今年もドリームジャンボ宝くじの抽選が、6月11日に行われます。高額当選を夢見て、今からワクワクドキドキの人も多いことでしょう。ところで、過去に何千円かの宝くじが当たって、税金を支払った経験を持つ人は、いないはず。あれは、金額が低いから「免除」されたの? 何億円も当たったら、税務署から「納税のお達し」が届いたりするのでしょうか? 加えて、「共同購入」の“怖い税金”とは? 今回は、そんな「宝くじと税金」について解説します。
もしも所得税がかかったら
今回のドリームジャンボの1等は3億円。前後賞を含めると5億円です。仮にこの金額に所得税がかかったら、どうなるでしょうか?
所得税は「累進課税」と言って、所得が多いほど税率も高くなります。4000万円を超えると、税率はMAXの45%! 税額から差し引かれる「控除額」は479万6000円です。すなわち、「300,000,000円×45%-4,796,000円=130,204,000円」。なんと1億円を超える税金が課せられることになります。喜びも束の間、という事態。
でも、ご安心を。宝くじの当選金は、法律で「非課税」と定められていて、一切税金がかかりません。所得税がかからないので、住民税もゼロ。高額当選しても、税金のことは気にせず、全額を自分のために使うことができるのです。
しかし、宝くじは「無税」ではありません。今「非課税だ」と言ったではないか、と思われるかもしれませんが、実は当選する・しないに関わらず、サラリーマンの源泉徴収と同じように、購入時に一律で税を徴収されているのです。この上当選金からも税を取れば、「二重課税」になってしまうわけです。
この源泉徴収の「税率」がかなり高めに設定されていることも、あまり認識されていません。そもそも、宝くじは、誰が何の目的で販売しているのでしょうか? 「サマージャンボ」や「年末ジャンボ」「レインボーくじ」「ロト7」といった宝くじを発売しているのは、都道府県や政令指定都市などの自治体です。彼らが銀行に販売を委託し、その委託手数料などを差し引いた分から収益(税収)を得るとともに、購入者への当選金の支払いを行っているのです。ちなみに、自治体に配分される収益金は、少子高齢化対策、防災対策などの公共事業の原資に充てられます。
宝くじ公式サイトによると、2019年度の販売実績7,931億円の使途は、収益金38.5%、社会貢献広報費1.3%、印刷経費、売りさばき手数料など13.7%、当選金の支払いは46.5%でした。ドリームジャンボ宝くじを1枚買ったら、購入金額300円のうち、実に53.5%=160円は、「税その他」。当選を期待して「投資」するぶんは、140円に過ぎない計算になります。
あえて付け加えれば、競馬、競輪などの公営ギャンブルの払戻金は、非課税ではありません。「馬券」や「舟券」には、課税がされておらず、これらギャンブルによる年間の「儲け」が一定額を超える場合には、「一時所得」として確定申告が必要になるのです。お間違えなく。
ただし、贈与税、相続税はかかってくる
さて、非課税の宝くじですが、税金面で注意すべきことがあります。非課税なのは、あくまでも当選金の受け取りに関して。自分で持っているぶんには、税金はかからないのですが、他人への「資金移動」があった場合には、課税される可能性が高くなるのです。最も気をつけるべきなのは、「5億円当たったから、1億円を親や兄弟にプレゼントしよう」という行為。それをやると、しっかり贈与税がかかってきます。
仮に一般贈与(※)で親族に1億円を渡したとすると、税率はやはりMAXの55%!! これも控除を加味して計算すると、「(100,000,000円-基礎控除額1,100,000円)×55%-控除額4,000,000円=50,395,000円」となり、せっかくプレゼントした1億円の半分強を「持っていかれる」ことになります。「どうせ“天から降ってきた”お金だから」と割り切るのかどうかは、本人次第ということになると思いますが。
贈与税に関しては、もう1点、気をつけるべきシチュエーションがあります。それは、会社の仲間同士などで共同購入した宝くじが、高額当選した場合。このケースでも、代表者による当選金の受け取りは非課税です。問題はその先で、いったん代表者が全額を受け取って共同購入者に分配すると、税務署から「それは同僚への贈与ですね」と指摘される危険性があるのです。
そんな事態を生まないために、当選金の受け取りの際には、購入者全員で銀行に行くのがベスト。銀行では、「宝くじ当せん証明書」を発行してくれますから、1人ひとりが自分の当選額を記載したものを受け取りましょう。当選金も、それぞれの口座に入金してもらいます。こうしておけば、もし税務署に目をつけられても、問題なし。共同購入自体は違法でもなんでもありませんから、やはり税金の心配をすることなく、全額を自分のために使うことができます。
この贈与税以外で当選金に課税される可能性があるのは、相続税です。当選金を使い切らずに亡くなった場合、当然、それも被相続人の財産とみなされ、課税対象になるのです。
贈与税の高い税率について説明しましたが、それは「大金を一気に贈与する」場合。贈与税には、「1年間に110万円までは無税」という基礎控除額が設定されています。当選金を親族に渡したいと思ったら、この枠を上手に使って少しずつ移していくことを考えてはいかがでしょう。
2020/7/9追記
当選金を日常生活に必要な生活費、学費などとして渡すものは贈与の対象にはなりません。ただし、その渡したお金を預金したり、不動産購入の資金に充てた場合などは贈与税がかかってきますので注意しましょう。
高額当選者は、今後のお金の流れをチェックされ続けてしまう可能性があることを念頭に置いておいたほうがいいようです。
贈与財産には、兄弟間、夫婦間、親から未成年の子への贈与に適用される「一般贈与財産」と、直系尊属(祖父母や父母など)から、その年の1月1日において20歳以上の子や孫への贈与に適用される「特例贈与財産」があり、税率や控除額に違いがある。
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まとめ
どんなに高額でも、宝くじの当選金には税金がかかりません。ただし、それを贈与したり、貯金したまま亡くなって相続が発生したりすれば、課税対象になります。誤解していて、みすみす高額の税を課税されることのないよう、注意しましょう。