地域貢献や販売促進などの目的で、さまざまなお祭りが開催されています。冬の時期の雪まつりも、そのひとつです。
事業を行っていると、雪まつりなどのお祭りに協賛金を支払うこともあるでしょう。では、この協賛金はどのように会計処理するのでしょうか。ここでは、協賛金を中心に、雪まつりと税金の関係を徹底解説します。
個人事業主と法人の経費処理の違いとは
雪まつりへの協賛金は、個人事業主でも法人でも支払うことができます。では、個人事業主と法人で処理方法の違いはあるのでしょうか。
雪まつりへの協賛金の処理を見ていく前に、まずは、個人事業主と法人の経費処理の違いを見ていきましょう。
原則、個人事業主も法人も、事業に関係ある支出は経費にすることができます。しかし、一般的には、法人の方が経費にできる範囲が広いです。これは、法人の方が事業規模が大きく、広範囲にわたるためです。
一方で、個人事業主は、事業に関係ある支出はすべて経費にできますが。法人は一定の限度額が設けられているものもあります。例えば、接待交際費や寄附金などです。接待交際費や寄附金は、会計上は全額を経費で計上し、法人税の計算時に限度額を超える金額については、経費から除外(損金不算入)します。
個人事業主の場合は、経費計上時にその支出が事業に関係あるかどうかを判断すれば良いですが、法人の場合は、経費計上後に損金不算入のことについても注意する必要があります。
雪まつりの協賛金の処理方法
それでは、個人事業主と法人の経費処理の違いに注意しながら、雪まつりの協賛金の処理方法を見ていきましょう。
ひとくちに雪まつりの協賛金といっても、その内容によって、処理方法が異なります。大きく分けて、次の3つのケースがあります。
雪まつりの協賛金が寄附金になる場合
寄附金とは、事業とは関係しない団体などの主張や意見などに賛同し、見返りを求めずにお金などを贈る行為のことです。そのため、事業とは関係のない団体が主催する雪まつりへの協賛金は、寄附金になります。
寄附金は、見返りを求めないもののため、売上を得るための支出とは言えず、原則、経費にできません。ただし、法人の場合は地域や社会に貢献することも、企業価値を高める手段のひとつと考えられるため、会計上は全額経費にできます。法人税の計算では、一定の限度額を設けているので、限度額を超えるものは損金に算入しません。
個人事業主も、寄附金に対して何も考慮しないのは不適切との考えがあるため、一定の寄附金については、所得税の計算時に控除の対象になります。
では、会計処理方法を具体例で見てみましょう。
例)法人である当社が、雪まつりの協賛金1万円を現金で支払った。なお、雪まつりの主催団体とは、事業上の付き合いはない
借方勘定科目 | 借方金額 | 貸方勘定科目 | 貸方金額 | 摘要 |
---|---|---|---|---|
寄附金 | 1万円 | 現金 | 1万円 | 雪まつり協賛金 |
雪まつりの協賛金が交際費になる場合
次に、雪まつりの協賛金が交際費になるケースを見ていきましょう。交際費とは、得意先や仕入先などの外部関係者に、今後の良い取引を行うための関係を構築(継続)する目的で行った接待や供応、慰安や贈答の費用のことです。
雪まつりの協賛金も、支出の目的が今後の良い取引を行うための関係を構築(継続)するものであった場合は、交際費になります。例えば、得意先から頼まれ、今後の取引をスムーズにするために、雪まつりの協賛金を支払った場合などが交際費になります。
交際費は、寄附金と違い事業と関係のある支出のため経費になります。ただし、無制限に経費になることを認めてしまうと、節税のために接待を行う可能性もあります。そこで、法人では、一定の制限を設けています。会計上は全額を経費にできますが、法人税の計算では一定の限度額を設け、限度額を超えるものは損金に算入しません。
個人事業主では、無制限に接待を行う規模ではないと考え、交際費の限度額はありません。
