。売上、経費計上の原則は、前述通り商品やサービスの引き渡しがあったタイミングとなるのですが、こちらのタイミングは税法上、「出荷基準」「検収基準」「使用収益開始基準」「検針基準」の4基準のうちいずれかを適応させる必要があります。毎月継続して運用させる必要があるため、持続可能な基準を選択する必要があります。
意図的な期ずれは危険
中には、会社の利益をよく見せるためや、節税対策としてあえて期ずれを行おうと考える方もいるかもしれません。中長期的な会社の成長や信頼度といった観点から、期ずれを意図的に行うことによって短期的な効果は得られるかもしれませんが、結果的にはあまり得策ではありません。節税一つとっても、より効果の高い節税方法を紹介してくれる税理士にお願いしたほうが良いかもしれません。
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本記事で紹介した期ずれは完全に防ぐことが難しい課題ではありますが、きちんと対策をし、税務署から目をつけられないような健全な会社の基盤を作るために、経営者の方もきちんとした知識を持ち、税理士の適切な指導のもと会社を運営していく必要があります。
まとめ
期ずれは税務調査で必ずチェックされる項目であり、発覚すれば大変な苦労を強いられることになります。こういったことを防ぐためにも、きちんと期ずれを防いでくれるような、信頼に足る税理士を雇うと良いでしょう。