新聞やニュースなどで、消費者物価指数という言葉を目にしたことがある人は多いでしょう。ここ最近、消費者物価指数が連続して下落していますが、消費者物価指数が私たちにどのような影響を与えるのでしょうか。また、そもそも消費者物価指数とはどのようなものなのでしょうか。
この記事では、消費者物価指数について解説します。
消費者物価指数 が12か月連続で下落に
総務省が公表した7月の消費者物価指数は、去年の同じ月と比べて下落しました。これにより、消費者物価指数は12か月連続で下落したことになります。はじめに、このニュースから見ていきましょう。
消費者物価指数は、モノやサービスの値動きをみるために重要です。7月の消費者物価指数を確認すると、生鮮食品を除いた(天候の変動が大きいため指数を見る場合は除外される)指数が去年の同じ月を0.2%下回っていました。この結果、消費者物価指数が12か月連続で下落したことになります。
消費者物価指数には、さまざまなモノやサービスに対するものがありますが、今回の下落に大きな影響を与えたのが、携帯電話の通信料です。携帯電話の料金が高いといった指摘を受け、携帯各社は相次いで料金の格安プランを打ち出しました。そのため、携帯電話の通信料が去年の同じ月よりも39.6%も下がっており、そのことが消費者物価指数の下落につながっています。
一方で、消費者物価が上昇しているものもあります。代表的なものが、灯油やガソリンです。原油価格の上昇を受け、灯油では25.2%、ガソリンでは19.6%の値上がりをしています。携帯電話の通信料の下落と灯油やガソリンの上昇が相殺され、結果として7月の消費者物価指数は、前年同月比で0.2%の下落となりました。
そもそも消費者物価指数とは
ここまでは、消費者物価指数が12か月連続で下落したニュースを見てきました。それでは、そもそも消費者物価指数とはどのようなものなのでしょうか。ここでは、消費者物価指数の概要について見ていきましょう。
消費者物価指数とは、英語表記を「CPI(Consumer Price Index)」といい、モノやサービスの値動きをみるための指標です。モノやサービスの値段の水準を示す指数となっています。消費者物価指数を求めることで、消費者の手にわたるときのさまざまなモノやサービスの値段を、総合的な水準として把握することができます。
毎月、消費者物価指数を発表しているのは総務省です。また、調査対象となる品目は原則、5年ごとに見直しがされます。そもそも、消費者物価指数は、戦後すぐの1946年から始まっています。当初の消費者物価指数は、戦後の混乱期の物価上昇を把握するために測定されていました。
2020年現在、消費者物価指数の対象となっている品目は、582品目 にも上っています。これは、さまざまなモノやサービスの中から、家計の中で重要度が高いもの、継続調査が可能なもの、価格変動をとらえるうえで代表的なものが選ばれています。
一方、寄付金、贈与金、直接税や社会保険料、有価証券や土地・建物の購入などは、家計の消費支出とはいえないため、消費者物価指数の対象からはずれています。
それでは、発表される消費者物価指数のデータからは、何がわかるのでしょうか。これは、基準時と比較時を比べて、同じモノやサービスを購入するのに、どれだけの支出が必要なのかがわかるようになっています。
報道される消費者物価指数は基本、前年同月が対象となるため、前年と今年の同じ月を比べ、同じモノやサービスを購入するのにどのような影響がでるのかがわかります。消費者物価指数は、対象月を100として比較時の指数を計算します。
例えば、比較した月(今月)の指数が105であった場合は、前年同月と比べて105%の支出をしないと、同じモノが購入できないことになります。つまり、5%物価が上昇していることになります。
逆に、比較した月(今月)の指数が90であった場合は、前年同月と比べて90%の支出で、同じモノが購入できることになります。つまり、10%物価が下落していることになります。7月現在では、消費者物価指数 が12か月連続で下落しているため、1年間ずっと、総合的に見た物価が下落していることになります。
消費者物価指数が与える影響とは
消費者物価指数とは、モノやサービスの値動きをみるための指標です。実際に、消費者物価指数の動きが、私たちのくらしにどのように影響するのかを見ていきましょう。
消費者物価指数は、あくまで結果です。例えば、前月分と前年同月分を比べて、物価が上昇したのか、または下落したのかを指数として把握します。そのため、消費者物価指数の数値がどうであったのかによって、ただちに私たちのくらしに影響を与えることはありません。
ただし、長期的にみると、消費者物価指数の動向が私たちのくらしに影響を与えることもあります。消費者物価指数が与える影響は、主に金利や経済対策についてです。実は、消費者物価指数が上がると、金利上昇につながる可能性があります。それは、物価と金利が密接に関係しているためです。
例えば、物価が上昇し続けるということは、以前と同じお金で同じ商品を購入できないことになります。つまり、物価の上昇はお金の価値が下がっていることを意味します。
お金の価値が下がり続けると、政府や金融機関はお金の流れを抑制し、お金の価値を上げようとします。その際に使われるのが金利の上昇です。金利が上昇すると、金融機関からの融資を受ける人や企業が少なくなります。結果、お金の流れが抑制され、お金の価値が上がります。
逆に、消費者物価指数が下落すると、金利を下げ、お金の流れを活発にします。金利は住宅ローンなどを借りる場合などに、私たちに影響を与えるため、消費者物価指数も長い目で見れば、私たちのくらしに影響を与えます。
また、短期的や長期的に消費者物価指数に大幅な動きがあれば、経済に大きな影響を与える可能性があるため、金融や経済政策が取られる可能性もあります。
もうひとつ、消費者物価指数が私たちのくらしに影響を与えるのが、投資をしている場合です。株式やFXなどの投資をしている場合は、消費者物価指数の変動により、影響を受ける可能性があります。
例えば、ひとつの品目の消費者物価指数に短期的に大幅な動きがあれば、その業界に大きな変動(業界全体の業績不振など)が起きている可能性があります。そうなると、その業界の会社の株価が大きく値上がりもしくは値下がりする可能性がでてきます。
また、金利政策がとられると、FXなどの投資商品の動きに影響を与えます。特に、金融や経済政策に動きがあれば、中長期的に投資商品の値動きに影響を与える可能性があり、投資商品による資産形成を考えている場合は、その資産形成のプランが大きく変更される可能性もでてきます。
まとめ
総務省が公表した7月の消費者物価指数は、去年の同じ月と比べて下落し、このことで12か月連続で消費者物価指数が下落したことになります。消費者物価指数は、モノやサービスの値動きをみるための指標で、基準時と比較時を比べて、同じモノやサービスを購入するのに、どれだけの支出が必要なのかがわかります。
消費者物価指数の動きが、今すぐに私たちのくらしに影響を与えることは少ないですが、中長期的に、大きな値動きがあった場合は、金融や経済の政策が変更される可能性もあります。そのため、これからも消費者物価指数の動きには、注視しておく必要があるでしょう。