風俗業で働いている人は、よく、「確定申告は不要、確定申告をしなくてもバレない」ということを耳にするかもしれません。しかし、実際にはそんなことはありません。風俗業でも確定申告は必要ですし、税務署も目を光らせています。ここでは、なぜ風俗業でも確定申告が必要なのか、確定申告しないとどうなるのかを解説します。
風俗業で働く人は確定申告が必要
確定申告とはどんなもの?
では、まず確定申告とはどのようなものかをみていきましょう。
わが国では、原則、1年間に収入がある人は、所得税を納付する必要があります。しかし、税務署では、その人が1年間にどれぐらいの収入があって、どれぐらいのもうけを出しているのかを一人ひとり把握しているわけではありません。
そこで、毎年、収入がある人が自分で1年間の収入や経費、もうけ、納める税金などを計算して、税務署に報告することになっています。この税務署への報告を「確定申告」といいます。
風俗業で働く人は個人事業主が多い
1年間に収入があり、もうけを出している人は確定申告しないといけませんが、実は、確定申告が不要な人もいます。その代表として挙げられるのが、サラリーマンです。サラリーマンは、会社が毎月の給料から税金を天引きし、天引きした税金を従業員に代わって国に納めています。すでに税金を納付しているので、確定申告は不要です。「サラリーマン」は、会社やお店と雇用関係にある人、つまり従業員を指しています。
では、風俗業で働いている人はどうでしょうか。風俗業で働いている人で、お店と雇用契約をしている従業員(サラリーマン)というケースは少ないです。多くの場合、雇用契約ではなく、お店と「業務委託契約」をしています。
業務委託契約とは、従業員でない個人がお店から仕事を請け負っている契約を指します。つまり、あくまで、フリーで働いているということです。このようにフリーで仕事をしている人のことを「個人事業主」といいます。個人事業主は、従業員(サラリーマン)と違い、確定申告をする必要があります。
確定申告では何をするの?
業務委託契約で、風俗業で働いている人は確定申告をし、所得税を納める必要があります。所得税は、1年間の収入から必要経費を差し引いた所得(もうけ)に対してかかります。所得は下記の式で表すことができます。
1年間の収入についてはお店から受け取った収入の合計金額になるため、計算しやすいでしょう。問題は、必要経費です。必要経費とは、収入を得るために必要な支出のことです。風俗業で働く人の必要経費には、次のようなものがあります。
- 下着、ドレス、洋服、衣装、アクセサリー代、美容グッズ、化粧品代
- クリーニング代
- 携帯電話代
※上記3つは、あくまで仕事で使う分に限る - 職場までの交通費、タクシー代
- エステ、ネイルサロンなど美容院代
- 名刺代
- 接待食事代
- その他、仕事で必要な経費(雑貨やプレゼント代など)
ただし、必要経費にするためには、レシートや領収書を保存しておく必要があります。
確定申告では、収入や必要経費、納める税金の金額などを記載した、確定申告書などの申告書類を作成し、翌年2月16日~3月15日までに税務署に提出・納付する必要があります。
風俗業で申告漏れが発覚すると重いペナルティがかかる
風俗業で働いている人は、毎年、確定申告をし、所得税を納める必要があります。では、確定申告をしていないとどうなるのでしょうか。
風俗業にかかわらず、税務署は、収入やもうけがあるのに確定申告をしていない人がいないかどうかの調査をしています。この調査で、確定申告をしていないことが分かることを「申告漏れ」といいます。では、風俗業における申告漏れについて、どのようなケースがあるのかみていきましょう。
風俗業は申告漏れが多い業種
国税庁では、毎年、申告漏れが多く、しかも漏れていた所得(もうけ)が多い業種を公表しています。国税庁公表の「事業所得を有する個人の1件当たりの申告漏れ所得が高額な業種」によると、平成29年度の1件当たりの申告漏れ所得が高額な業種1位がキャバクラ、2位が風俗業でした。過去5年を見ても、風俗業は2013年が1位、2014年と2015年が2位、2016年が1位と、毎年上位にきています。
これは、あくまで申告漏れが発覚した件数の順位です。ということは、これらは毎年、風俗業では確定申告していない人が見つかっているという事実をさしています。当然これからも、税務署は風俗業の申告漏れに目を光らせていくでしょう。
申告漏れが発覚した場合のペナルティ
では、申告漏れが発覚した場合はどうなるのでしょうか。その場合はペナルティが課されます。申告漏れが発覚した場合のペナルティには、次のようなものがあります。
①延滞税
延滞税は、納付期限までに納付しなかった場合に課される税金です。あくまで、期限までに納付しなかった場合に課される税金なので、申告を期限までにしていたとしても、納付が遅れれば、延滞税は課されます。税率は最大14.6%(2か月以内は7.3%)です。
ただし、毎年財務大臣が告示する特例基準割合により計算した税率と、14.6%(2か月以内は7.3%)のどちらか低い税率を用いて延滞税を計算するため、税率が14.6%になることは、ほとんどありません。
②無申告加算税
無申告加算税は、申告期限までに申告しなかった場合に課される罰金です。税務署から指摘を受けて期限後、申告した場合には次の税率になります。納める所得税が50万円までの部分は15%、50万円を超える部分は20%の無申告加算税が課されます。
③重加算税
重加算税は悪質な隠ぺい、または仮装があったと認められたときに課される罰金です。
申告していた場合は35%、無申告の場合は40%ものペナルティが課されます。
無申告の場合に課されるペナルティは罰金だけではありません。最悪の場合は、刑事罰を受ける可能性もあります。無申告であったことが分かり、しかもそれが故意に税金の納付を逃れようとする場合では、5年以下の懲役もしくは500万円以下の罰金、またはこれらの両方が課されることになります。
風俗業で確定申告する場合は、税理士に依頼しよう
風俗業で確定申告する場合に税理士に依頼した方が良い理由
申告漏れがあったら、本来払わなくてもよかった罰金を支払ったり、最悪、刑事罰を受けたりする可能性もあります。そうならないためにも、確定申告は必ずしなければなりません。できれば、確定申告は税理士に依頼した方が良いでしょう。
確定申告時期になると、仕事が忙しくて確定申告まで手がまわらない、経費になる基準が自分では判断が困難、税金の計算が難しいなどさまざまな理由で、結局は確定申告をしないということが、往々にしてあります。
税理士に確定申告を依頼すれば、期日までに、正しい計算をした確定申告書を作成できるので、申告漏れになることはありません。税理士費用はかかりますが、申告漏れのペナルティのことを考えると、税理士に依頼した方が、メリットが大きいでしょう。
近くに税理士が見つからない場合は、税理士紹介サービスを利用する
風俗業は、事業形態が特殊な部分があります。そのため、近くに確定申告をみてくれる税理士がいないということも多くあります。また、いきなり税理士事務所を訪問するのは、ハードルが高いと感じる人も少なくないでしょう。そんな場合は、税理士紹介サービスを利用するという手もあります。税理士紹介サービスなら、専門知識のある税理士をすぐに見つけられます。また、多くの場合、インターネットを通して税理士を探すので、時間や手間もそれほどかからず簡単です。
ぜひ一度、税理士紹介サービスを利用してみましょう。
まとめ
風俗業で働いている人で、お店と雇用契約がない場合は、確定申告が必要です。風俗業は申告漏れが多い業種として、税務署も目を光らせているので、確定申告しなくてもバレないということはありません。それどころか、申告漏れが発覚すると、大きなペナルティが課されます。税理士紹介サービスなどを利用し、税理士を見つけ、正しく確定申告を行うことを心がけましょう。