フリーランスのSE(システムエンジニア)に必須な 個人事業主の税金 | MONEYIZM
 

フリーランスのSE(システムエンジニア)に必須な
個人事業主の税金

フリーランスSEは会社勤務のSEと税金の計算方法が異なります。しかも、クライアント企業の契約内容によっても、たとえ同額の所得金額でも納税額に差が出ます。それがSEの税金の独特な部分なので、独立するなら知っておく必要があります。そこで、フリーランスSEの税金について詳しく解説します。

業態ごとのSEの税金とは

SEにはさまざまな業態があり、課税される税金が異なります。そこで、業態ごとの税金を詳しく見ていきましょう。

SEの業態とは

SEの業態は「雇用契約のSE」と「フリーランスSE」に大別できます。さらにフリーランスは「企業常駐型フリーランスSE」と「在宅型フリーランスSE」に枝分かれします。そこで、それぞれのフリーランスの業態の特徴について説明します。

 

  • (1)企業常駐型フリーランスSE
    企業常駐型フリーランスSEはクライアント企業に出向するSEのことを指します。システム開発などの秘密保持をしたい企業側(おもに大企業)の思惑がこの業態の背景に挙げられます。一定期間契約を結ぶ「準委任契約」であり、クライアント企業の就業時間に合わせ常駐作業します。SEへの報酬は労働の対価(業務遂行)に対するものであり、在宅型フリーランスSEよりも安定収入が得やすい傾向なのが特徴です。
  • (2)在宅型フリーランスSE
    在宅型フリーランスSEの業態は「準委任契約」と「請負契約」に区分されます。準委任契約の場合、クライアント企業に出向しない点を除き、企業常駐型フリーランスSEと同じ位置付けになります。一方、請負契約の場合、SEの報酬はアプリケーション開発などの委託に対し、納品した成果物に応じて支払われます。

SEに課税される税金

業態別、SEに課税される税金について説明します。

  • (1)雇用契約のSE
    給与所得であるため、所得税(復興特別所得税を含む 以下同じ)と住民税が課税されます。
  • (2)フリーランスSE
    フリーランスSEはクライアント企業と結ぶ契約が「準委任契約」と「請負契約」によって課税される税金が違ってきます。
     

    • 準委任契約
      雇用契約のSEと同じ税目である所得税、住民税に加えて、個人事業主と同じように前々年の年収(課税売上高)が1,000万円を超える場合は消費税も課税されます。一方、事業税は原則、課税されません。
    • 請負契約
      請負契約の個人事業主と同じく、所得税、住民税、事業税、消費税が課税されます。

SEが手取り金額を増やす方法

SEが収入から経費と税金を差し引いた残額である手取り金額を増やすポイントは次の通りです。

 

  • (1)雇用契約のSE
    基本的に給与所得の経費と税金は年収に応じて自動的に計算されるため、収入アップが手取り金額を増やす唯一のポイントになります。
  • (2)フリーランスSE
    企業常駐型フリーランスSEと在宅型フリーランスSEともに、収入アップ以外にも、負担した費用のうち税法上の必要経費を多く計上し、節税をすることでも手取り金額を増やすことができます。そのため、フリーランスSEは節税対策に対する知識が求められます。

フリーランスSEの節税対策

フリーランスSEが手取り金額を増やすための節税対策について説明します。

経費に計上できる項目

そもそも経費に計上するとは、交通費などのSEの活動に必要な支出項目について、できるだけ経費処理することを意味します。そのためには、いかに経費に計上できる項目の洗い出しをするかがポイントになります。フリーランスSEの場合、おもな経費の項目は次の通りです。

 

  • (1)租税公課:事業税、消費税など
  • (2)荷造運賃:クライアント企業への宅急便代、税務署への郵便代など
  • (3)水道光熱費・地代家賃:自宅兼オフィスに限り、事業按分をした金額(全体面積のうちオフィス分の面積分にかかる費用)
  • (4)旅費交通費:仕事先などSEの活動にかかった電車代やバス代などの交通費
  • (5)通信費:プロバイダとの契約料、クラウドサーバーの利用料、携帯電話代のうち事業按分をした金額など
  • (6)広告宣伝費:名刺代など
  • (7)接待交際費:クライアント企業の関係者や同業者との飲食代、取引先に対する贈答費用など
  • (8)消耗品費:仕事用のプリンタのインク代やコピー用紙代、技術書、一括で経費処理できる備品代など
  • (9)減価償却費:プライベート兼仕事用の自家用車購入費用のうち、事業按分をした金額

