fx取引は、法人でも個人事業主でも行うことができます。fx取引で利益が出ると、税金がかかることがありますが、できれば税金は安くしたいところです。そこで、法人の経営者なら法人で取引をするか個人でするか、個人事業主なら個人で取引をするか、それとも法人化するか悩むところです。
ここでは、法人と個人それぞれの税金計算方法を確認しながら、どちらでfx取引をしたほうがお得なのか解説します。
法人がfx取引を行う場合の税金計算方法
まずは、法人がfx取引を行う場合の税金計算方法について見ていきましょう。
fx取引を行う法人の税金を理解するには、そもそもの法人の税金計算の考え方やその方法を知る必要があります。
法人の税金計算の考え方とは
法人でfx取引を行う場合、fx取引を本業として行う場合と副業として行う場合があります。では、fx取引が本業の場合と副業の場合で、税金の計算は変わるのでしょうか。
結論からいうと、fx取引が本業であっても副業であっても、税金の計算は変わりません。
もちろん、納める税金の金額も変わることはありません。法人では、収入の種類によって税金の計算方法が変わることがないからです。法人の税金計算を簡単に述べると、以下のようになります。
- (1)すべての収入を合計したものから、すべての仕入や経費を合計したものを差し引いて、その年の利益を計算する
- (2)利益から、税法上経費にならないものを除いたり、逆に経費になるものを加えたりといった調整を行い、課税される所得を求める
- (3)課税される所得に、税率を乗じて、納める法人税等を算出する
法人がfx取引を行う場合の税金の計算
それでは、具体例で法人がfx取引を行う場合の、簡単な税金の計算を見てみましょう。
例)商品販売を行っている法人で、副業でfx取引もしている。本業の利益400万円、fx取引の利益が200万円 合計600万円の利益が出た。なお、本業の利益を計算する際、税法上経費にならないもの100万円が差し引かれている。税率は30%とする。
本業の利益の計算で、経費を100万円引きすぎているため、引きすぎた金額を利益に加算して、課税される所得を求めます。
法人税の金額=課税所得700万円×税率30%=210万円
個人事業主がfx取引を行う場合の税金計算方法
ここまでは、法人がfx取引を行う場合の税金計算方法を見てきました。法人の税計算は、収入の種類に関係なく、1年間の収入や費用を計算し、税金を求めます。
では、個人事業主の場合はどうなのでしょうか。ここからは、個人事業主がfx取引を行う場合の税金計算方法を見ていきましょう。
個人事業主の税金計算の考え方とは
実は、個人が支払う所得税は法人税と違い、収入の種類によって利益(所得)や税金の計算方法を変えています。これは、課税の公平性を担保するためです。
例えば、お店や工場など毎年継続して行っている事業から生じた収入と、引っ越しや転勤などで家を売却した場合に生じた収入では、収入の発生原因やその性格などが異なります。
これをすべて同じ収入として税金を計算してしまうと、収入の割りに税負担の多い人や少ない人が出てきてしまい、税の公平性が保てなくなります。そこで、収入の種類によって事業所得や給与所得といった10の所得に分類し、各所得で、税金の計算方法を定めています。
個人事業の本業は、事業所得に該当します。では、fx取引はどの所得になるのでしょうか。それは、fx取引を本業としているか、副業でしているかで異なります。fx取引を本業としている場合は「事業所得」に、副業でしている場合は「雑所得」になります。
個人事業主がfx取引を行う場合の税金の計算
では、本業が別にあり、副業でfx取引をしている場合の税金の計算について、具体例で見ていきましょう。
例)本業である事業のほかに、副業でfx取引をしている個人事業主である。本業の利益は500万円、fx取引の利益は200万円である。なお計算しやすいように、所得控除などはないものとする。
fx取引が副業である場合は、本業とfx取引それぞれで税額を計算する必要があります。
(1)本業の税金
事業所得は、利益に税率を乗じたものに一定の控除額を差し引いて税額を求めます。事業所得では、利益(所得)が高くなるほど税率も高くなる「累進課税制度」を採用しています。所得金額ごとの税率は、次のとおりです。
