毎年2月から3月にかけて所得税の確定申告が行われますが、個人事業主だけが行うものではありません。サラリーマンであっても、確定申告をするケースがあります。その場合、主に確定申告書Aを使って申告します。ここでは、確定申告が必要となるケースや、確定申告書Aの書き方について解説します。
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確定申告書Aで確定申告をする対象者
個人事業主が確定申告をする場合は、確定申告書Bを使用します。では、確定申告書Aで確定申告をする人とはどのような人でしょうか。まずは、確定申告書Aの対象者と必要書類について見ていきましょう。
確定申告書Aを使って申告するケース
確定申告書Aで申告をする対象者は、申告する所得が次の場合のみの場合です。
- 給与所得
- 公的年金等・その他の雑所得
- 総合課税の配当所得
- 一時所得
予定納税がある場合は、確定申告書Bを使います。
確定申告書Aで申告をする対象者を挙げましたが、給与所得のサラリーマンは勤務先で年末調整を行うため、通常は確定申告不要です。ただし、次のようなケースでは、サラリーマンであっても確定申告書Aを使った確定申告が必要です。
- ①2ヵ所以上の勤務先で働き、確定申告をすることで、所得税の納税が生じたり、還付を受けようとしたりする場合
- ②医療費控除を受けようとする場合
- ③初めて住宅借入金等特別控除(住宅ローン控除)を受けようとする場合
※2回目以降は年末調整で控除を受ける - ④雑損控除や寄付金控除などの控除を受けようとする場合
サラリーマンで、確定申告書Aを使って申告するケースの多くは、控除を使って税金の還付を受ける場合になります。
確定申告書Aで確定申告をするケースの必要書類
では、確定申告書Aで確定申告をする際の必要書類について見ていきましょう。確定申告書Aで確定申告をする場合の必要書類は、次のとおりです。
①確定申告書A
確定申告書Aの用紙は、税務署の窓口または国税庁のホームページからのダウンロードで入手することができます。
②本人確認書類
マイナンバーカードがある場合は、マイナンバーカードが本人確認書類となります。マイナンバーカードがない場合は、マイナンバー通知カードや住民票の写しなど、個人番号を確認できる書類と、運転免許証やパスポート、公的医療保険の被保険証など身元確認ができる書類を用意します。
③源泉徴収票
源泉徴収票は確定申告書の作成に必要ですが、税務署に提出する必要はありません。
④控除を受けるために必要な書類
生命保険料や地震保険料の控除証明書(通常、ハガキ)や医療費の領収書や明細書、寄附金の受領書など各種、控除を受けるために必要な書類を用意します。控除証明書のうち、年末調整で勤務先に提出した書類は不要です。
確定申告書A 第一表の書き方
確定申告書Aは第一表と第二表の2つの表から構成されています。それぞれ作成し、2枚一緒に税務署に提出します。
まずは、確定申告書A第一表の書き方から見ていきましょう。確定申告書A第一表は、納める税額を求める表です。
①基本情報
住所や氏名、生年月日や電話番号など、個人の基本情報を記載します。個人番号(マイナンバー)も忘れずに記載しましょう。
②収入金額等
各所得ごとに、1年間に得た収入金額を記載する箇所です。サラリーマンなどが得る給与収入の場合は、源泉徴収票の「支払金額」を「給与ア」欄にそのまま転記します。
③所得金額
所得金額とは、収入金額から経費などを差し引いた、所得税の計算の基になる金額です。給与収入の場合は自分で計算する必要はなく、源泉徴収票の「給与所得控除後の金額」を「給与①」欄にそのまま転記します。給与以外の所得がない場合は、「合計⑤」欄にも、その数字をそのまま転記します。
④所得から差し引かれる金額
該当する各種控除の金額を記載します。給与収入の場合は、大部分は源泉徴収票の数字を転記します。源泉徴収票の「社会保険料等の金額」を「社会保険料控除⑥」欄に、「生命保険料の控除額」の金額を「生命保険料控除⑧」欄に、「地震保険料の控除額」の金額を「地震保険料控除⑨」欄に、それぞれ転記します。
「基礎控除⑮」欄には38万円(2020年以降は、金額が改正されます)を記載します。その他、自分が該当する箇所の控除額を記載します。
