ワークライフバランスの実現が叫ばれて久しいですが、そのための支援をした事業主には「両立支援等助成金」が支給されます。
この記事では特に、「新型コロナウイルス感染症対応特例」などの、新型コロナウイルス感染症にかかわる時限措置が設けられている両立支援等助成金について、重点的に解説します。
両立支援等助成金とは何か
両立支援等助成金にはどのようなコースがあるか
「両立支援等助成金」とは、事業主に支給される「雇用関係助成金」のひとつです。
労働者が仕事と家庭を両立させられるよう、必要な支援を行った事業主に対して支給される助成金です。雇用の安定を図ることを目的としています。
両立支援等助成金はいくつかのコースに分かれており、2021年度には、以下のコースが設けられています。
- 出生時両立支援コース(子育てパパ支援助成金)
- 介護離職防止支援コース
- 育児休業等支援コース
- 女性活躍加速化コース
- 新型コロナウイルス感染症に関する母性健康管理措置による休暇取得支援コース
- 不妊治療両立支援コース
なお「介護離職防止支援コース」と「育児休業等支援コース」には、現在、「新型コロナウイルス感染症対応特例」が設けられています。
両立支援等助成金を受給するための共通要件とは
「両立支援等助成金」は、各コースごとに、さまざまな受給要件が定められています。
しかしコースにかかわらず、「両立支援等助成金」の受給には、事業主が満たしていなくてはいけない共通要件が3つあります。
- 雇用保険適用事業所の事業主である
- 助成金の支給のための審査に協力する
- 申請期間内に助成金の申請を行う
一方で、受給できない事業主の要件も決められています。いくつか挙げておきましょう。
- 2019年4月1日以降に雇用関係助成金を申請して、不正受給による不支給決定または支給決 定の取り消しを受け、その決定日または取消日から5年を経過していない
- 支給申請日の前日から起算して1年前の日から支給申請日の前日までの間に、労働関係法令の違反がある
また、コースによっては、中小企業事業主のみを対象としているものもあります。中小企業とは、下記の範囲の企業を指します。
- 小売業:資本額または出資額が5千万円以下、または常時雇用する労働者が50人以下
- サービス業:資本額または出資額が5千万円以下、または常時雇用する労働者が100人以下
- 卸売業:資本額または出資額が1億円以下、または常時雇用する労働者が100人以下
- その他:資本額または出資額が3億円以下、または常時雇用する労働者が300人以下
母性健康管理措置による休暇取得支援コースについて
母性健康管理措置による休暇取得支援コースとはどのようなものか
「新型コロナウイルス感染症に関する母性健康管理措置による休暇取得支援コース」は、対象期間が2022年1月31日までです。
2021年度のコースとしてご紹介しましたが、2021年度の途中で終了しますので、まず、この点にご留意ください。申請の期限も、2022年2月28日までとなっています。
このコースは、妊娠中の女性労働者のみを対象としており、以下の要件を満たした事業主に支給されます。
- 新型コロナウイルス感染症に関する母性健康管理措置として、医師や助産師の指導により休業が必要な妊娠中の女性労働者が取得できる有給休暇制度を作る
- その有給休暇制度について、新型コロナウイルス感染症に関する母性健康管理措置の内容と併せて、社内に周知する
- その有給休暇を合計 20日以上、女性労働者が取得する
新型コロナウイルス感染症に関する母性健康管理措置とは
「新型コロナウイルス感染症に関する母性健康管理措置」とは、新型コロナウイルス感染症に関する医師や助産師の指導に基づいて、妊娠中の女性労働者に対して事業主が必要な措置を講じることを義務づけた措置です。
「新型コロナウイルス感染症に関する母性健康管理措置」には、「母性健康管理指導事項連絡カード(母健連絡カード)」を利用します。
「母健連絡カード」は、医師などから指導を受けた際に、その指導事項を明確に伝えるために記入してもらい、事業主に提出するものです。
「新型コロナウイルス感染症に関する母性健康管理措置」は、以下のような流れで行います。
- 妊娠中の女性労働者が、保健指導や健康診査を受ける
- 医師や助産師が、新型コロナウイルス感染症に関するストレスが母体や胎児に影響を与えると判断したら、その旨を「母健連絡カード」に記入
