1年に1度の確定申告。申告書を正しく記載する必要があるのはもちろん、申告の中身によっては、さまざまな書類の添付が求められることがあります。そこに不備があって、申告のやり直し、などということは避けたいもの。そんなことにならないように、「これは?」と迷うケースも含めて、必要になるものをまとめてみました。
必ず用意すべきもの
確定申告の際には、次の書類が必ず必要になります。
・確定申告書
ただし、申告書には「確定申告書A」「確定申告書B」の2種類があって、それぞれ「使う人」が違います。「A」は主としてサラリーマンや年金を受け取っている人、「B」は主として個人事業主や、土地・建物、株式などを売却した人が対象だと考えてください。
申告書は税務署に用意されているほか、国税庁ホームページなどから自分でプリントアウトすることもできます。e-Tax(電子申告)で申告する場合には、「電子証明書」の取得といった手続きが必要になりますが、紙の申告書を税務署に提出する必要はなくなります。
・本人確認書類
具体的には、「マイナンバー」で本人確認が行われます。マイナンバーカードを持っていれば、それだけでOK。税務署に送付する場合には、表面・裏面の写しを添付します。持っていない場合には、番号確認書類(マイナンバーの記載のある通知カードか同じく記載のある住民票)+身元確認書類(運転免許証、公的医療保険の被保険証、身体障碍者手帳、パスポート、在留カードなどのうちの1つ)を用意しましょう。
・源泉徴収票、支払調書(ともに提出の必要はありません)
サラリーマンの場合、1年間の収入や、源泉徴収された所得税の金額などが記載された「源泉徴収票」が会社から渡されます。個人事業主に対しても、同じ内容の「支払調書」が得意先などから発行されることがあります。正しい申告書の作成を行うため、手元に準備しましょう。ただし、「支払調書」を申告書に添付する必要はありません。「源泉徴収票」についても、2019年4月の確定申告から、添付は不要になりました。
控除を受けるために必要になる主な書類一覧
確定申告では、各種の控除(特定の出費に対して税金を割り引く制度)が利用できる場合があります。控除を受けるためには、「控除証明書」などの書類が必要になりますから、忘れずに用意しましょう。証明書などの必要な控除には、次のようなものがあります。
- 社会保険料控除 国民健康保険料、国民年金保険料の支払いで受けられる控除です。保険料の領収書、または控除証明書が必要になります。
- 生命保険料控除 生命保険会社が発行する控除証明書が必要になります。
- 地震保険料控除 損害保険会社が発行する控除証明書が必要になります。
- 医療費控除 その年の医療費が10万円(年間総所得金額等が200万円未満の人は、所得の5%分)以上かかった場合に受けられる控除です。医療費の明細書、交通費の明細書が必要です。領収書の提出は不要になりました。
- 小規模企業共済掛金等控除 個人型確定拠出年金(iDeCo)の掛金は、共済を運営する中小企業基盤整備機構発行の小規模企業共済等掛金払込証明書を添付することで、控除されます。
- 住宅ローン控除 住宅借入金等特別控除額の計算明細書、住民票の写し、金融機関などからの借入金残高証明書、建物・土地それぞれの全部事項証明書、請負契約書の写し、売買契約書の写しなど(1年目のみ)が必要になります。サラリーマンの場合には、2年目以降は年末調整の対象になるため、確定申告は不要になります。
- 勤労学生控除 申告者が勤労学生で、給与所得が130万円以下の場合には、控除が受けられます。各種学校などの発行する証明書を提出します。
- 寄付金控除 寄付した団体などから交付された寄付金の受領書などを添付します。
個人事業主の確定申告で必要となる書類
個人事業主の確定申告には、「青色申告」(細かい帳簿付けが必要だが、最大65万円の特別控除が受けられるなどの特典あり)と、「白色申告」(「青色」ほど厳格な帳簿付けなどは不要だが、特典は受けられない)があり、それぞれ準備が必要になるものも違います。
〈青色申告の場合〉
- 確定申告書B
- 青色申告決算書 これも税務署で受け取るか、国税庁ホームページからダウンロードが可能です。その年の収入、経費を記載する「損益計算書」、資産や負債の状況を記載する「貸借対照表」などからなります。
- 控除を受けるための関係書類(前述のものなど)
- 支払調書(提出の必要はありません)
〈白色申告の場合〉
- 確定申告書B
- 収支内訳書 税務署で受け取るか、国税庁ホームページからダウンロードが可能です。その年の売上、仕入れ、人件費、諸経費を記入して所得金額を計算し、添付します。
- 控除を受けるための関係書類(前述のものなど)
- 支払調書(提出の必要はありません)
サラリーマンの確定申告で必要となる書類
毎月の給料から所得税などが源泉徴収(天引き)されているサラリーマンは、原則として確定申告の必要はありません。しかし、以下のような場合には、確定申告が必要、ないししたほうがいい(節税になる)ので、注意しましょう。
なお、サラリーマンが確定申告するときには、まず次の書類を準備します。
- 確定申告書A
- 源泉徴収票(提出の必要はありません)
〈確定申告が必要になる〉のは、次のような人です。
- 副業の所得が20万円を超えた 所得の種類ごとに収入を集計して申告します。
- 給与が2000万円以上である この場合には、20万円以下の副業収入も含めて、自分で確定申告しなくてはなりません。
- 2ヵ所以上から給与をもらっている この場合には、合算して確定申告しなくてはなりません。ただし、「主たる給与以外の所得」が20万円以下だったら、申告は不要です。
〈確定申告をしたほうがいい〉のは、次のような控除を受ける人です。これらは、年末調整の対象にはなりませんから、確定申告しないと「無駄な」税金を取られる可能性があります。必要書類などは、前述の通りです。
- 医療費控除
- 住宅ローン控除 1年目のみ。2年目からは、年末調整してもらえます。
- 寄付金控除
これ以外にも、「こんなときには確定申告」。その必要書類は?
