特定資産の買替え特例とは? 税制改正で変更になったポイントを解説 | MONEYIZM
 

特定資産の買替え特例とは?
税制改正で変更になったポイントを解説

新規事業のために不動産の買い替えを行い、売却益が出た場合、税金の支払い義務が発生します。ただし、条件を満たした事業者が確定申告を行えば、「特定資産の買換え特例」として節税が可能となります。
この記事では、「特定資産の買換え特例」の概要や、2020年度の税制改正で変更となったポイントについて解説します。

特定資産の買換え特例とは

特定資産の買換え特例とは、一定要件を満たした資産の買い換えにおいて、発生した利益に対してかかる税金の繰り延べを可能にする特例です。不動産や大型設備機械などの固定資産の額は大きくなるので、課せられる税金の額も大きくなります。

 

事業を運営する上で、このような節税対策を知っておくことは資金繰りをする上で非常に重要です。特定資産の買換え特例では、非課税にすること自体は不可能であるものの、税金を繰り延べができるため、一定の節税効果を発揮します。

適用の対象となる条件

特定資産買換え特例の対象となる条件のうち、特に重要なものは4つです。自身で行った取引が特定資産買換え特例に当てはまるかどうかを確認してみましょう。

 

  • 土地を購入する場合は売却する土地の面積が5倍以内であること
    売却した土地の面積よりも購入した土地の面積が5倍以上になる場合は注意が必要です。狭い土地を売り、より広い土地を購入するのは現実的にあり得る買換え条件です。事業拡大により都市部の密集地から郊外に拠点を移す場合などが典型的な例でしょう。
    この場合、新たに購入した土地が売却した土地の5倍以内の場合は、特例が適用されます。仮に売却面積の5倍以上の購入面積となった場合も、5倍以内の面積分には特例の利用が可能です。5倍を超過していたとしても、特例の手続きは進めるようにしましょう。
  • 購入した資産は、1年以内に事業で使用していること
    特定資産買換え特例は事業として運用していることが前提の特例です。つまり、土地を購入したものの、事業化するところで滞ってしまい1年以上経過してしまうと、特例の適用対象外になります。そのため、特例を適用させるためには、購入後1年以内の事業化が必須条件となります。
    もう1点注意が必要になのは、1年以内に事業を閉じてしまった場合も特例の対象外となる点です。特例の適用を目的に、採算のとれない事業を維持することは賢い選択とはいえません。状況を鑑みつつ、適切な経営判断が必要となるでしょう。
  • 事業用の目的で不動産を売買していること
    特定資産の買換え特例に適用されるのは、売却資産も購入資産も事業用のものに限られます。つまり、空き地や空き家といったような、眠っている資産の売買に対しては適用されません。
    賃貸物件やコインパーキングなど、施設を有し収益を生み出している土地や建物の売買は特定資産の買換え特例に適用されます。
    注意が必要なのは、利益を生み出していても施設がない資産についてです。建物もなく舗装もしていない土地を月極駐車場として運営していた場合を考えましょう。この場合、土地があるのみで施設が存在しないため、事業用の土地ではないと判断される可能性があります。反対に、利益が微々たるものであっても施設があり利益を継続的に生み出しているのならば、事業用の土地として認められ、特例の適用が可能になります。
  • 特定資産の買換え特例以外に、節税対策の特例を使用していないこと
    特定資産の買換え特例の他にも、資産譲渡のかかわる特例は存在しています。それらの特例と特定資産の買換え特例の併用は不可能です。併用できない特例の例としては以下のものが挙げられます。

    • 優良住宅地の造成等の為に土地等を譲渡した場合の長期譲渡所得の課税の特例
    • 減価償却資産の特別償却
    • 所得税額の特別控除の特例

    これらの特例と、特定資産の買換え特例の特徴を比較し、どの特例を使用するべきか検討する必要があります。取引の内容次第では、特定資産の買換え特例以外の特例の方が得になる可能性もあるのです。

 

これら4つの条件の他にも

 

  • 買換資産の取得時期
  • 前年取得の届出
  • 譲渡する不動産の保有期間

などもあります。保有している資産が要件を満たしているか網羅的に確認しましょう。

適用には確定申告を行う必要がある

特例を適用させるためには、確定申告は必須の手続きになります。確定申告の時期は毎年2月16日から3月15日です。提出期限を遅れると、罰則が課せられます。そのためこの期間を逃さないよう早めに取り組むことが重要です。