では、会計処理方法を具体例で見てみましょう。
例)得意先に頼まれ、雪まつりの協賛金1万円を現金で支払った。
借方勘定科目 | 借方金額 | 貸方勘定科目 | 貸方金額 | 摘要 |
---|---|---|---|---|
(接待)交際費 | 1万円 | 現金 | 1万円 | 雪まつり協賛金 |
雪まつりの協賛金が広告費になる場合
雪まつりの協賛金が、経費になるもう1つのケースが広告費です。広告費とは、自社の名前や製品、サービスなどを一般の人に宣伝するための費用のことです。
雪まつりの協賛金が広告費になるケースとしては、自社の名前の入った広告や看板を雪まつり会場に設置した場合や、会社名を知ってもらうことを目的に、雪まつりのチラシや広告に、自社名を記載した場合などです。
広告費については、法人、個人事業主ともに、限度額を設けるなどの制限はありません。
支出した金額が会計上、税法上ともに全額経費になります。
では、会計処理方法を具体例で見てみましょう。
例)雪まつりの協賛金5万円を現金で支払った。なおこの支出をすることで、雪まつりのチラシや冊子などに広告を載せることができる
借方勘定科目 | 借方金額 | 貸方勘定科目 | 貸方金額 | 摘要 |
---|---|---|---|---|
広告宣伝費 | 5万円 | 現金 | 5万円 | 雪まつり協賛金 |
雪まつりの協賛金の消費税の取り扱い
一定の規模の法人や個人事業主は、法人税や所得税などの他に、消費税を納める必要があります。納める消費税の金額は、売上で預かった消費税から、仕入や経費の支払い時に購入者に支払った消費税を差し引いて求めます。そのため、支払った経費が消費税の対象(売上の消費税から差し引ける)かどうかで、納める消費税の金額が変わります。
支払った経費が消費税の対象であれば、納める消費税の金額は低くなり、消費税の対象でなければ、納める消費税の金額は高くなります。では、雪まつりの協賛金は、消費税の対象になるのでしょうか。
経費が消費税の対象になるかどうかには、明確な定義があります。それは対価性があるかどうかです。対価性とは、見返りのことです。その金額を支払えば、商品が手に入ったり、サービスを受けられたりなどの見返りがあるものについては、消費税の対象になります。
それでは、雪まつりの協賛金が寄附金、交際費、広告費になる場合、それぞれで消費税の対象になるかどうかを見ていきましょう。
(1)寄附金
そもそも寄附金とは、見返りを求めずにお金などを贈る行為のことです。そのため、原則は消費税の対象となりません。ただし、物品を購入して寄附をした場合は、金額を支払えば、商品を手に入れる対価性があるため、消費税の対象になります。なお、寄附金が経費にならない場合は、そもそも消費税の対象にはなりません。
(2)交際費
雪まつりの協賛金が交際費になる場合には、お金を贈る場合と物品を購入して贈る場合の2つがあります。
お金を贈る場合は、そのお金が具体的に何に使われるのかわかりません。これでは対価性があるとは言えないため、消費税の対象になりません。物品を購入して贈る場合は、寄附金と同じように対価性があるため、消費税の対象になります。
(3)広告費
雪まつりの協賛金が広告費になる場合には、雪まつりのチラシや広告に自社名を記載してもらうなどの対価を得るために、協賛金を支払うと考えられるため、消費税の対象になります。
まとめ
雪まつりの協賛金は、その支出の目的や内容により、寄附金になるもの、交際費になるもの、広告費になるものに分かれます。寄附金、交際費、広告費のどれになるかで、会計処理や法人税、所得税の計算などが大きく異なります。また、消費税の計算にも大きく影響を与えます。
そのため雪まつりの協賛金を支出した場合は、どの経費にあたるのかを正確に判断することが重要です。処理方法に迷ったときは、ぜひこの記事を参考にしてください。