タイトルは「雇用保険の教育訓練給付金、職業訓練受講給付金」としていますが、これらの給付金は雇用保険の被保険者だけを対象としていません。
支給要件はいろいろと定められているものの、支給対象となっている講座は、実に多彩です。
この記事では、雇用保険の教育訓練給付金、職業訓練受講給付金について解説します。
教育訓練給付金とはどのようなものか
教育訓練給付制度について
教育訓練給付制度とは、雇用保険の給付制度のひとつであり、働く人たちの主体的な学習をサポートするためのものです。
一定の支給要件を満たす人が、厚生労働大臣が指定する教育訓練を受講し、修了した際、その受講費用の一部が「教育訓練給付金」として支給されます。
「教育訓練給付金」の対象となる教育訓練には、以下の3種類があります。
ちなみに、いずれの教育訓練についても、「教育訓練給付金」が4千円を超えない時は支給されませんので、ご注意ください。
●専門実践教育訓練
- 特に、労働者の中長期的なキャリア形成を目的とする教育訓練
- 教育訓練の受講中6か月ごとに、受講費用の50パーセント(年間の上限額は40万円)を支給
- 資格取得などをし、さらに訓練修了から1年以内に雇用保険の被保険者として雇用された時は、受講費用の20パーセント(年間の上限額は16万円)を追加支給
●特定一般教育訓練
- 特に、労働者の迅速な再就職、及び、早期のキャリア形成を目的とする教育訓練
- 教育訓練の修了後、受講費用の40パーセント(上限額は20万円)を支給
●一般教育訓練
- 雇用の安定、及び、就職の促進を目的とする教育訓練
- 教育訓練の修了後、受講費用の20パーセント(上限額は10万円)を支給
教育訓練給付金を受給するための手続きについて
「教育訓練給付金」を受給するには、教育訓練を受講した人が自ら申請手続きを行わなくてはなりません。
原則として、自分の住所地を管轄するハローワークに必要な書類を提出し、申請します。
それぞれの教育訓練について、簡単にまとめました。
●専門実践教育訓練・特定一般教育訓練
受講開始前に、訓練対応キャリアコンサルタントが行う訓練前キャリアコンサルティングで、「ジョブ・カード」の交付を受ける。
受講開始日の1か月前までに、「教育訓練給付金及び教育訓練支援給付金受給資格確認票」「ジョブ・カード」などの必要書類をハローワークに提出する。
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教育訓練の受講中、及び修了後に、「教育訓練給付金支給申請書」「領収書」などの必要書類をハローワークに提出し、「教育訓練給付金」の支給を申請する。
●一般教育訓練
教育訓練の修了後、「教育訓練給付金支給申請書」「領収書」などの必要書類をハローワークに提出し、「教育訓練給付金」の支給を申請する。
いずれの申請手続きにおいても、「受講修了日の翌日から起算して1か月以内」など、支給申請期間が定められています。
この期間内に、申請に必要な書類を揃えてハローワークに提出しなければ、「教育訓練給付金」を受給することはできません。
職業訓練受講給付金とはどのようなものか
職業訓練受講給付金(求職者支援制度)について
「職業訓練受講給付金(求職者支援制度)」とは、求職者がハローワークの支援指示に基づいて職業訓練を受講する際、生活支援のための給付金が支給される制度です。
「訓練受講手当」「通所手当」「寄宿手当」をまとめて、「職業訓練受講給付金」と呼びます。職業訓練を受講しているあいだ、1か月ごとに支給されます。
それぞれの手当の支給金額は、下記のとおりです。
- 訓練受講手当:月額10万円
- 通所手当:職業訓練の実施施設へ通うためにかかる費用(月間の上限額は42,500円)
- 寄宿手当:月額10,700円
職業訓練を受けるために寄宿する必要があると、ハローワークが認めた場合に限って支給されます。
「職業訓練受講給付金」を受給するには、以下の7つの要件をすべて満たしていなくてはいけません。
- 本人の月収が8万円以下
コロナによる特例措置として、シフト制で働く人などは、月収12万円以下(固定収入は8万円以下)に要件が緩和されています。2021年9月30日までの時限措置ですが、2022年3月31日まで延長予定です。 - 世帯全体の月収が25万円以下
- 世帯全体の金融資産が300万円以下
- 現在住んでいるところ以外に、所有している土地・建物がない
- すべての訓練実施日に出席している
- 同じ世帯のなかに、同時に「職業訓練受講給付金」を受給して、職業訓練を受けている人がいない
- 過去3年以内に、偽り、その他不正の行為により、特定の給付金の支給を受けたことがない
職業訓練受講給付金を受給するための手続きについて
「職業訓練受講給付金」を受給するためには、まず、ハローワークで求職の申し込みをしなくてはいけません。
以下に、「職業訓練受講給付金」を受給するための手続きについて、簡単にまとめました。
ハローワークで求職の申し込みをする。
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ハローワークで職業訓練受講の申し込みをすると共に、「職業訓練受講給付金」の事前審査を申請する。
