会社が本人に代わって所得税などを納税(源泉徴収・年末調整)してくれるサラリーマンと違い、個人事業主は、毎年自ら確定申告を行い、税を納めなくてはなりません。申告の際には、所得や税額などを漏れなく記載した「確定申告書」が必要になります。その書き方のポイントを、みていくことにしましょう。
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個人事業主が使うのは「確定申告書B」
確定申告書には、「A」と「B」の2種類があります。「確定申告書A」は、主としてサラリーマンが、会社の年末調整では対応してもらえない医療費控除などを受ける場合に、税務所に提出します。毎年確定申告を行う個人事業主、フリーランスの方が使うのは、「確定申告書B」のほう。なお、サラリーマンの方でも、副業で20万円以上の事業所得がある場合などには、こちらで申告を行うことが必要です。
個人事業主の確定申告には、「青色申告」と「白色申告」がありますが、どちらの場合でも、「確定申告書B」を使います。前者では「青色申告決算書」、後者の場合は「収支内訳書」を併せて作成し、その他控除に必要な書類などを添付して、提出します。
申告書B「第一表」の書き方
申告書は、「第一表」「第二表」でワンセットになっています。「第一表」では、収入(売上額)、所得(売上から経費などを差し引いた額)、各種の控除(所得から差し引くことができる額)を記入し、さらに所得税の金額を計算して記入します。順を追ってみていきましょう。
(1)収入金額等
該当する項目に、1年間の収入を記入します。個人事業主、フリーランスの多くは、㋐「事業/営業等」のみの記載になるでしょう。
(2)所得金額
収入㋐から、仕入などの「売上原価」、事業のために支出した「必要経費」を除きます。青色申告の場合には、さらに「青色申告特別控除額」(「その他」の51、最大65万円)も、ここで差し引くことができます。
上記(1)で㋐のみの記入だった方は、ここでも①だけでOK。他に収入があった場合には、それぞれに対応する所得を記入し、「合計」を⑨に記入します。
ところで、経費の記載欄は、申告書にはありません。これは、添付する「青色申告決算書」(青色申告の場合)の1ページ目に、項目ごとに記載することになっています。この決算書を作成すれば、「収入から経費などを引き、さらに青色申告特別控除額を差し引いて所得を求める」という流れがわかりやすいでしょう。決算書の「所得金額」㊺を、申告書の⑨に記入すればいいのです。
(3)所得から差し引かれる金額
社会保険料控除(公的年金や国民健康保険料の保険料)、生命保険料控除などの金額を、該当する項目に記入します。「ふるさと納税」をした場合には、「寄付金控除」㉔にその金額を記入します。「基礎控除」⑳は、所得に関係なく誰でも受けられるものですから、「38万円」と記載するのをお忘れなく。
(4)税金の計算
わが国では「申告納税制度」(税額を自分で計算して納税する)が採用されているため、この作業が必要になります。たくさんの項目や文字が並んでいますが、「所得税の納税額がどうやって決まるのか」を押さえていけば、そう難しい作業ではありません。
まず、所得金額⑨から、そこから差し引ける金額㉕を引きます。これが「課税される所得金額」㉖で、所得税は、これにその額に応じた税率を掛けて計算されるのです。
さらに、「税額控除」と言って、ここから直接差し引ける控除もあります。「配当控除」㉘~「住宅耐震改築特別控除など」㊲がそれで、該当する場合には、記入します。また、「災害減免法」の適用を受ける場合には、㊴に記入すれば、所得税の減免が受けられます。
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1902.htm
こうして求めた「再差引所得税額」㊵と、それに2.1%を掛けた「復興特別所得税額」㊶の合計が、実際の納税額㊷ということになるわけです。
そして、税額計算の最後の作業。個人事業主であっても、原則として所得税が取引先で源泉徴収されていますから、その金額を㊹に記入します。㊷を㊹の金額と比較して、黒字(実際の納税額が、源泉徴収額を上回った)の場合には、その金額を㊼に、赤字だったら㊽に記入します。㊽は、「源泉徴収で所得税を取られ過ぎていた」ことを意味しますから、申告後にその分が還付される(戻ってくる)ことになります。
(5)その他
項目に従って、該当するものがある場合には、記入しましょう。「青色申告特別控除額」は、51に記載します。
申告書「第二表」の書き方
(1)所得の内訳など
「所得の種類」(例えば「営業等所得」)、「支払者」の情報、「収入金額」、「源泉徴収税額」を、支払者から発行された「支払調書」などを基に記入します。
また、「雑所得」など、事業以外に該当する所得があった場合には、支払者の会社名や、収入金額、その収入を得るために支出した経費などを記入します。
(2)所得から差し引かれる金額に関する事項
「第一表」に記載したものを、さらに具体的に記入します。控除金額ではなく、「実際に支払った金額」を記載する点には、注意してください。
(3)事業専従者に関する事項
「事業専従者」とは、配偶者などの親族で、従業員になっている人を指します。1人で事業を営んでいる場合には、記入は不要です。
(4)住民税・事業税に関する事項
該当する項目があれば、記入します。「ふるさと納税」をした場合には、住民税の「寄附金税額控除」の「都道府県、市町村分」の欄に、金額を記入します。
確定申告書Aの書き方とポイントを押さえて、正しい確定申告をしよう!
まとめ
いかがでしょうか。確定申告書の作成は決してラクラクというわけにはいきませんが、所得の内訳や、経費の使い方を再認識できる機会でもあります。税金の仕組みを知ることで、節税意識が高まることも期待できます。
ただし、事業規模が大きくなれば、「そもそも、これは経費で落ちるのか?」といった疑問も増えるはず。税理士などプロのサポートも活用して、「有効な節税」「正しい納税」に心がけましょう。