保険金の満期振込が請求なしに? 保険の手続きと税金について | MONEYIZM
 

保険金の満期振込が請求なしに?
保険の手続きと税金について

大同生命が2021年7月から、請求なしで保険金の満期振込を決めたことがニュースになりました。保険にはさまざまな種類があり、また満期保険金の手続きについても、何度も手続きするものでないため、そもそも保険の手続きを知らないという人も多いでしょう。
そこで、ここでは保険の各種手続きや税金について解説します。

大同生命が請求なしで満期保険金の振込を開始

保険の手続きと税金について見ていく前に、大同生命が請求なしで満期保険金の振込を開始したニュースについて見ていきましょう。

まず初めに知っておきたい生命保険の種類

ひとことで生命保険といっても、大きく分けて「死亡保険」「医療保険(疾病保険)」「介護保険」「死亡保障付き生存保険」の4つがあります。それぞれについて内容を見ていきましょう。

・死亡保険

死亡保険とは、被保険者が死亡したとき、もしくは高度障害状態になったときに保険金を受け取ることができる生命保険です。定期保険や終身保険、収入保障保険などが死亡保険に相当します。死亡保険は満期保険金がないものが多いです。

・医療保険(疾病保険)

医療保険とは、被保険者が特定の病気やケガをしたときに、保険金を受け取ることができる生命保険です。定期医療保険や終身医療保険、ガン保険などが医療保険(疾病保険)に相当します。医療保険には満期時に保険金があるものとないものがあります。

・介護保険

介護保険とは、被保険者に介護が必要となったときに保険金を受け取ることができる生命保険です。要支援、要介護といった介護保険法で定められている区分などの基準に応じて、保険金が支払われるものが多いです。

・死亡保障付き生存保険

死亡保障付き生存保険とは、被保険者が保険期間中に亡くなった場合、もしくは保険期間満了時(生存)に保険金が受け取れる生命保険です。学資保険や個人年金保険、養老保険などが死亡保障付き生存保険に相当します。

大同生命が請求なしで保険の振込へ

2021年7月から、大同生命が請求なしで保険金を振り込むことを決めました。請求なしで振り込むことを決めた保険金とは、満期保険金のことです。

 

通常、被保険者が満期保険金を受け取る場合には、被保険者が自ら保険会社に受け取りの申請をしなければなりません。もちろん、生命保険満期のお知らせなどが届きますが、申請し忘れがおこることもありました。

 

大同生命では、7月以降は生命保険満期のお知らせを送る一方で、請求書の返送などは求めず、満期になれば指定口座に保険金を振り込みます。このことで、申請し忘れを防いだり、被保険者の請求書作成などの負担も軽減できたりします。他の保険会社もこの動きに追随する可能性があります。

そのほかの代表的な保険の手続き

保険の手続きは、満期保険金を受け取る以外にもさまざまなものがあります。基本的には、どの手続きにおいても、契約者などから請求が必要です。代表的なものについて、一般的な手続きを見ていきましょう。

・生命保険への加入

生命保険の加入の一般的な流れは、次のようになります。

  • (1)保険会社に連絡を入れ、ご契約のしおり(定款・約款)を入手する
  • (2)ご契約のしおりをよく読み、見積りを確認する
  • (3)申込書を作成、提出する
  • (4)医師の診察・告知を行う(必要な場合)
  • (5)保険会社で審査
  • (6)保険料の払込
  • (7)契約の成立
・保険の支給(入院や死亡)

保険の支給を受けるためには、被保険者や受取人などから請求をする必要があります。これは、入院の場合であっても、死亡の場合であっても同じです。保険の支給の手続きは、次のようになります。

  • (1)保険会社に連絡を入れ、申請書を入手する
  • (2)申請書を作成、提出する
  • (3)保険会社で審査
  • (4)契約者の口座に保険金の振込
・契約内容の変更(支払方法の変更や住所等の変更)

契約内容の変更についても、契約者から保険会社に連絡を入れ、申請書を入手して提出することで、手続きが完了します。住所や電話番号の変更など一部の変更については、保険会社によって連絡のみで変更手続きが完了する場合もあります。

