経営者の中には、会計や数字の話になった途端に逃げ腰になってしまう人も少なくはないでしょう。
ビジネスで成功する人は自分なりの会計思考があり、会計の勘所を持ち合わせています。成功を掴むためにも、決算書から経営状況を把握できる必要があります。
今回は、決算書が読める、読めないでは、どのような経営上の違いがあるのかを見ていきます。
決算書が読める・読めないのではどう違う?
「決算書、読めますか?」と言われてドキッとした経営者の人もおそらくいらっしゃるのではないでしょうか。「自分の商売と会計は関係ない」「会計は税理士さんに任せているから、決算書を読める必要はない」などと思っている人は要注意です。
決算書が読めないと陥る落とし穴とは?
ある報告書によると、日本の8割以上の経営者の人が決算書を読むことができないという統計データが発表されています。
決算書は会社の成績表のようなもので、会社の健康状態を示す指標でもあり、改善するべきポイントなどを示してくれる大事な判断資料となります。
逆に言えば、決算書が読めないということは、地図を持たないで航海をしているようなもので、思わぬ落とし穴に陥りかねません。
使い込み、横領に気が付かない
経理などの社員や顧問税理士が試算表や決算書を作っている場合、経営者がこれらを読めないと社員の不正(使い込みや横領)に気がつくことができません。逆に言えば、「なぜか貸付金勘定がどんどん大きくなっている」など、試算表や決算書を見て、おかしな動きを見つけることができれば、社内の不正を発見しやすくなり、気がついたら手遅れになっていた、という事態を防ぐことができます。
また、経営者が試算表や決算書が読めない、会計のことがよくわからないとなると、経理社員などから足元を見られてしまう可能性があります。経営者がしっかり決算書に目を通しているというだけで、社員はうかつに不正を働けないという牽制になるのです。
経営状況が悪化したときの対策が練られない
決算書は会社の成績表であるということは先に示した通りですが、経営が悪化したときは、「どのような対策を練れば良いのか」を把握する必要があります。しかし、決算書が読めないと、何が原因で経営が悪化しているのかをしっかり把握することができません。
赤字が出ているにもかかわらず、経営を圧迫している原因追求ができなければそのまま会社が潰れてしまうのは想像できると思います。
決算書が読めるメリット
決算書が読めるようになると、経営方針を見直すきっかけになります。例えば、「売上高と売上原価の比率が毎年変動しているのはなぜだろう」とか、「A店とB店では同じ商品を扱っているのに、営業利益率がこれほど違うのはなぜだろう」など、疑問点や気付きが色々出てくると思います。
このような素朴な発見について、経理担当や税理士に納得するまで質問してみると、課題が浮き彫りになり、さらにはその課題に対する打ち手も見えてきます。
決算書にはどんな種類があるの?
会社の会計では、すべての取引が複式簿記というルールによって記録され、1年間で締め切って2つの決算書が作成されます。これが「貸借対照表(BS = Balance Sheet)」と「損益計算書(PL = Profit and Loss Statement)」です。
この2つの決算書以外に期末日までの1年間のお金の流れに注目し、営業活動、投資活動、財務活動の3つの動きを示したものをキャッシュフロー決算書(CF=Cash Flow Statement)といいます。
これらの3つの詳しい決算書の読み方については、「会社の成績表、決算書の読み方解説【BS編】」、「会社の成績表、決算書の読み方解説【PL編】」、「会社の成績表、決算書の読み方解説【CF編】」を参考にしてみてください。
決算書を経営に活かす方法
自分の会社の経営はこのままで大丈夫なのだろうか、どこに弱点があって、どのような手を打てば良いのだろうか……このような悩みは経営者にとって重要な問題です。こうした悩みを解消するためにも、会社の状態をしっかり把握する必要があります。
多くの場合は経営分析指標が使われることが多いのですが、実際にはそれだけでは判断することは難しいと考えたほうが良いでしょう。会社の健康状態を知るためには色々な切り口から分析をする必要があります。
詳しい会社の健康状態を把握するための手法は、「会社の健康診断!経営者が知らないといけない決算書チェック方法5選」で紹介しているので、こちらを参照してください。
税理士は経営状況を相談できるパートナー
決算書や経営分析指標から得た情報や疑問、課題などが分かったら、今後の経営方針を立てていく上でも、税理士と相談してみると良いでしょう。節税ポイント、経費削減や経営改善に必要なアドバイスをしてくれる税理士は、心強いパートナーとなってくれるでしょう。
本項では、当社の紹介により、税理士が会社やお店のパートナーとして支えとなった事例を紹介します。
事例1
Aさんはある居酒屋に20年間勤務した後、とうとう夢の独立、自分の店を構える決心をしました。これまで独立に向けてお金を貯めていたので自己資金も用意でき、制度融資や政策金融公庫などを利用してまとまった資金を借り入れることができました。
その後、店舗を用意し、内装も整えて開業の準備が整いましたが、会計・経理に関しては素人だったので、どのように経理を行えばいいのか全く分からず、経理を税理士に丸投げしてもいいのか、自分で行うべきなのかも含めて悩んでいました。
そのような悩みを持ったAさんに、
・経理は丸投げ
・3ヶ月に1度の訪問
・月2.5万、決算料15万
という条件でB先生という税理士を紹介しました。B先生は飲食業界に詳しく、融資などのノウハウを持った先生でしたので、開業時の経理のフォローアップを行いつつ、今後の店舗展開に向けた広い視野でアドバイスを行うことができました。
経理をB先生に任せて、Aさんは昼間もランチタイムを営業するなどお店の仕事に集中することができ、またB先生は融資にも詳しかったので、店舗展開などの話もスムーズに進み、翌年には2号店のオープンが決定しました。
2号店を経営していくと、1号店より2号店の方が売上高は低いものの、営業利益率は高いことが、決算書から読み取ることができました。そのような「課題を抽出できるようになり、自分で解決法などを考えることができるようになった」、「決算書を読んで、経営方針を練るのが楽しくなってきた」とAさんは言っています。
事例2
Cさんは2年前にダイニングバーを創業し、そのお店の経営を行っていました。税理士は設立当初に紹介してもらった先生で、経理は丸投げ、記帳込で決算が中心の付き合いをしていました。
しかし、その税理士は高圧的な態度があり、試算表や決算書の読み方を教えてくれないなど、コミュニケーションが取りづらいという悩みがあったため、税理士を変更したいと思っていました。
そのような悩みを持ったCさんに、当社からD先生という税理士を紹介しました。CさんはD先生に会計のいろはを教えてもらったおかげで決算書が読めるようになり、決算書から粗利率の高いメニューがあまり注文されていないという課題を見つけることができました。そのため、粗利率の高いフードメニューを考案したり、メニューの写真を工夫してお客さんになるべく粗利率の高いフードを選んでもらいやすくしたりといったことで、店の利益率を向上させました。
まとめ
決算書が読めるようになると、自分の会社や店の課題を抽出できるようになり、経営方針を立てていく上でも大事な指標となります。
詳しい決算書の読み方や分析の仕方は「会社の成績表、決算書の読み方解説【BS編】」、「会社の成績表、決算書の読み方解説【PL編】」、「会社の成績表、決算書の読み方解説【CF編】」で紹介していますので、チェックしてみてください。