- 妊娠中の女性労働者が「母健連絡カード」を事業主に提出
- 事業主が「母健連絡カード」に基づいて、必要な措置を講じる
介護離職防止支援コースについて
介護離職防止支援コースとはどのようなものか
「介護離職防止支援コース」では、下記のようなときに、事業主に助成金が支給されます。
ただし、このコースは中小企業事業主のみを対象としています。
- 「介護支援プラン」を作り、介護休業を取得したとき
- 介護休業から職場復帰したとき
- 「介護支援プラン」を作り、介護両立支援制度(介護のための短時間勤務制度や介護休暇制度など)を利用したとき
「介護支援プラン」とは、労働者がスムーズに介護休業を取得または復帰できるよう、事業主が労働者ごとに作成する実施計画を言います。
介護離職防止支援コースの新型コロナウイルス感染症対応特例とは
前述したとおり、「介護離職防止支援コース」には「新型コロナウイルス感染症対応特例」が設けられています。「新型コロナウイルス感染症対応特例」は、対象期間が2022年3月31日までです。
新型コロナウイルス感染症に関して、労働者が家族の介護を目的とする特別な有給休暇を取得したとき、事業主に支給されます。
以下の要件を満たした事業主に支給されます。
- 新型コロナウイルス感染症に関する介護を目的とする有給休暇制度を作り、その有給休暇制度と併せて、仕事と介護の両立支援制度について社内に周知する
- 新型コロナウイルス感染症により、家族の介護のために休まざるをえない労働者が、その有給休暇を5日以上取得する
育児休業等支援コースについて
育児休業等支援コースとはどのようなものか
「育児休業等支援コース」では、下記のようなときに事業主に助成金が支給されます。ただし、これら4つに関しては、中小企業事業主のみを対象としています。
- 「育休復帰支援プラン」を作り、育児休業を取得したとき
- 育児休業から職場復帰したとき
- 代替要員を確保したとき
- 育児休業から職場復帰したあと、支援を行ったとき(保育サービス費用補助制度などを定め、育児休業復帰後の労働者が利用したとき)
「育休復帰支援プラン」とは、労働者がスムーズに育児休業を取得または復帰できるよう、事業主育児休業取得者ごとに作成する実施計画を言います。
育児休業等支援コースの新型コロナウイルス感染症対応特例とは
前述したとおり「育児休業等支援コース」にも「新型コロナウイルス感染症対応特例」が設けられています。
「新型コロナウイルス感染症対応特例」は、対象期間が2022年3月31日までです。中小企業事業主でなくても受給ができます。
新型コロナウイルス感染症に関する小学校などの臨時休業などに関して、労働者が子どもの世話を目的とする特別な有給休暇制度、および両立支援制度を利用したとき、支給されます。
以下の要件を満たした事業主に支給されます。
- 小学校などが臨時休業などをした際、子どもの世話をする必要がある労働者が取得できる有給休暇制度を作る
- その有給休暇を、労働者が4時間以上取得する
- 小学校などが臨時休業などをした際の両立支援制度(テレワーク、時差出勤など)について、社内に周知する
まとめ
新型コロナウイルス感染症との関連で、時限措置が設けられている「両立支援等助成金」を中心にご説明しましたが、対象期間は延長される場合もあります。厚生労働省のホームページなどで、最新の情報をチェックしておくことをおすすめします。
▼参照サイト
- https://www.mhlw.go.jp/content/11909000/000763821.pdf
- https://www.mhlw.go.jp/content/000806011.pdf
- https://www.mhlw.go.jp/content/000782742.pdf
- https://www.mhlw.go.jp/content/000839969.pdf
- https://www.mhlw.go.jp/content/000754580.pdf
- https://www.mhlw.go.jp/content/11909000/000763851.pdf
- https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/000627644.pdf
- https://www.mhlw.go.jp/content/000824837.pdf