 

特定資産の買換え特例を適用させる為の必要書類として以下の3点が挙げられます。

 

  • 土地や建物の譲渡所得内訳書
  • 買換えた資産の登記事項証明書
  • 特例が適用できる地域に不動産があることを示す市町村の証明書

 

これらの書類を準備し、税務署やe-Taxにて確定申告を済ませましょう。

2020年度税制改正における特定資産の買換え特例の変更点

特例資産買換え特例は、主に以下の2点について、2020年に一部改正されました。

 

  • 適用期間
  • 適用要件

期間の延長

適用期間が2020年3月31日から3年間延長され、2023年の3月31日までが適用期限となります。

 

また、以下の2つに限っては、2021年3月31日までの延長とされました。

 

  • 過疎地域に係る措置(三号)
  • 危険密集市街地に係る措置(六号)

適用対象条件の見直し

適用対象についてもいくつか変更が加えられましたが、その中でも重要なものは3つあります。適用対象条件に引き締めがあった点が散見するため、特例を使う可能性がある方は資産が対象から外れていないか確認しましょう。

 

特に「航空機騒音障害区域の内から外への買換えた場合」においては、譲渡資産が航空機騒音障害区域内に位置していないか確認しておきましょう。

 

  • 既成市街地等の内から外へ買換えた場合
    譲渡資産として、「工場の立地が制限されていなかった区域内にある建物や土地」は特例の対象資産から除外されました。
  • 航空機騒音障害区域の内から外へ買換えた場合
    譲渡資産が航空機騒音障害区域にある場合は、「課税繰り延べ割合を80%から70%に引き下げ」となりました。
  • 都市機能誘導区域の外から内へ買換えた場合
    特定資産の買換え特例の対象から除外されました。

特定資産の買換え特例が適用された場合の譲渡所得金額計算方法

特定資産の買い換え特例の適用を受けることで、課税される譲渡所得の金額が特例のルールにのっとって算出されます。その際、譲渡価格と取得価格の大きさの関係によって計算式が異なるため、注意が必要です。

価格によって計算方法が異なる

譲渡価格と取得価格の大小関係によって適用される計算式が変わります。ただ、どちらの場合においても、

課税される譲渡所得の金額 = 収入金額 − 必要経費

の基本的な計算式は変わりません。つまり、必要経費を適切に申告することが課税される譲渡所得を抑えるために大切なポイントになります。

 

  • 譲渡価格よりも取得価格のほうが高い場合
    課税所得の計算式は以下の通りです。

    課税される譲渡所得の金額= 収入金額 − 必要経費

    収入金額や必要経費の内訳は、以下のようになります。

    収入金額:譲渡資産の譲渡価額 × 0.2
    必要経費:(譲渡資産の取得費+譲渡費用)× 0.2

    必要経費を正確に見積もることが課税所得を下げるポイントとなりますので、必要経費の計上漏れが無いよう注意しましょう。

  • 譲渡価格よりも取得価格のほうが低い場合
    課税される譲渡所得の金額 = 収入金額 − 必要経費

    収入金額や必要経費の内訳は、以下のようになります。

    収入金額:譲渡資産の譲渡価額-買換資産の取得価額 × 0.8
    必要経費:(譲渡資産の取得費+譲渡費用)×(収入金額÷譲渡資産の譲渡価額)

    このように、譲渡価格と取得価格のバランスによっても課税される譲渡所得が変わります。計算式を把握した上で買換えする資産を検討しましょう。

☆ヒント
コロナ禍で事業転向を検討している企業も多い中、節税が可能になる特定資産の買換え特例は注目すべき制度です。制度の理解に不安があるものの、効率よく節税したい方は、いつでも相談できる税理士がいると安心できます。

まとめ

事業を継続していく上で、土地や資産の買換えが生じる可能性があります。コロナ禍によって数多くの企業が事業転換をする企業が増加傾向にある中、節税が可能になる特定資産の買換え特例を上手く活用していきましょう。

 

2020年度の税制改正によって、資産の適用範囲に若干の引き締めはありました。しかし効率よく節税するためには、特定資産の買換え特例に限定せず、その他の特例と比較検討し最適なものを取捨選択していく姿勢が大切です。賢く資産を運用していくためにも、いつでも相談に応じてくれる税理士がいると安心です。

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