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職業訓練の受講申込書を訓練を実施する機関に提出し、選考を受ける。
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合格通知が届いたら、職業訓練開始日の前日までに、ハローワークで職業訓練を受けるための支援指示を受ける。
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職業訓練の受講中、及び修了後3か月のあいだ、原則として月1回、指定された日にハローワークへ行き、職業相談を受け、「職業訓練受講給付金」の支給を申請する。
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事前審査には、申請者本人だけでなく、同居配偶者などの収入を証明する書類が必要となります。
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「源泉徴収票」や市区町村が交付する「所得証明書」、さらに、残高が50万円以上ある預貯金通帳や直近1か月以内に交付された「残高証明」も添付しなくてはいけません。
また、直近3か月以内に交付された「住民票謄本の写し」も必要です。
マイナンバーも記載しなくてはいけませんので、「マイナンバーカード」「通知カード」「個人番号の記載のある住民票(住民票記載事項証明書)」のうち、いずれか一点が必須です。
教育訓練給付金・職業訓練受講給付金の不支給・不正受給とは
教育訓練給付金の不支給・不正受給について
前述したとおり、「教育訓練給付金」は厚生労働大臣指定の教育訓練を修了した際に支給されるものです。
そのため、教育訓練を途中で辞めてしまった時は、「教育訓練給付金」の申請自体できませんので、当然のことながら受給もできません。
「教育訓練給付金」を、偽りなどの不正行為によって受給した、あるいは、受給しようとした時は、「教育訓練給付金」を返還しなくてはなりません。
偽りなどの不正行為とは、たとえば以下のようなものです。
- 他人名義で「教育訓練給付金」の支給を申請する
- 教育訓練の受講に関して、虚偽の届出をする
- 教育訓練の受講費用を水増しする
また、不正な行為を行いつつ、「教育訓練給付金」の申請に関するハローワークの調査や質問に対して偽りを述べると、罰則の対象となる時もあります。
さらに、返還した「教育訓練給付金」の2倍の金額を納めることを命じられる可能性もありますし、詐欺罪で刑罰に処せられるおそれもあります。
職業訓練受講給付金の不支給・不正受給について
前述したとおり、「職業訓練受講給付金」は1か月ごとに支給されます。
そのため、受給の要件を満たさない時は、その支給単位期間について「職業訓練受講給付金」は不支給となります。
不支給となるのは、たとえば以下のような場合です。
- やむを得ない理由もなしに、職業訓練を欠席(遅刻・欠課・早退)した
- やむを得ない理由があっても、職業訓練の出席率が8割未満
- やむを得ない、もしくは正当な理由もなしに、ハローワークの就職支援を拒否した
- 職業訓練の実施施設から、退校処分を受けた
やむを得ない理由による欠席(遅刻・欠課・早退)であって、実施日の訓練を2分の1以上受講した場合は、1/2 日出席として扱います。
「職業訓練受講給付金」についても、「教育訓練給付金」と同じように、不正行為によって受給した給付金は返還しなくてはなりません。
その際、すでに受給した「職業訓練受講給付金」の最大3倍の返還・納付を命じられる場合もあります。さらに、悪質であるとみなされた時は、刑事告訴を受けるおそれもあります。
まとめ
「教育訓練給付金」も「職業訓練受講給付金」も、働く人のキャリアアップやスキルアップを金銭的にサポートしてくれる、ありがたい制度です。
学ぶことに興味がある人は、まずは講座を検索してみることをおすすめします。
▼参照サイト
- https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/jinzaikaihatsu/kyouiku.html
- https://www.hellowork.mhlw.go.jp/insurance/insurance_education.html
- https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/safety_net/44.html
- https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/kyushokusha_shien/index.html#ex1
- https://www.mhlw.go.jp/content/000829146.pdf
- https://www.mhlw.go.jp/content/000556472.pdf
- https://www.mhlw.go.jp/content/000771559.pdf
- https://www.mhlw.go.jp/content/000657588.pdf