「⑥から⑮までの計⑯」欄や「合計⑳」欄に合計金額を記載します。
⑤税金の計算
納める税額を計算する箇所です。所得金額の「合計⑤」から、所得から差し引かれる金額の「合計⑳」を差し引いた額を「課税される所得金額㉑」欄に記入します(1,000円未満切り捨て)。「課税される所得金額㉑」に所得税率をかけ、「㉑に対する税額㉒」欄へ記入します。
住宅借入金等特別控除などがある場合は、該当箇所にも記載します。以下、「所得税及び復興特別所得税の額㊱」欄まで、第一表の記載内容に沿って計算していきます。「所得税及び復興特別所得税の源泉徴収税額㊳」欄は、毎月の給料などで天引きされている所得税等の金額を記載します。給与収入の場合は、源泉徴収票の「源泉徴収税額」をそのまま転記します。
「所得税及び復興特別所得税の額㊱」の金額から「所得税及び復興特別所得税の源泉徴収税額㊳」の金額を差し引き、プラスの場合は、「納める税金㊴」欄に、マイナスの場合は「還付される税金㊵」欄にその金額を記載します。
⑥還付銀行など
「還付される税金㊵」欄に数字がある場合は、還付を受けたい銀行名や口座番号などの情報を記載します。
確定申告書A 第二表の書き方
次に、確定申告書A 第二表について見ていきましょう。第二表は主に、所得の種類や控除の内容などを記載する表です。
①所得の内訳
1年間に得た所得の詳細を記載します。給与収入の場合は、「所得の種類」欄に「給与」と記載します。また、「種目・所得の生ずる場所又は給与などの支払者の氏名・名称」欄には、「給料 ○○株式会社」と記載します。
「収入金額」、「所得税及び復興特別所得税の源泉徴収税額」欄には、それぞれ源泉徴収票の「支払金額」「源泉徴収税額」をそのまま転記します。
②雑所得(公的年金等以外)・配当所得・一時所得に関する事項
雑所得や配当所得、一時所得がある場合のみ、その内容を記載します。
③所得から差し引かれる金額に関する事項
社会保険料控除や生命保険料控除などについての情報を、該当箇所に記載します。社会保険料控除について、源泉徴収票に金額の記載がある場合は、「社会保険の種類」欄に「源泉徴収票のとおり」と記載し、金額欄に金額を転記します。ふるさと納税がある場合は、「寄附金控除⑲」にその情報を記載します。
④住民税に関する事項
住民税に影響を与える事項について、記載する箇所です。16歳未満の扶養家族がいる場合は、氏名や生年月日、個人番号などの情報を記載します。ふるさと納税がある場合は、「寄附金税額控除」の「都道府県、市区町村分」欄に金額を記載します。
確定申告書Bで確定申告をする対象者
確定申告書には、「A」と「B」の2種類があります。「確定申告書A」は、主としてサラリーマンが、会社の年末調整では対応してもらえない医療費控除などを受ける場合に、税務所に提出します。毎年確定申告を行う個人事業主、フリーランスの方が使うのは、「確定申告書B」のほう。なお、サラリーマンの方でも、副業で20万円以上の事業所得がある場合などには、こちらで申告を行うことが必要です。
個人事業主の確定申告には、「青色申告」と「白色申告」がありますが、どちらの場合でも、「確定申告書B」を使います。前者では「青色申告決算書」、後者の場合は「収支内訳書」を併せて作成し、その他控除に必要な書類などを添付して、提出します。
申告書B「第一表」の書き方
申告書は、「第一表」「第二表」でワンセットになっています。「第一表」では、収入(売上額)、所得(売上から経費などを差し引いた額)、各種の控除(所得から差し引くことができる額)を記入し、さらに所得税の金額を計算して記入します。順を追ってみていきましょう。
(1)収入金額等
該当する項目に、1年間の収入を記入します。個人事業主、フリーランスの多くは、㋐「事業/営業等」のみの記載になるでしょう。
(2)所得金額
収入㋐から、仕入などの「売上原価」、事業のために支出した「必要経費」を除きます。青色申告の場合には、さらに「青色申告特別控除額」(「その他」の51、最大65万円)も、ここで差し引くことができます。
上記(1)で㋐のみの記入だった方は、ここでも①だけでOK。他に収入があった場合には、それぞれに対応する所得を記入し、「合計」を⑨に記入します。
