コロナ禍によるパンデミックは日本経済にもリーマンショックを超える規模の打撃を与えています。このような経済が不安定な時に価値が上がるのが「安定資産」と呼ばれる純金です。この記事では純金を使ったさまざまな資産運用のうち、「純金積立」にスポットをあて、詳しく説明します。
そもそも純金積立って何?
純金(以下単に「金」)の価格は2000年頃の底値を経た後、ここ10年ほどグラム当たり4,000円台で推移してきましたが、特にこの2年ほど上昇傾向にあり、2021年5月の時点でグラム当たり6,500円ほどになっています。「有事の金」と呼ばれるように、金が世の中が不安定な時に価値が上がることを表していると言えるでしょう。
純金積立は、そのもの自体に価値がある実物資産である金を月々継続して定額を支払うことで購入する投資法となります。
毎月定期的に「金」を購入する
毎月一定額を取引機関に支払うこと、すなわち「積立」で金という資産を自分のものにするので「純金積立」と呼ばれます。
金というと金の延べ板などのいわゆる地金(インゴット)を思い浮かべる人が多いでしょう。キロ当たり数百万円かかるのでとても一度には買えないイメージがあるかもしれません。しかし、純金積立は月々1,000円からでも購入が可能です。このような購入方法を「定額積立」といいます。
また、月々2グラムずつといった数量を決めて購入する「定量積立」もあります。自分の予算に応じて気軽に始められる資産運用なのです。
積立を始めるには純金積立を扱っている機関で、純金積立用の口座を開設する必要があります。扱っているのは主に専門の地金商(「○○マテリアル」という社名など)や証券会社ですが、銀行でも取り扱いがあります。
これらの取扱機関では、同じ額で購入できる金のグラム数や手数料の有無などに違いがあります。取扱機関を決めるにはグラム数が多い、あるいは手数料が安いなどだけの損得だけでなく総合的に判断することが大切です。
購入した金は現物受取や売却ができる
金は継続購入をしていくことで確実に自分の財産として増えていきますが、それはあくまで口座の中で数字として表れるだけであり、そのままでは通常の預貯金と変わりません。純金積立は将来的にどう活用するかによって、投資としての側面が強くなるのです。
純金積立の将来的な活用方法としては次の3つがあります。
- 現物受取
- 交換
- 売却
ある程度まとまったら地金として受け取るのが現物受取です。インゴットには50g~1㎏まで4つの種類があり、他にもペンダント用として1~20gのものも用意されています。取扱機関によっては1gからの現物受取にも対応しています。
交換とは、各取扱機関が扱っている金貨や、他の貴金属(プラチナなど)で受け取ることです。
売却は金を実際に手に取ることなく取扱機関を通じて売り、売却益を受け取る方法です。これまでの投資額より売却額が上がれば利益を得られるので投資としての側面が大きい運用法といえます。
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純金積立のメリット・デメリット
実質資産である金を積立運用する際の主なメリット・デメリットを見ておきましょう。
純金積立のメリットについて
①予算や家計に応じた計画的な積立ができる
先述のように、毎月1,000円からの自動積立が可能な機関が多いので、無理のない範囲で計画的な積立が行えます。もちろん途中で額やグラム数を増減させることもできますし、金価格が下がった時を狙ってスポットでの買い足しが可能な機関もあります。
②盗難リスクがない
自身が購入している金の現物は取扱機関が管理しているので、保管場所の手間が要らず安心です。
③安定している
金は比較的インフレなどの影響を受けにくい資産です。なんといっても実物資産なので紙上での資産と違い、無価値になることがありません。さらに「ドルコスト平均法」という、月々購入することで金価格の上下による影響を受けにくい投資手法をとっているため安定が期待できるのです。
純金積立のデメリットについて
①手数料が意外とかかる
純金積立は購入時や売却時に手数料がかかります。購入時手数料は1.5~2.5%、売却手数料は無料で現物引出は有料のところが多いようです。また、取扱機関によっては別途年会費が1,000円程度かかる場合があります。
②損失リスクがある
金は価格安定している資産ですが、高騰後に買うなどタイミングによっては売却時に損をする可能性があります。また、自身の金の保管を「消費寄託」という、保管機関に運用を任せ、収益の一部を受け取る方法にしていると、万一保管機関が破綻した場合に全額保証がなされない可能性があります。
「特定保管」という方法では単純に機関で預かっているだけで金の所有権は積立者にあるので、万一の時にも安心です。
取扱機関の純金積立が通常どちらの保管方法をとっているのか契約時に確認し、より自身に合うであろう方法を選択しましょう。
③リアルタイム価格の取引はできない
株式と違い、その日取扱機関が発表している小売価格でしか購入することができません。
節税は可能?純金積立にかかる税金
純金積立は売却時利益は「所得」として、相続の場合は財産として課税の対象となります。特に所得の場合計算法がやや特殊ですので注意してください。
売却時にかかる税金
純金積立中は固定資産税などは不要です。しかし、売却時の譲渡利益には税金がかかるため、他の所得と合算して確定申告をすることになります。一般の個人として売却する際には譲渡所得とされるのが原則ですが、月々の積立額や売買の状況から雑所得とされる可能性もあります。
また、積立であっても「地金の売却」とされ、金地金譲渡の課税方法が適用されることにご注意ください。すなわち、所有期間が5年以内(短期)と5年超(長期)で課税所得の計算式が変わってくるのです。
短期の場合課税所得の計算式は
ですが、
長期の場合だと
となります。
例えば15年間に渡って定額純金積立をしており、1/3のみ売却する場合、所有期間は先に取得したものから計算するため、最初の5年分の売却=長期所有での計算となり、課税所得を安くすることが可能です。
なお、「売却時」にかかる税金ではありませんが、純金の売買には10%の消費税がかかります。積立時(購入時)に消費税をプラスした額を支払い、売却時には消費税分が上乗せされた額を得るという形になります。
生前贈与することができる
純金積立は投資の一種として資産価値がある限り当然相続税の対象になりますが、他の財産と同じように、生前贈与することで贈与税の基礎控除の範囲内であれば課税されないという節税対策をとることができます。
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純金積立以外の「金」に関する投資
金関連のその他の投資方法について、簡単に紹介します。
金関連の投資信託
投資信託のうち、金に関する金融商品や、金現物に対して投資するものです。自身が金を購入する純金積立と違い、投資信託では現物を受け取ることはできません。新たに口座を開設して始める方法と、既に保有している投資信託の何割かを金関連のものに置き換える方法があります。
年会費はかからず、金融機関によっては売買手数料がかからない場合もありますが、一方で信託報酬が必要です。証券取引所に上場している「金ETF(上場投資信託)」と呼ばれる種類もあります。
金の先物取引
商品を特定の日に取引時に決められた価格で売買することを約する「先物取引」のうち、金を商品とするものです。少ない資金で高額の取引ができるのが魅力ですが、失敗すると損害も高額となります。ハイリスクハイリターン型投資の典型といえます。
まとめ
純金積立は、金が決して無価値にならないことを前提に、価格の上下に左右されず長期的に続けることで資産を増やす運用方法です。ある程度購入時期を見極める必要はありますが、少額から始められます。気長に気楽に資産運用をしてみたい方は検討してみてはいかがでしょうか。