個人事業主向けの税金セミナーは多岐にわたります。選択するセミナーによって費用対効果が違い、参加するセミナーの選択に迷うかもしれません。当然、セミナーの内容を生かしきれないケースもあります。そこで、税金セミナーを最大限に活用する方法や参加する時のポイントについて解説します。
税金セミナーの概要
一口に個人事業主向けの税金セミナーといってもテーマや運営母体などはさまざまです。まずは税金セミナーの全体像について説明します。
税金セミナーのテーマ
個人事業主向けの税金セミナーのおもなテーマは次の通りです。
(1) 確定申告
所得税の確定申告をテーマにしたセミナーは多い傾向にあります。たとえば、確定申告書の書き方などの基本的な内容や必要経費や医療費控除などの節税対策に絞った内容まで多岐にわたるのが特徴です。
(2) 記帳指導
青色申告を利用した節税対策をするためには帳簿の作成が必須であり、記帳方法をテーマにしたセミナーも盛んにおこなわれています。たとえば、帳簿の作成に必要な簿記の知識などの基本的な内容や会計ソフトへの入力方法などの実践的な内容が、個人事業主の目的に応じて用意されています。
(3) 改正税法
税法は毎年改正されるため、改正税法もセミナーのテーマになりやすいといえます。最近の例では、飲食店などに向けた消費税の軽減税率をテーマにしたセミナーが盛んにおこなわれていました。
税金セミナーの運営母体
税金セミナーのおもな運営母体について説明します。
- (1) 税務署
税務署の記帳説明会を例にすると、税務署の職員が講師になったり各国税局が税理士などの事業者に外部委託したりして実施されています。 - (2) 青色申告会
青色申告会は青色申告の普及を目的とした 団体であり、税金をテーマにした内容や帳簿の記帳方法の内容などのセミナーが実施されています。 - (3) 商工会議所・商工会
商工会議所・商工会は非営利団体である点が共通点であり、経営全般をテーマにしたセミナーが実施されています。たとえば、東京商工会議所の場合、個人事業主向けに記帳指導を実施しています。 - (4) 税理士事務所・税理士法人
税理士事務所や税理士法人もクライアント以外の個人事業主向けにさまざまなテーマのセミナーを実施しています。セミナー終了後に個別相談を設けている所もあり、相談者のニーズに即したアドバイスが受けられます。たとえば、必要経費をテーマにしたセミナー後の個別相談では、必要経費の範囲について個人事業主の実情に応じた相談にのってくれるかもしれません。
税金セミナーの費用
セミナーの費用は無料または格安の所が多い傾向にあります。たとえば、税務署は無料であり、税理士法人も無料や格安でセミナーを実施している所が多く存在します。
税金セミナーに参加するメリット
税金セミナーに参加するメリットのひとつは節税対策に生かせることでしょう。たとえば、白色申告の個人事業主が記帳方法がテーマのセミナーを通じて、帳簿の作成ができるようになります。すると青色申告で確定申告ができ、節税対策の幅は広がります。
また、税金面での損失を防げるのも税金セミナーのメリットになります。改正税法を例にすると、税制改正によりある項目の経費で落とせる範囲が狭くなった場合、知らないと後日、税務調査で間違いを指摘される可能性があります。否認による延滞税などのペナルティーなどの余分な負担を減らすのにも税金セミナーは役立ちます。
税金セミナーを最大限に活用するためには
実際、税金セミナーに参加しただけでは、活用できないケースがあります。しかしそれでは、セミナー参加に費やした時間や費用が無駄に終わってしまいます。たとえば、記帳方法をテーマにした1日セミナーに参加して、帳簿が作成できなければ、青色申告の特典を利用した節税対策につなげられません。
税金セミナー活用法の基本
税金セミナーを最大限に活用するための基本的な考え方について説明します。
目的意識を明確にする
目的意識を明確にすることが税金セミナーの活用には欠かせません。たとえば、医療費控除のセミナーに参加するとします。ただ漠然と講師の話を聞くよりも、自分のケースに当てはめて、交通費などの費用について医療費控除の対象になる項目をできるだけ多く拾い出そうとしたほうがセミナーのメリットをより得られます。
予習・復習をする
目的意識をより明確にするためにも予習・復習は大切です。事前にインターネットで調べたり、配布資料で見返したりすると、税金セミナーの内容がブラッシュアップできます。前述の医療費控除の交通費を例にすると、予習としてバス代や電車代などの公共交通機関が所得控除の範囲になる、タクシー代は医療費控除の対象外などの全体像を把握します。セミナー後の復習で、病院までの移動手段がタクシーしかない場合はタクシー代も医療費控除の対象になり得るなどの知識を得れば、より理解が深まるでしょう。
反復学習をする
そもそも税法は難しいため、税金セミナーに参加してもすぐにマスターできるとは限りません。典型的な例が帳簿の記帳でしょう。確定申告シーズンに年1回にまとめて帳簿を作成すれば、来年の同時期までに記帳方法を忘れてしまう可能性が高くなります。そのため、記帳方法を忘れないためにも、反復学習を意識したほうがいいでしょう。
定期的に参加する
反復学習をする方法として、定期的に税金セミナーへの参加をおすすめします。年1回だけの確定申告をテーマにしたセミナーに参加しても、来年までに忘れる傾向にあるためです。
忙しいため税金セミナーに参加できない場合は
税金セミナーには定期的に参加したほうが良いとわかっていても、本業が忙しく、本業以外の時間を確保するのは大変かもしれません。そこで、セミナーに参加できない場合の対処方法について説明します。
忙しくても税金の知識は必要
個人事業主は確定申告により自分で税金を計算する立場である以上、改正税法などの最新の知識は必要になります。配偶者控除の適用範囲は最近改正されましたが、たとえば合計所得金額が1,500万円の個人事業主が従来のまま配偶者控除を適用すれば、税務署から間違いを指摘されてしまいます。
無料税務相談室を利用する
各国税局が開設している無料税務相談室を利用すれば、最低限の知識は教えてくれます。配偶者控除を例にすると、自分と配偶者の合計所得金額(または給与の年収)を伝えれば、適用できるかどうかについて教えてくれます。しかし、「本当は配偶者控除が受けられる」などの個人事業主寄りの積極的なアドバイスはしてくれません。あくまでも質問内容にのみ回答するというのが無料税務相談室のスタンスです。
税理士を活用する
個々の実情に即した税務相談は税理士の独占業務です。個人事業主寄りに積極的なアドバイスをしてくれるのが税理士を活用するメリットでしょう。たとえば、前述の配偶者控除の場合、適用漏れを指摘し、還付申告の方法まで税理士がアドバイスをしてくれます。
業務の一部を委託するのもアリ
税金は複雑なだけでなく、業務範囲が広いのも特徴です。そのため、税理士にノンコア業務の委託も可能です。たとえば、帳簿の作成や年末調整などを税理士に依頼すれば、正確に事務処理をしてくれるでしょう。
まとめ
個人事業主は税金の知識が必須のため、セミナーに積極的に参加したほうがいいでしょう。しかし、業務の一部を税理士に委託して足りない知識を補うという考え方もあります。税金の知識について「自分で勉強する範囲」と「足りない知識を補う範囲」を明確にすることがポイントになります。