アメリカ経済を把握する上で、今年欠かせないテーマとなっているのが「テーパリングが実施されるかどうか」です。テーパリングとは、量的金融緩和政策を縮小させていくことになりますが、アメリカの経済安定のため、米連邦準備理事会が日本時間の11月4日に、11月からテーパリングを実施することを決定しました。
この記事では、テーパリングの詳しい解説や日本の景気や株価に与える影響について紹介します。
テーパリングとは
テーパリングを理解する上でキーとなってくる政策が、量的金融緩和政策です。まずは金融緩和の仕組みと量的金融緩和政策について解説します。
量的金融緩和政策とは
金融緩和政策とは、景気の回復を目的に行われる中央銀行の政策の一つです。各銀行などが日銀に当座預金を開いており、景気が悪化した際はまず、中央銀行は買いオペレーション等を行うことで金利を下げるという金融緩和を行って市場に出回るお金を増やします。買いオペレーションとは、国債などの金融資産を中央銀行が買い入れることで、市場に出回るお金を増やすことです。
その中でも量的金融緩和とは、買いオペレーションによってゼロ金利になっても、さらに当座預金残高まで買いオペレーションを続けることを指します。
テーパリングの意味
テーパリングとは、英語で「tapering」と表記し、「taper」とは「先細り」で段々と減っていくという意味を持っています。金融用語的にはテーパリングは、量的金融緩和政策の縮小という意味があります。前述の量的金融緩和政策を踏まえてテーパリングとは、量的緩和政策による金融資産の買い入れを目標に達したらやめる、という方法ではなく、買い入れ金額を徐々に縮小させていく方法を指します。
テーパリングを行う背景
通常の金融緩和政策はゼロ金利になった時点で買いオペレーションをストップするのに対し、量的金融緩和政策ではゼロ金利になっても買いオペレーションの到達目標が当座預金残高までとされているため、市場に出回るお金が急激に増加し、インフレを引き起こしてしまう可能性が大きくなっています。そのためテーパリングによって徐々に金額を調整し、市場の様子を見ながら量的金融緩和政策を行うことでインフレなどデメリットを引き起こさないように注意する必要があります。
テーパリングを行うことで得られる効果
金融緩和政策による買いオペレーションでゼロ金利を実現することで、銀行は企業への融資がある程度行いやすくなる場合もあります。それでも景気回復に効果がなかった場合、効果を高めるために行われるのが量的金融緩和政策です。ゼロ金利実現以降も買いオペレーションを続けることで、従来の金融緩和政策よりも景気の回復により大きな効果をもたらすことが予想されます。
しかし前述のとおり効果の裏には高いリスクをはらんでいるため、段階的に量的金融緩和政策を縮小させるテーパリングは、量的金融緩和政策の効果を最大限に発揮しつつリスクを最小限にする役割を担っています。
テーパリングが株価に与える影響
量的金融緩和政策およびテーパリングは金利を操作する政策のため、株価に与える影響も大きくなっています。理論上は、量的金融緩和政策によって株価は下がると言われており、悪化した景気に刺激を与えることができる政策となっています。株価が下がる流れを確認し、実際の影響がどのくらいあるか把握しておきましょう。また経営を行う上で、日本の中央銀行の動向も把握し、今後の日本の景気を予想しておくことも重要です。
株価が下がる仕組み
テーパリングによって、理論上は株価が下がります。まず量的金融緩和政策の実施で市場に出回る資金が増えたところを、テーパリングで縮小することで金利が上昇します。次に、株価の理論的な価値を示す「割引現在価値」が下落するため、株価が割高だと感じる人が増えることでしょう。そうなると、投資家などは株式を売却する方向へと動き出し、全体として株価の下落にもつながる、という仕組みになっています。
以前行われたテーパリングでは、こうした市場への影響を加味して、事前に市場にテーパリングについて告知を行っておりました。すると、市場の混乱を防ぐことができ、事前の予想を下回る影響に抑えることができたとされています。
過去のテーパリング実施での株価変動事例
実際、過去に量的金融緩和政策からテーパリングを行った事例としては、2013年5月に当時の米連邦準備理事会議長だったバーナンキ議長が突如テーパリングを予告し、市場が一時混乱に陥ったことが挙げられます。リーマンショック後、3回に分けて行われた量的金融緩和政策の一環として、テーパリングの実施がアナウンスされました。
アナウンス直後に株価は一時大きく下落したものの、2014年1月にテーパリングが実際に行われると市場は徐々に落ち着きを取り戻し、2014年の末頃には株価はほとんど元に戻りました。
このことからテーパリングは事前に告知をし、準備できる状態にしておくことで大きな株価の下落を避けることが可能でしょう。コロナ禍においてはテーパリングに関する情報を少しずつ市場に出していくことで調整しているため、株価に与える影響は少ないのではないかと言われています。
日本銀行の動向
アメリカの中央銀行である米連邦準備理事会は11月からテーパリングを実施することを決定していますが、日本の中央銀行も徐々に量的金融緩和を縮小し、国債等の買い入れ金額を減らすことでテーパリングを行っていることが分かっています。コロナウイルスのワクチン接種普及により各国で景気が回復し始めているため、今後もテーパリングが世界的に進められると予想されます。
テーパリングを見据えた投資を行う方法
コロナ禍で落ち込んだ経済を支えるために量的金融緩和政策が行われ、回復の目処が立ったため、テーパリングは今後実施が検討されています。投資を行っている方はテーパリングがどのタイミングで行われるかを把握し、実施に備えた投資方法でリスクを避けたいと考えている方も多いでしょう。テーパリングを見据えた投資を行うポイントは以下の2点です。
分散投資を行う
投資全体に言えることでもありますが、分散投資を行っておきましょう。今回のテーパリングでは株価の大きな変動はないと予想されるものの、万が一のリスク回避のために分散投資は有効な手段です。
すぐ見切りをつけず、継続的に投資する
株価の一時的な下落によって、株式の売却を検討する人も多くなるでしょう。しかしテーパリングの実施が事前に分かっていれば株価は元に戻ることが予想されるため、慌てず、継続的に投資を行うようにしましょう。
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アメリカが始めた金融対策「テーパリング」って?どんな影響がある?|3分でわかる税金
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まとめ
コロナ禍で悪化してしまった景気を回復するためにも、金融緩和、量的緩和政策やテーパリングは市場に出回るお金を操作したり株価に影響を与えるなど、効果的な手段です。しかし、テーパリングに失敗すると急激に市場のお金が増加することでインフレになる可能性があったり、景気の悪い時期は誰でもお金を使うことに不安があるため、投資に回すなど慎重にならざるを得ない状況です。そのため、リスクが高く難しい政策でもあります。株価にも影響があるため、国の金融政策の動向をその都度把握しておくことで、今後の景気の変動に備えるようにしましょう。