個人事業主が確定申告で必要な 所得や税金の計算方法を徹底解説 | MONEYIZM
 

個人事業主が確定申告で必要な
所得や税金の計算方法を徹底解説

個人事業主は毎年、国に確定申告と納税をする必要があります。確定申告や納税をするためには1年間の売上や経費、所得や税金を計算しなければいけません。これらを正しく計算するためには、正しいルールや計算方法をしっかりと理解しておく必要があります。ここでは、所得や税金の計算方法を徹底解説します。

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個人事業主に必要な所得金額の計算とは

まず、確定申告に必要な所得金額の計算方法について見ていきましょう。簡単にいうと、所得金額は、1年間の収入の合計金額から1年間の必要経費の合計金額を差し引いたものです(青色申告の場合は、青色申告特別控除も差し引く)。そこで、所得金額を求めるためには、収入と必要経費の計算から始める必要があります。

まずは、総収入金額の計算をしよう

では、収入から見ていきましょう。以下は1年間の総収入金額に含まれる主なものです。

売上

卸売業や小売業などの「商品売上」、サービス業などの「サービス売上」、建設業などの「工事売上」など、業種によって様々な売上がありますが、もちろん売上は、1年間の総収入金額に含まれます。

 

ここでいう売上とは、現金売上だけではありません。掛売上のように、販売代金をまだ受け取っていなくても、収入すべき権利が確定していれば、総収入金額に含む必要があります。

自家消費した商品

販売用に仕入れた商品を本人やその家族のために使うことを「自家消費」といいます。実は、この自家消費も総収入金額に含まれます(一般的には売上高に含める)。では、どのように自家消費を算出し、収入として計上するのでしょうか。これは次の2つを比べ多い方になります。

 

    • 販売価格×70%
    • 仕入価額

 

例えば、販売価格10万円、仕入価額6万円のものを自家消費した場合は、販売価格10万円×70%=7万円の方が仕入価額6万円よりも多いので、自家消費は7万円として計上します。

低額譲渡

商品を定価よりも値引きして販売することは普通にあります。この場合、その値引後の販売金額が売上になりますが、無制限に値引き後の金額を売上として認めてしまうと不都合が生じます。そこで、所得税では最低、販売価格×70%までの金額を売上に計上する必要があります。つまり、30%を超える値引きをしても、確定申告での売上は販売価格×70%になります。

 

例えば、販売価格10万円のものを友人に5万円で売却した場合は、販売価格10万円×70%=7万円-実際の売却額5万円=2万円を追加で売上に計上します。

その他

その他、仕入れ先から支払いを受けたリベート収入や事業上の債務の免除を受けた債務免除益など、事業に関係のある収入は、総収入金額に含まれます。

次に、必要経費の計算をしよう

では、必要経費についても見ていきましょう。必要経費になるものは、大きく分けて次の2つです。

①総収入金額にかかる売上原価(総収入金額を得るため直接に要した費用)

商品販売にかかる「売上原価」や工事にかかる「工事原価」など、売上に対する原価は必要経費になります。ただし、原価とその年に仕入れた商品はイコールではありません。売上(工事)原価とは、実際に売り上げた商品に対するものです。つまり、売れ残り商品がある場合は、調整する必要があります。売上原価は、次の計算式で求めます。

 

売上原価=年初たな卸高+本年仕入高-年末たな卸高
その年における販売費、一般管理費(業務について生じた費用)

事業(業務)を行う上で必要な経費は、必要経費になります。例えば、交通費や水道光熱費、消耗品費などです。ただし、所得税や住民税、罰金、生計を一にする配偶者、親族に対する支払い(青色事業専従者給与は除く)などは必要経費にならないので、注意が必要です。

税金の計算に必要な所得控除とは

総収入金額と必要経費を計算し、所得金額を求めれば、税金の計算ができるというわけではありません。税金の計算をするためには、次に所得控除金額を計算する必要があります。ここでは、所得控除について見ていきます。

所得控除の種類と趣旨

人にはそれぞれ家族がいたり、多くの医療費の支払いがあったりと個別の事情があります。その個別の事情を全く無視して、一律に税金を課すのはいけないとの考え方から、個別の事情を考慮するために、所得控除が設けられています。所得控除は、主に次の14の種類があります。

 

