10月1日に、およそ5年ぶりに消費税の税率が引き上げられました。税率アップの前から注目されたのが、食料品などに初めて適用される「軽減税率」でした。すべての飲食料品が一律に税率据え置き、とはいかないために、施行後も適用されるか否かをめぐって、誤解や戸惑いが一掃されたとは言えないようです。今回は、国税庁の見解を基に、あらためて「そもそも、どんな飲食料品が軽減税率の対象になるのか」を具体的に解説します。
お酒や医薬品は対象外
軽減税率の対象になる飲食料品について、国税庁は、次のように定義しています。
人の飲用又は食用に供される
- ①米穀や野菜、果実などの農産物、食肉や生乳、食用鳥卵などの畜産物、魚類や貝類、海藻類などの水産物
- ②めん類・パン類、菓子類、調味料、飲料等、その他製造又は加工された食品
- ③添加物(食品衛生法に規定するもの)
- ④一体資産(※1)のうち、一定の要件を満たすもの
をいい、
・医薬品、医薬部外品、再生医療等製品、酒税法に規定する酒類
を除きます
これだけ読めば、「普通の食べ物は軽減税率の対象で、酒や薬は対象外なのだ」で終わりそうですが、現実にはそう簡単にいかないケースもあるのです。消費者が戸惑うのと同時に、関連する事業者にとっては、お客さんから誤った税率で消費税をもらっていたために、のちのち税務調査(※2)で問題になったりしたら一大事。誤解があれば、今のうちに解いておく必要があるでしょう。
では、紛らわしい事例について、みていくことにします。
食玩のように、食品と食品以外のものが一体の資産を形成している商品。
国税局や税務署が、納税者の税務申告が正しいかどうかをチェックするために行う調査。任意調査と、国税局査察部が行う強制調査がある。
生きている牛は対象外、活魚は対象に
以下、軽減税率の対象になるものは〇、ならないものは×です。
・肉用牛の販売をしています。生きている牛は、軽減税率の対象ですか?
- ×肉用牛、食用豚、食鳥などの生きた家畜は、その販売の時点において人の食用には供されないため、対象にはなりません。
・食用の生きた魚を販売しているのですが。
- 〇一方、人の食用に供される活魚は、「食品」に該当します。
・家畜の飼料、ペットフードは?
- ×人の食用に供されるものではないため、適用されません。
・コーヒーの生豆は?
- 〇人の飲用に供されるコーヒーの生豆は、軽減税率の対象となります。
・果物の苗木や種子の販売は?
- ×果物の苗木など栽培用として販売される植物や種子は「食品」に該当しないため、その販売は軽減税率の対象外。
- 〇ただし、種子であってもつまみやおやつ、製菓の材料など、人の食用に供されるものとして販売されるかぼちゃの種などは、「食品」に該当するため、適用対象となるのです。
・水の販売は、軽減税率の対象になるのでしょうか?
- 〇人の飲用に供されるミネラルウオーターなどの飲料水は、「食品」に該当し、その販売は軽減税率の対象です。
- ×他方、水道水は、炊事や飲用のための「食品」としての水と、風呂、洗濯といった引用以外の生活用水として供給されるものが混然一体となって提供されているため、水道水をペットボトルに充填して飲料水として販売するような場合(例えば東京都水道局が販売する「東京水」)を除き、対象にはなりません。水道料金にかかる消費税は、増税になりました。
・ウオーターサーバーのレンタル料、水の販売代金は?
- ×「資産の貸付」に当たるサーバーのレンタルについては、軽減税率の対象にはなりません。
- 〇ウオーターサーバーで使用する飲料水は、「食品」に該当するため、適用対象です。
「みりん」は×、「みりん風調味料」「料理酒」は〇
・食品の原材料となるワインなどの酒類は?
- ×酒税法に規定する酒類の販売は、用途を問わず軽減税率の適用外となります。
・では、酒類を原料としたお菓子の販売は、どうでしょう?
- 〇種類を原料にしたお菓子であっても、菓子そのものが酒税法に規定する酒類に該当しないものについては、軽減税率の対象です。
・みりん、料理酒などの販売については?
- ×酒税法に規定する「みりん」は、やはり軽減税率の対象外になります。
- 〇一方、アルコール分が一度未満の「みりん風調味料」や、アルコール分が一度以上であるものの、塩などを加えることにより飲用できなくした料理酒などの発酵調味料は。酒税法に規定する酒類には該当しないため、適用対象です。
・日本酒を製造するためのお米の販売は?
- 〇日本酒の原料である酒造米は、酒類ではないため「食品」から除かれません。つまり、軽減税率が適用されるのです。
・食品を飾る「金箔」には、軽減税率が適用されますか?
- 〇食品衛生法に規定される「添加物」として販売される金箔は、「食品」に該当するため、適用されます。
・食品衛生法に規定する「添加物」を、化粧品メーカーに販売しているのですが。
- 〇取引先が化粧品の原材料に使用していたとしても、「添加物」を「食品」として販売する場合には、適用対象です。
・食品添加物の炭酸ガスを仕入れ、飲食店に販売しています。金属製のボンベに充填させた状態で販売し、使用後の空ボンベは回収して、仕入先に返却しています。この場合、販売しているガスには、軽減税率が適用されるのでしょうか?
- 〇食品衛生法に規定する「添加物」として販売される炭酸ガスは、適用対象です。なお、ボンベはガスの販売に附帯して通常必要なものとして使用されると考えられるため、別途対価を徴収している場合を除き、ボンベも含めて軽減税率の適用対象と解釈されます。
・割りばしやスプーン、お手拭きなどを付けた状態で販売する弁当、ストロー付きの紙パック飲料には、適用されるのでしょうか?
- 〇これらの食器具などは、通常、その商品を飲食する際にのみ用いられるものであるため、その販売については、食器具も含め軽減税率適用対象になります。
いかがでしょう? 軽減税率の線引きの難しさが、ご理解いただけたのではないでしょうか。
まとめ
同じ飲食料品でも、消費税率は8%と10%のものがあります。特に該当する商品を扱う事業者は、あとで問題にならないよう注意が必要。疑問、不安を感じたら、税の専門家に相談してみてはいかがでしょうか。