青色申告の特典を利用する

青色申告の特典はたとえ同額の支出でも、白色申告よりも経費処理のできる範囲が広いなどの節税対策をしやすくなるメリットが得られます。おもな青色申告の特典は次の通りです。

  • (1)青色申告特別控除65万円が利用できる
    青色申告特別控除は支出の伴わない所得控除であり、節税額だけ現金預金が増額します。
  • (2)備品代の一括経費処理の可能な範囲が「10万円未満」→「30万円未満」に拡大される
    白色申告の場合、パソコン代などの購入費用が15万円なら10万円以上になるため一括で経費処理できません。しかし、青色申告なら30万円未満までに拡大されるため、購入費用15万円なら一括で経費処理をすることができます。

小規模企業共済に加入する

小規模企業共済とは事業主の退職金制度であり、フリーランスSEも加入することができます。税制上のメリットは掛金を積み立てながら所得控除ができる点です。言い換えれば、貯金しながら所得金額を減らせることを意味します。たとえば、年間84万円の掛金を支払えば、同額(84万円)の所得控除が受けられます。しかも、20年未満で任意解約をした場合を除き、同額(84万円)以上の受け取ることが可能であり、退職所得控除などの優遇税制の対象にもなります。

事業税の事業主控除を利用する

事業主控除とは、個人事業主の事業税を計算する場合、年290万円の所得控除が受けられる制度です。そのため、フリーランスSEとして年間の活動で獲得した所得が290万円以下なら事業税は非課税になります。なお、フリーランスSEとしての活動期間が1年未満の場合、事業主控除は次の通りです。

事業を行った月数 事業主控除額
1ヶ月 242,000円
2ヶ月 484,000円
3ヶ月 725,000円
4ヶ月 967,000円
5ヶ月 1,209,000円
6ヶ月 1,450,000円
7ヶ月 1,692,000円
8ヶ月 1,934,000円
9ヶ月 2,175,000円
10ヶ月 2,417,000円
11ヶ月 2,659,000円
12ヶ月 2,900,000円

(出典:東京都

SEが新たにフリーランスになる場合のポイント

勤務先を退社し、雇用契約のSEから新たにフリーランスSEになる場合のポイントについて説明します。

できるだけ開業費を計上する

税法上、経費に計上できる範囲はフリーランスSEとしての活動にかかる費用だけではなく、フリーランスになる前の開業準備費用も含まれます。この開業準備費用のことを「開業費」といいます。開業費の特徴は経費処理するタイミングが自由に選択できる点です。たとえば、フリーランスSEの1年目は所得金額が少ないため経費処理せず、もうかった年に必要経費に計上することができます。開業費に計上できるおもな項目は次の通りです。
 

  • 開業準備のための打合せにかかる飲食代、接待、交通費
  • セミナー代、書籍代
  • 事務所を借りる場合の不動産会社に支払う仲介手数料など
  • 印鑑やペンなどの消耗品 など

確定申告書に仕事内容を詳しく記載する

フリーランスSEの場合、都道府県が確定申告書に記載した仕事内容から本当に事業税の法定業種(課税対象)に該当するかどうか、課税対象になるかどうかを確認します。そのため、仕事内容を詳しく記載することが大切になってきます。

 

事業税の法定業種を判定する順番は次の通りです。

  • 独立した事業かどうか
  • 70種類の法定業種に該当するかどうか

 

企業常駐型フリーランスSEに事業税が課税されない理由は、独立した事業でなく、会社勤務に近い準委任契約のためです。ただ、事務所など事業用の拠点を構えていたり、業務の一部を外注していたりする場合、独立した事業と判断され、「製造業」として70種類の法定業種に該当する可能性があります。

 

一方、請負契約の在宅型フリーランスSEは法定業種の「請負業」に該当するため、事業税が課税されます。

まとめ

フリーランスSEの税金はクライアント企業との契約内容が「準委任契約」または「請負契約」を把握することがポイントになります。特に準委任契約である企業常駐型フリーランスSEの場合、確定申告書に独立した事業でなく、会社勤務に近いことを詳しく記載し、事業税の課税対象にならないことをきちんと説明できるようにしましょう。

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