お店を経営したり、フリーランスで活躍するなど、個人で事業をしている場合は、黒字になると所得税を納付する必要があります。そのため、毎年1年間の売上や経費、納める税金などを計算・確定申告する必要がありますが、その基礎となるのが所得です。ここでは、「所得とは何なのか」など、所得について基礎から解説します。
確定申告で必要な所得とは
確定申告で必要な所得とは
日本では、お店を経営している人やフリーランスの人、不動産を売却した人など、1年間に収入があった個人は、原則、確定申告を行い、所得税を納付する必要があります。所得税とは、1年間の所得にかかる税金です。では、「所得」とは何でしょうか。
「所得」は、「収入-必要経費」で計算されます。「収入」とは、例えばお店でいうと商品の売上です。「必要経費」とは、お店で売る商品の購入代金や、お店の電気代や水道代など、お店を経営していくうえで必要な支出です。つまり「収入-必要経費」で計算される「所得」とは、簡単にいうと「もうけ」です。
1年間のもうけにかかる税金が所得税、1年間のもうけと納める所得税を計算するのが確定申告となります。
税金がかからない所得もある
個人が1年間に得たもうけに対して所得税がかかります。では、どんなもうけにも所得税がかかるのでしょうか。
実は、もうけの種類によって、所得税がかからないものがあります。例えば、知人に不用品を安く譲った場合でも、確定申告をして所得税を納付するとなると、手間や労力もかかりますし、そもそも、親切で不用品を譲ったのに、そこに税金をかけるというのもおかしな話です。そこで、様々な観点から、法律では所得税のかからない所得(もうけ)を定めています。所得税のかからない所得(もうけ)には主として下記があります。
- サラリーマンの通勤手当(通常、必要と認められるもの)
- サラリーマンの出張手当(通常、必要と認められるもの)
- 生活用の家具や衣服、電化製品の売却によるもうけ
- 時価30万円以下の宝石等の売却によるもうけ
- 失業保険
- 遺族年金(恩給)
- 宝くじの当選金
もちろん、所得税のかからない所得(もうけ)については、確定申告も不要です。
確定申告に関係する10の所得
所得税のかからない所得以外のもうけには、所得税がかかります。しかし、お店から出るもうけや、自宅を売却した場合のもうけなど、すべての所得(もうけ)を同じように計算し、税金をかけると不公平となる可能性があります。
そこで、収入の発生原因(お店の売上なのか自宅の売却なのかなど)に応じて所得税を課税するため、所得税法では所得を10に区分して、それぞれで所得(もうけ)の金額や税金に金額を計算するようにしています。所得は、次の10の区分に分かれています。
所得区分
所得の種類 | 内容 |
---|---|
利子所得 | 銀行など金融機関の預貯金や公社債の利子など |
配当所得 | 株式や投資信託などから得る配当など |
不動産所得 | 土地や建物などの不動産の貸付から得る所得 |
事業所得 | お店など事業を行っている場合に得る所得 |
給与所得 | サラリーマンの給料や賞与など |
退職所得 | 会社を退職した際の退職金など |
山林所得 | 山林の伐採や譲渡による所得(山林の保有期間5年超のもの) |
譲渡所得 | 不動産や株式、宝石、骨董品の売却による所得 |
一時所得 | 損害保険の満期返戻金、競馬の馬券の払戻金など一時的に得た所得 |
雑所得 | 上記に当てはまらない所得 年金や事業所得にならない原稿料など |
所得税は、各所得ごとに計算したもうけを合算し、そこに税率を乗じて計算します(総合課税)。ただし、譲渡所得の一部、退職所得、山林所得は、計算したもうけは合算せず、個別に異なる税率を乗じて所得税を計算します(分離課税)。
主な所得の所得金額の計算方法
見てきた通り、個人が1年間にもうけがあった場合は、そのもうけを10の所得区分に分けてから、所得(もうけ)の金額を計算する必要があります。ここでは、所得の中でも一般的なお店などの事業をしている人の「事業所得」と、サラリーマンの「給与所得」の所得金額の計算方法について見ていきましょう。
事業所得の計算方法
お店などの事業をしている人のことを、個人事業主といいます。具体的には、農業や漁業、建設業、製造業、卸売業や小売業、不動産業などの事業を営んでいる個人です。事業所得は、「収入-必要経費」で所得金額を求めます。これを計算式にすると次のとおりです。
収入とは、1年間の売上です、必要経費とは、売上を生み出すためにかかった費用です。例えば、小売業なら、販売商品の仕入高やお店の家賃などが、製造業なら材料の仕入れや工場の賃料などが必要経費になります。では、具体例で実際に計算してみましょう。
(例)年間の売上700万円、商品の仕入高400万円、水道代や電気代などの光熱費100万円、その他諸経費50万円の場合
この場合の事業所得は次のようになります。
収入700万円-必要経費(入高400万円+光熱費100万円+諸経費50万円)=150万円
給与所得の計算方法
給与所得の計算方法について具体例を挙げて説明する
サラリーマンは、毎月の給料から所得税などの税金を天引きされています。実はこの天引きされている所得税も、給与所得の金額を基礎としています。サラリーマンの人で、副業をしたり、医療費控除を受けたりして確定申告を行う場合は、給与所得の金額を計算する必要があります。給与所得金額の計算式は、次のとおりです。
個人事業主の場合は必要経費がありましたが、原則、サラリーマンの場合は必要経費は認められていません。これでは不公平になるため、サラリーマンの場合は、必要経費の代わりに、給与所得控除という一定金額の控除を認めています。給与所得控除は、1年間の給与・賞与の金額により、その控除額が決まっています。具体的には、1年間の給与・賞与の金額を次の表にあてはめて、控除金額を計算します。
給与所得控除額(2019年)
1年間の給与等の金額 | 給与所得控除額 | |
---|---|---|
1,800,000円以下 | 収入金額×40% 650,000円に満たない場合には650,000円 |
|
1,800,000円超 | 3,600,000円以下 | 収入金額×30%+180,000円 |
3,600,000円超 | 6,600,000円以下 | 収入金額×20%+540,000円 |
6,600,000円超 | 10,000,000円以下 | 収入金額×10%+1,200,000円 |
10,000,000円超 | 2,200,000円(上限) |
※給与所得控除額は2020年から改正になります。
では、具体例で実際に計算してみましょう。
(例)毎月の給料30万円、賞与年2回合計100万円 1年間の給与・賞与の合計460万円の場合
1年間の給与・賞与の合計は、460万円なので、360万円超660万円以下の欄に当てはまります。
給与所得控除額は、460万円×20%+540,000円=146万円です。
今回は、事業所得と給与所得の所得金額(もうけ)の計算方法を確認しましたが、このように10の所得それぞれで、所得の計算方法が異なります。そのため、自分の収入がどの所得に該当するのかを判断することが、確定申告の基礎となります。
まとめ
今回は、確定申告の基礎となる「所得」について見てきました。所得とは、簡単にいうと「もうけ」です。1年間のもうけに対して所得税がかかります。所得(もうけ)を正しく計算するためには、所得の種類が何なのかを把握し、1年間の売上や必要経費などを正しく計算しなければなりません。
ぜひ、この記事を参考に、所得とは何か、自分のもうけがどの所得に該当するのかを理解し、正しく所得の金額を計算できるようにしましょう。