控除名 控除できる事由(概要)
雑損控除 災害・盗難などにより生活に必要な資産等に損失を受けた場合
医療費控除 多額な医療費の支出があった場合
セルフメディケーション税制(医療費控除の特例)と選択適用
社会保険料控除 国民年金・健康保険料などを支払った場合
小規模企業共済等掛金控除 小規模企業共済の掛金を支払った場合
生命保険料控除 一定の生命保険料を支払った場合
地震保険料控除 一定の地震保険料を支払った場合
寄附金控除 特定の寄付をした場合
寡婦(寡夫)控除 配偶者と死別や離婚等をし、一定の要件を満たす場合
勤労学生控除 本人が一定の学校等に通う学生である場合
障害者控除 本人または扶養家族が障害者である場合
配偶者控除 一定の要件を満たす配偶者がいる場合
配偶者特別控除 一定の要件を満たす配偶者がいる場合
扶養控除 一定の要件を満たす扶養親族がいる場合
基礎控除 本人の控除 38万円(令和2年分以降は、納税者本人の合計所得金額に応じて金額が異なる)

主な所得控除の計算方法

所得控除は、控除ごとに控除金額が決まっています。中には、控除金額を自分で計算しなければならないものもあります。ここでは、自分で計算が必要な所得控除の例として、地震保険控除について見ていきましょう。地震保険料控除の控除額は、次の計算式にあてはめて計算します。

 

区分 年間の支払保険料の合計 控除額
地震保険料 50,000円以下 支払金額の全額
50,000円超 一律50,000円
旧長期損害保険料 10,000円以下 支払金額の全額
10,000円超
20,000円以下
支払金額×1/2+5,000円
20,000円超 15,000円
両方がある場合 それぞれの方法で計算した金額の合計額(最高50,000円)
※旧長期損害保険料とは、平成18年12月31日までに締結した損害保険で一定のものをいいます。

 

他の所得控除の計算方法については、国税庁の次のページをご参照ください。

https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/shoto320.htm

実際に税金の計算をしてみよう

所得金額と所得控除額を求めたあとは、税金を計算します。

所得税の計算手順とは

ここで、これまでのことを踏まえて、所得税の計算手順について見ていきましょう。所得税の大まかな計算手順は、次のようになります。

 

        • ①1年間の売上金額、必要経費金額を集計・計算し、差引所得金額を求める
        • ②それぞれの事情に応じた所得控除の合計金額を求める
        • ③所得金額から所得控除額の合計金額を差し引き、課税される所得金額を求める
        • ④課税される所得金額に応じた税率を求める
        • ⑤課税される所得金額に税額を乗じて、納める税金の金額を求める

所得税の税率と税額の計算

所得金額から所得控除額の合計金額を差し引き、課税される所得金額を求めたら、所得税率を乗じて、所得税の金額を求めます。ただし、所得税は所得金額によって、税率が異なります。所得税率は次のとおりです。

 

課税される所得金額 税率 控除額
195万円以下 5% 0円
195万円を超え330万円以下 10% 97,500円
330万円を超え695万円以下 20% 427,500円
695万円を超え900万円以下 23% 636,000円
900万円を超え1,800万円以下 33% 1,536,000円
1,800万円を超え4,000万円以下 40% 2,796,000円
4,000万円超 45% 4,796,000円

 

次の場合で所得税の金額を計算してみましょう。

 

例)1年間の売上1,000万円、必要経費600万円 青色申告特別控除65万円、所得控除の合計金額75万円の場合
  • ①1年間の売上金額、必要経費金額を集計・計算し、差引所得金額を求める
    差引所得金額=
    売上1,000万円-必要経費600万円-青色申告特別控除65万円=335万円
  • ②それぞれの事情に応じた所得控除の合計金額を求める
    所得控除の合計金額75万円
  • ③所得金額から所得控除額の合計金額を差し引き、課税される所得金額を求める
    課税される所得金額=
    差引所得金額335万円-所得控除の合計金額75万円=260万円
  • ④課税される所得金額に応じた税率を求める
    課税される所得金額260万円を上の表にあてはめると、「税率10%-控除額97,500円」です。
  • ⑤課税される所得金額に税額を乗じて、納める税金の金額を求める
    所得税額=課税される所得金額260万円×税率10%-控除額97,500円=162,500円

まとめ

個人事業主が確定申告をするためには、所得金額と税金を正しく計算する必要があります。その前提として、売上や必要経費に含まれるものは何かを理解し、正しい集計が必要です。また、所得控除についても、自分はどの控除を使うことができるのかを判断し、控除額を計算する必要があります。今回は、所得税の計算までの大まかな流れを記載しました。ぜひ、この記事を参考に、所得税計算の大まかな流れを理解してください。

長谷川よう
会計事務所に約14年、会計ソフトメーカーに約4年勤務。個人事業主から法人まで多くのお客さまに接することで得た知見をもとに、記事を読んでくださる方が抱えておられるお困りごとや知っておくべき知識について、なるべく平易な表現でお伝えします。
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