確定申告をした後で間違いなどに気づいたときに、確定申告を取り下げたいと思う人も多いでしょう。では、確定申告の取り下げは可能なのでしょうか。また可能な場合は取り下げできる要件などはあるのでしょうか。
ここでは、提出した確定申告の取り下げができるかどうかや、その要件や手続きなどについて詳しく解説します。
確定申告書の取り下げと修正申告・還付申告の違い
確定申告は、一定の要件を満たすと取り下げられます。しかし、確定申告をやり直すケースとして、取り下げ以外に修正申告や還付申告もあり、自分に該当するものを選ぶ必要があります。そこで、まずは確定申告書の取り下げと修正申告・還付申告の違いについて見ていきましょう。
確定申告書の取り下げとは
確定申告の取り下げとは、税務署に提出した確定申告書を撤回することをいいます。簡単に言うと、提出済の確定申告をなかったことにすることです。確定申告書の取り下げは、一定の事情があれば行えます。
例えば、昔の確定申告をし忘れていたと思って、確定申告をしたら、実は、昔に確定申告していた場合などです。この場合は、同じものを2つ提出していることになるので、一方を取り下げします。
そのほか、後述するように「確定申告をしなくて良かったのに、確定申告をしてしまった」という場合なども確定申告の取り下げが可能です。
修正申告と還付申告との違い
確定申告書の取り下げは、一定の事情があれば行うことができます。上述したように同じ確定申告を2つ提出している場合は、一方を取り下げできます。ただし、同じ期間の確定申告でも、税額などが変わっている場合は、確定申告書の取り下げはできません。
税額などが変わっている場合は、いったん提出した確定申告書を取り下げるのではなく、新たに修正申告書や更正の請求書を提出する必要があります。元の申告書より税額が大きくなる場合は修正申告書、税額が小さくなる場合は更正の請求書を税務署に提出します。
また、更正の請求と似ているものに還付申告があります。どちらも税金の還付を受けるために行うものですが、還付申告は更正の請求のように元の申告書の訂正ではなく、最初の申告で税金の還付がある場合に行います。
確定申告書の取り下げの要件
単純に、同じ確定申告を2つ提出している場合は、問題なく取り下げできますが、それ以外にも「確定申告をしなくて良かったのに、確定申告をしてしまった」という場合も確定申告書の取り下げができます。
しかし、確定申告をしなくて良かったのに、確定申告をしてしまった場合で取り下げができるのは、一定の要件を満たした場合のみに限られます。その要件とは、次の2つをすべて満たすことです。
- 確定申告を要しない者から提出された確定申告書であること
- 取り下げしたい確定申告書に第3期分の税額が記載されていること
以下でそれぞれの要件を詳しく見ていきましょう。
確定申告書を必要としない者とは
確定申告書の取り下げの要件の一つ目が、確定申告を要しない者から提出された確定申告書であることです。原則、1年間に収入のあった個人(サラリーマンを除く)は確定申告が必要ですが、一定の場合は、手間などを考え、確定申告をしなくても良いことになっています。例えば、確定申告書を必要としないケースには、次のようなものがあります。
- サラリーマンで、給与所得及び退職所得以外の副業の所得が20万円以下の場合
- サラリーマンで、本業以外のパートやアルバイトの収入と給与所得及び退職所得以外の副業の所得の合計が20万円以下の場合
- 公的年金等の収入金額が400万円以下で、その年金のすべてが源泉徴収の対象となる場合において、年金以外の所得金額が20万円以下である場合
上記のようなケースでは、確定申告をした場合に税額が出るケースであったとしても、確定申告をする必要がありません。これらの人を税法上、「確定申告書を必要としない者」といいます。
確定申告書を必要としない者の場合であっても、医療費控除を受ける場合などで、税金の還付がある場合は、確定申告をしたほうが得になります。
第3期分の税額がある場合とは
確定申告書の取り下げの要件の2つ目が、第3期分の税額がある場合です。
確定申告を行い、所得税を納付する場合は、原則3月15日までに所得税を納付します。実は、3月15日までに納付すべき税額のことを「第3期分の税額」といいます。このような表現をするのは「予定納税」という制度があるからです。
予定納税制度とは、前年の所得税の金額が大きい場合には、その年の所得税の一部をあらかじめ納付しないといけない制度です。前年の所得税の金額が大きい場合(原則、15万円以上の場合)は、予定納税基準額の3分の1の金額を、第1期分として7月1日から7月31日までに、第2期分として11月1日から11月30日までに納めることになっています。そして、最後に第3期分として、3月15日までに残りの所得税を納付します。
予定納税がない人は、第1期分と第2期分の納付がなく、第3期分のみ納付します。つまり、第3期分の税額の税額とは、確定申告時期に納める税額のことです。
ここまで見てきたことを総合すると、確定申告書の取り下げができる人とは、サラリーマンで、給与所得及び退職所得以外の副業の所得が20万円以下の場合など確定申告をしなくても良い人が確定申告をしてしまい、支払う税金が出てきた場合です。すでに税金を支払っていた場合は、取り下げが認められれば還付されます。
確定申告をしなくても良い人であっても、還付申告の場合は確定申告書の取り下げができないので注意が必要です。また、提出した申告書に間違いがある場合は、取り下げではなく、修正申告や更正の請求での訂正となるため、こちらも間違えないように注意しましょう。
確定申告書の取り下げには取下書(撤回書)が必要
同じものを2つ提出している場合や、確定所得申告を要しない者から提出された確定申告書で第3期分の税額がある場合は、確定申告書の取り下げができます。
では、確定申告書の取り下げをするためには、どのような手続きをする必要があるのでしょうか。確定申告書の取り下げをするためには、申告書を撤回したい旨の書面による申出が必要です。一般的には、撤回書や取下書を作成し、税務署に提出します。撤回書や取下書のフォーマットなどは決まっていないため、どのような形であっても問題ありません。一般的には、次のような記述を行います。
確定申告書の取下書 ○○○税務署長 殿 整理番号:○○○○○○○○○○○ 住所:○○市○○区○○ 氏名:○○○○ 印 記
|
上記は一例です。提出日時と何年分の確定申告書を取り下げしたいのか、その理由が分かれば問題ありません。手書きでも、文書作成ソフトで作成したしたものであっても提出可能です。
まとめ
確定申告書を提出した後であっても、確定所得申告を要しない者から提出された確定申告書で、第3期分の税額がある場合などは、確定申告書の取り下げができます。取り下げをする場合は、税務署に必要事項を記載した取下書を提出します。ただし、提出した申告書に間違いがある場合は、取り下げではなく、修正申告や更正の請求での訂正となるため、注意しましょう。