課税される所得金額 | 税率 | 控除額 |
---|---|---|
195万円以下 | 5% | 0円 |
195万円を超え330万円以下 | 10% | 97,500円 |
330万円を超え695万円以下 | 20% | 427,500円 |
695万円を超え900万円以下 | 23% | 636,000円 |
900万円を超え1,800万円以下 | 33% | 1,536,000円 |
1,800万円を超え4,000万円以下 | 40% | 2,796,000円 |
4,000万円超 | 45% | 4,796,000円 |
事業所得の利益は500万円であるため、上記の表にあてはめると税率は「20%-控除額427,500円」です。事業所得に対する税金は、次のようになります。
この他に、10%の個人住民税(地方税)がかかります。個人住民税の税額は、5,000,000円×10%=500,000円です。
本業の税金は、所得税572,500円+個人住民税500,000円=1,072,500円になります。
(2)fx取引の税金
fx取引は雑所得の内、「先物取引に係る雑所得等」に該当します。先物取引に係る雑所得等では、税率は一律です。事業所得のように所得金額に応じて、税率が変わることはありません。
先物取引に係る雑所得等の税率は、所得税15%、復興特別所得税0.315%、地方税5%の合計「20.315%」です。fx取引に対する税金は、次のようになります。
fx取引の税額=2,000,000円×20.315%=406,300円
(3)個人事業主の税金
本業とfx取引を合算したものが、その年に個人事業主が支払う税金の金額になります。
個人事業主の税額=本業1,072,500円+fx取引406,300円=1,478,800円
fx取引するなら法人と個人事業主のどちらがお得?
ここからは、法人と個人事業主のどちらでfx取引をしたら良いかを見ていきましょう。
(1)税金面
税金面を考えた場合、税率の違いが判断の目安となります。法人の税率は会社の規模などにより異なりますが、地方税も合わせ、一般的に30%程度です。法人税の税率と所得税の税率を比較して、どちらが有利になるのかを考えます。
- fx取引が本業の場合
所得税では、事業所得の場合は、5%~45%と所得金額が高いほど、税率が高くなるため、利益が少ない場合は個人事業主の方が得に、利益が大きい場合は法人の方が得になります。 - fx取引が副業の場合
fx取引が副業の場合、個人の税率は20.315%です。法人税の税率よりは低いため、個人の方が得です。
しかし、法人の場合は、本業と副業の利益を合計できます。例えば、法人で本業の利益が赤字100万円、fx取引の利益が黒字50万円の場合、本業とfx取引の利益を合計すると、赤字50万円となり税金はかかりません。
同じ利益で個人事業主の場合、事業所得は赤字のため税金はかかりませんが、fx取引の利益は別で税金がかかるため、個人事業主の方が損になります。本業やfx取引の利益が赤字の場合は、注意が必要です。
(2)その他
税金面以外にも、法人と個人事業主のどちらが有利かを判断するために注意しなければならないことがあります。それが経費の範囲と赤字の繰り越しです。
- 経費の範囲
一般的に法人と個人では、法人の方が経費にできる範囲は広いです。もちろん事業と関係のない経費は、法人と個人どちらも経費になりませんが、法人の方が事業活動の範囲が大きくなるため、経費の範囲も広くなります。 - 赤字の繰り越し
法人も個人も赤字を繰り越すことはできますが、繰り越せる年数が異なります。法人の場合は10年間、個人の場合は3年間、赤字を繰り越すことができます。大きな赤字が生じる場合など、法人の方が有利になることがあります。
まとめ
法人と個人事業主では、税金の計算方法が異なります。特にfx取引を副業で行っている場合は、大きく考え方が異なるので注意が必要です。fx取引するなら法人と個人事業主のどちらが得になるのかは、fx取引が本業か副業か、本業とfx取引それぞれの利益(所得)金額はいくらかによって異なります。
もし法人化を考えている場合は、事前にしっかりとしたシミュレーションをすることが重要になるでしょう。