 

生命保険の手続きは、加入する保険の種類や保険会社によって、保険会社の担当者と直接やり取りするケースもあれば、ネットで完結する場合もあります。ネット保険会社の場合は、ネットで完結することが多いです。

生命保険と税金の関係とは

ここまでは、生命保険料の種類や手続きについて見てきました。ここからは、生命保険と税金の関係について見ていきます。

 

生命保険は、保険料を支払った場合と保険金を受け取った場合のそれぞれで税金に影響を与えます。それぞれについて見ていきましょう。

保険料を支払ったら生命保険料控除がうけられる

生命保険料を支払った場合は、年間支払額に応じて一定額の生命保険料控除を受けられます。

 

所得税は、所得金額から所得控除を差し引いた金額に税率を乗じて、税額を計算します。

 

所得税額=(所得金額-所得控除)×所得税率

 

生命保険料控除は、所得金額から一定額を差し引くことができる所得控除のひとつです。生命保険料控除では税法上、平成24年1月1日以後に締結した保険について、一般的な生命保険(新生命保険料)、介護医療保険料、新個人年金保険料の3つに分け、それぞれ次の計算式に当てはめて、控除額を計算します。

 

【新生命保険料、介護医療保険料、新個人年金保険料の控除】

1年間の生命保険料支払額 生命保険料控除額
20,000円以下 支払保険料等の全額
20,000円超40,000円以下 支払保険料等×1/2+10,000円
40,000円超80,000円以下 支払保険料等×1/4+20,000円
80,000円超 一律40,000円

 

例えば、新生命保険料を年間10万円、新個人年金保険料を年間8万円支払っている場合は、どちらも上の表に当てはめると4万円の控除を受けることができるため、生命保険料控除の金額は4万円+4万円=8万円の生命保険料控除を受けられます。

 

※平成23年12月31日以前に締結した保険契約等については、別の計算式があります。

 

加入している保険が新生命保険料、介護医療保険料、新個人年金保険料のどの保険料にあてはまるか分からない場合は、毎年年末までに届く、生命保険料の控除証明書に記載されているのでチェックしましょう。控除証明書に記載されていない場合は、加入している生命保険会社に問い合わせしましょう。

保険金を受け取った場合の税金

生命保険料を支払った場合は、税金について控除を受けられますが、逆に保険金を受け取った場合は、税金が課されます。しかし、死亡保険金か満期保険金か、保険料の支払者や受取人が誰かなどで、課税関係が異なります。

 

  • 被保険者・支払者・受取人が同じ場合は、その人の一時所得(所得税)になります。
  • 被保険者・支払者と受取人が異なる場合は、満期保険金の場合は受取人に贈与税が、死亡保険金の場合は受取人に相続税が課されます。
  • 被保険者と受取人が同じだが、保険料の支払者が別の場合は、死亡保険金について相続税が課されます。
  • 被保険者と支払者・受取人が異なる場合は、満期保険金、死亡保険金の違いにかかわらず、受取人の一時所得(所得税)になります。

 

これらの課税関係をまとめると、次の表のようになります。

 

被保険者 支払者 受取人 保険事故等 課税関係
満期 夫の一時所得(所得税)
満期 妻に贈与税
夫の死亡 妻に相続税
妻(契約者) 夫の死亡 妻に相続税(生命保険契約に関する権利)
満期 夫の一時所得(所得税)
妻の死亡

 

保険金の課税関係は複雑のため、間違わないようにしましょう。

まとめ

生命保険についての手続きや、税金との関係は複雑です。特に、生命保険についての手続きについては、大同生命が請求なしで満期保険金の振込を開始するなど、これからも手続きが変更していく可能性があります。

 

生命保険の手続きをする場合は、保険会社のホームページなどで、手続き内容をしっかりと確認するようにしましょう。

長谷川よう
会計事務所に約14年、会計ソフトメーカーに約4年勤務。個人事業主から法人まで多くのお客さまに接することで得た知見をもとに、記事を読んでくださる方が抱えておられるお困りごとや知っておくべき知識について、なるべく平易な表現でお伝えします。
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