12月は年末とあって、忘年会や大掃除、新年の準備など何かと忙しい月です。実は、事業をしている人にとって、大晦日はとても重要です。大晦日までに節税対策をすることで、税金の納付額が少なくなるケースがたくさんあります。ここでは、税金について、大晦日までにやっておきたいことや、大晦日と税金の関係について解説します。
個人事業主は、期ズレに注意!大晦日に気をつけること
個人事業主にとって、一事業年度の終わりが大晦日である12月31日です。一事業年度の終わりであるからこそ、気を付けなければならない点があります。それが「期ズレ」です。
ここでは、個人事業主にとってとても重要な、期ズレについて見ていきます。
税金に影響を与える「期ズレ」って何?
個人事業主にとって期ズレがなぜ重要となるのか。それは、税金に影響を与えるからです。期ズレがあると、税金を多く納めすぎたり、逆に、少なく納めすぎたために税務調査で延滞税などのペナルティを受けたりする可能性があります。
では、期ズレとはどのようなものかを見ていきましょう。期ズレとは、簡単に言うと、売上や経費を本来計上すべき年度に計上せず、別の年度に計上することです。例えば、当年度に計上すべき売上を、来年度に計上してしまうことなども期ズレにあたります。
「これは脱税ではないか?」と思われる人もいるかもしれませんが、必ずしもそうとは限りません。実は、売上や経費をいつ計上するかということは法律で決まっています。多くの場合、期ズレは意図的に納税額を安くしているのではなく、法律の内容を理解していないために起こります。
期ズレで注意しなければならない事とは
個人事業主がやってしまう期ズレは、それが期ズレになることを知らずに行っているケースが多くなっています。では、具体的に期ズレにはどのようなものがあるのでしょうか。代表的なものを見ていきましょう。
①売上
期ズレで最も代表的なものが売上です。税務調査でも、売上の期ズレは必ずチェックされます。売上の計上時期は原則、商品やサービスを得意先などに引き渡した時です。商品代金を、受け取った時ではありません。
そのため、掛売上など商品の引き渡し時と代金の受取時がずれる場合、特に大晦日をまたぐ場合は注意が必要です。商品の引き渡し時が今年、代金の受取時が来年の場合は、今年の売上にする必要があります。
②経費
売上の次に期ズレが多いのが、経費です。経費の計上時価は原則、商品やサービスの引き渡しを受けた時です。売上と同じように、こちらも商品の引き渡しを受けた時と代金の支払時がずれる場合、特に大晦日をまたぐ場合は注意が必要です。
商品の引き渡しを受けた時が今年、代金の支払時が来年の場合は、今年の経費にする必要があります。
③販売するために購入した商品
消耗品や文房具などの購入については、商品の引き渡しを受けた時に計上します。しかし、同じ購入でも、販売するために購入した商品の経費(売上原価)への計上時期は、それらと異なります。販売するために購入した商品は、その商品を売り上げた時に経費(売上原価)に計上します。
ただし、販売するために購入した商品は、会計処理では購入時に「仕入高」などの経費(売上原価)科目で処理しているため、期末に棚卸調整をする必要があります。大晦日やその年の営業最終日などに、実際の商品の数や単価を調査し、棚卸額を計算します。商品を販売する業種では、棚卸調整をしていないと必ず期ズレになります。
大晦日に支給されるモチ代に所得税は課税される?
従業員の慰安も兼ねて、大晦日にモチ代を支給する会社があります。では、モチ代に対して、給料と同じように税金がかかるのでしょうか。ここでは、大晦日に支給されるモチ代に所得税が課税されるかどうかを見ていきます。
所得税の課税対象になる給与とは?
所得税法では、どのように支給された金銭に対して、給料として所得税を課税するのか、または給料にならずに課税しないのかを規定しています。給料として所得税を課税するものは、大きく分けて次の3つです。
- ①給料や賃金、賞与など
- ②残業手当や扶養手当などの各種手当
- ③物品をタダで渡した場合など経済的利益に該当するもの(現物給与)
また、上記3つに該当するものでも、例外的に所得税が課されない(非課税)とされているものがあります。代表的なものは次のとおりです。
- ①長く働いた人への永年勤続者の記念品等
- ②おおむね5年周期で金額が1万円未満の創業記念品等
- ③従業員への値引販売で一定のもの
- ④残業した人への食事代で一定のもの
大晦日に支給されるモチ代に所得税が課税される
では、上述した内容をもとに、大晦日に支給されるモチ代に所得税が課税されるかどうか見ていきましょう。
まず、モチ代は1年間の慰労の意味合いで支給される金銭のため、賞与もしくは手当とみなされます。そのため、所得税が課税されます。また、例外的に所得税が課されない(非課税)ものの中に、モチ代はありません。そのため、大晦日に支給されるモチ代には、所得税が課税されることになります。モチ代から所得税を差し引いて、手渡すのは嫌だという経営者も多いでしょう。その場合は、年末調整で所得税の金額を調整します。
モチ代のことで他に注意したいのが、健康保険料などの社会保険料のことです。モチ代は給料とみなされるため、社会保険料の対象にもなります。計算間違いや支払間違いのないように注意しましょう。
大晦日に向けて注意したい、その他の税金
期ズレやモチ代など、ここまでは事業をしている人向けに、大晦日に注意したい税金のことについて見てきました。しかし、事業をしていない人にとっても、大晦日と税金は大いに関係します。例えば、次のような税金に注意が必要です。
①ふるさと納税
地域の振興や災害からの復興、節税対策など様々な理由でふるさと納税をしている人は多くなっています。ふるさと納税は、原則、自治体に寄付をしたら、一定金額を税金から差し引くというものです。
ふるさと納税は、大晦日である12月31日までに寄付したものが対象となります。自治体によって、大晦日まで寄附を受け付けている場合とそうでない場合があるので、事前にしっかりと準備しておきましょう。
②住宅ローン控除
住宅ローンを利用して自宅を購入した場合には、住宅ローン控除を受けることができます。住宅ローン控除を受けるためには、その家に入居し生活している必要があります。では、いつまでに入居すれば、住宅ローン控除が受けられるのでしょうか。
それは、大晦日である12月31日です。この日までに入居しておけば、その年に住宅ローン控除が受けられます。住宅ローン控除は、数十万円の控除になることも多いため、大晦日までに入居するかどうかで、大きく税金の金額が違ってきます。注意が必要です。
③固定資産税
建物や土地などを所有している場合は、固定資産税が課されます。実は、固定資産税は1月1日にその資産を所有している人に税金が課されます。つまり、制度上は、大晦日に土地や建物を購入した場合は、翌年に1年間税金がかかりますが、翌1月2日に購入した場合は、まる1年間税金がかからないことになります。
しかし、土地や建物の購入時には、固定資産税清算金(購入時から大晦日までの固定資産税相当分)を売主に支払う慣習になっていることも多いため、一概に翌年に購入した方が得になるとは言えません。年末年始に土地や建物を購入する際には、不動産業者などとよく相談したほうが良いでしょう。
まとめ
今回は、大晦日と税金の関係についてご紹介しました。意外と様々な税金に大晦日が影響していると思われたのではないでしょうか。大晦日のあたりになると、大掃除や新年の準備などで忙しくなるので、ついつい税金の期限などを忘れがちです。そうならないためにも、大晦日に関係する税金については、12月の早い段階から、準備をしておきましょう。