ところで、経費の記載欄は、申告書にはありません。これは、添付する「青色申告決算書」(青色申告の場合)の1ページ目に、項目ごとに記載することになっています。この決算書を作成すれば、「収入から経費などを引き、さらに青色申告特別控除額を差し引いて所得を求める」という流れがわかりやすいでしょう。決算書の「所得金額」㊺を、申告書の⑨に記入すればいいのです。
(3)所得から差し引かれる金額
社会保険料控除(公的年金や国民健康保険料の保険料)、生命保険料控除などの金額を、該当する項目に記入します。「ふるさと納税」をした場合には、「寄付金控除」㉔にその金額を記入します。「基礎控除」⑳は、所得に関係なく誰でも受けられるものですから、「38万円」と記載するのをお忘れなく。
(4)税金の計算
わが国では「申告納税制度」(税額を自分で計算して納税する)が採用されているため、この作業が必要になります。たくさんの項目や文字が並んでいますが、「所得税の納税額がどうやって決まるのか」を押さえていけば、そう難しい作業ではありません。
まず、所得金額⑨から、そこから差し引ける金額㉕を引きます。これが「課税される所得金額」㉖で、所得税は、これにその額に応じた税率を掛けて計算されるのです。
さらに、「税額控除」と言って、ここから直接差し引ける控除もあります。「配当控除」㉘~「住宅耐震改築特別控除など」㊲がそれで、該当する場合には、記入します。また、「災害減免法」の適用を受ける場合には、㊴に記入すれば、所得税の減免が受けられます。
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1902.htm
こうして求めた「再差引所得税額」㊵と、それに2.1%を掛けた「復興特別所得税額」㊶の合計が、実際の納税額㊷ということになるわけです。
そして、税額計算の最後の作業。個人事業主であっても、原則として所得税が取引先で源泉徴収されていますから、その金額を㊹に記入します。㊷を㊹の金額と比較して、黒字(実際の納税額が、源泉徴収額を上回った)の場合には、その金額を㊼に、赤字だったら㊽に記入します。㊽は、「源泉徴収で所得税を取られ過ぎていた」ことを意味しますから、申告後にその分が還付される(戻ってくる)ことになります。
(5)その他
項目に従って、該当するものがある場合には、記入しましょう。「青色申告特別控除額」は、51に記載します。
申告書「第二表」の書き方
(1)所得の内訳など
「所得の種類」(例えば「営業等所得」)、「支払者」の情報、「収入金額」、「源泉徴収税額」を、支払者から発行された「支払調書」などを基に記入します。
また、「雑所得」など、事業以外に該当する所得があった場合には、支払者の会社名や、収入金額、その収入を得るために支出した経費などを記入します。
(2)所得から差し引かれる金額に関する事項
「第一表」に記載したものを、さらに具体的に記入します。控除金額ではなく、「実際に支払った金額」を記載する点には、注意してください。
(3)事業専従者に関する事項
「事業専従者」とは、配偶者などの親族で、従業員になっている人を指します。1人で事業を営んでいる場合には、記入は不要です。
(4)住民税・事業税に関する事項
該当する項目があれば、記入します。「ふるさと納税」をした場合には、住民税の「寄附金税額控除」の「都道府県、市町村分」の欄に、金額を記入します。
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確定申告書AとBって何が違うの?どちらを選べばいい?|3分でわかる!税金チャンネル
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まとめ
サラリーマンの場合でも、税金の還付がある場合には確定申告を行います。その際に作成しなければならないのが確定申告書Aです。
確定申告書Aは、税金の計算をする第一表と、所得や控除の種類、内容を記載する第二表に分かれています。税金の還付を受けるためには、第一表・第二表のどちらも正確に作成する必要があります。ぜひ、この記事を参考に正しく確定申告書Aを作成しましょう。