不動産を売って「売却益」が出た
不動産を売った場合には、サラリーマンでも確定申告が必要になることがあります。税金は、ざっくり言って「売れた価格-買った価格」=「売却益」にかかります。売却益が出ていなければ、納税の必要はありません。
必要な書類は、「確定申告書B」、「譲渡所得の内訳書」(税務署でもらうか、国税庁ホームページからダウンロード)、「戸籍の附票」(売買不動産がある自治体でもらう)のほかに、不動産の売買契約書や領収書など。売却時だけでなく、取得時の契約書など(つまり、いくらで買ったのかが分かる書類)も必要になります。
自然災害や盗難被害に遭った
震災、風水害などの自然災害や、火災、害虫被害、さらには盗難、横領によって経済的な被害を被った場合には、確定申告で「雑損控除」を受け、所得税額を軽減することが可能です。申告の際には、「災害関連支出」についての領収書を添付します。
自然災害の場合には、「災害減免法」の適用を選ぶこともできます。被害の内容や、被害を受けた人の所得の状況により、有利な方を選択します。この場合には、損害金額の明細を提示する必要があります。
「ふるさと納税」をした
個人事業主の場合は、確定申告の際に、寄付した自治体から届く「寄付金受領証明書」を添付します。
サラリーマンに関しても、年末調整はされませんから、基本的に確定申告が必要です。ただし、寄付自治体が5つ以内であれば、「ワンストップ特例制度」を使って、確定申告なしに寄付を行うことができます。寄付自治体から送られてくる「寄附金税額控除に係る申告特例申請書」を返送すれば、OK。ただし、医療費控除や住宅ローン控除初年度分などの確定申告を行う場合には、この特例は使えません。「ふるさと納税」についても、確定申告が必要になります。
仕事関連の経費を多く使っているサラリーマン
資格取得やスキルアップなど、仕事のための研修に支出した、仕事に使うスーツやカバン、靴などにお金がかかっている。こんな場合には、「特定支出控除」を受けられるかもしれません。そうした経費が、給与所得控除額(給与に応じて控除される「サラリーマンの必要経費」)の半分以上だった場合、確定申告によって、その超えた分の金額を所得金額から差し引ける=所得税が軽減できるのです。申告の際には、会社からの証明書、経費の金額を証明できる書類が必要になります。
年の途中で会社を辞めた
会社を辞めて、他社に再就職した場合には、基本的に確定申告は必要ありません。前の会社が発行した源泉徴収票を今の会社に提出すれば、併せて年末調整してくれるからです。ただし、再就職までの期間に、公的保険や年金の保険料を自腹で支払っていた場合には、確定申告すれば、控除の対象になります。領収書などは、忘れずに保管しておきましょう。
会社を辞めたあと再就職していない場合には、確定申告が必要です。退社したことにより、本来年末調整で還付されるはずだった「払い過ぎの税金」は、取られたままになってしまいますが、確定申告を行えば、その分を取り戻すことができるのです。この場合も、やめた会社からもらう源泉徴収票を基に、申告書を作成します。なお、失業中に受け取る「失業給付金」は非課税なので、申告は不要です。
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年末調整で、控除の書類を出し忘れた!
その場合にも、出し忘れた書類のみ添付したうえで確定申告すれば、控除を受けることができます。
まとめ
確定申告に必要になる書類は、申告内容によってさまざま。間際になって慌てないように、準備はお早めに。