今、政府の中で議論がされているのが、住宅ローン減税の減額です。1年間に減額される住宅ローン控除の金額を減らすことが検討されています。
では、住宅ローン減税が減額になることで、どのような影響が出てくるのでしょうか。ここでは、住宅ローン減税が減額されるニュースや、住宅ローン控除のしくみについて解説します。
政府が住宅ローン減税の減額を検討
政府・与党が2022年度税制改正において、住宅ローン減税の減額を検討していることが、2021年11月のニュースで報じられました。その内容は、減税率を現在のローン残高の「1%」から縮小させる予定であるというものです。
実際に、2021年12月10日に与党により提出された「令和4年度税制改正大綱」では、住宅ローン控除を2022(令和4)年から2025(令和7)年まで4年間延長するとともに、控除率を現在のローン残高の「1%」から「0.7%」に減額することになっています。
一方、控除期間は現状の10年よりも長く規定されており、2022(令和4)年と2023(令和5)年に住宅を取得し、居住した場合は控除期間を13年としています。2024年(令和6年)と2025年(令和7年)は、控除期間は10年です。
住宅ローン控除の控除額は、年末の住宅ローン残高に控除率を乗じて計算します。年末の住宅ローン残高は年々減少していくため、控除期間が13年と長くなっても控除率が0.7%に減額されることで、改正前より住宅ローン控除全体の控除額が減少する人が出てきます。
住宅ローン減税の減額が決まった背景には低金利があります。低金利により、住宅ローンに対する金利と住宅ローン控除の控除率に逆転傾向が生じ、支払う利息よりも控除額が大きくなっているケースもあり、これを是正するために控除率が下げられることになりました。
そもそもの住宅ローン控除のしくみ
ここまでは、住宅ローン減税が減額になるニュースについて見てきました。ここからは、そもそもの住宅ローン控除のしくみについて見ていきましょう。
住宅ローン控除とは?
住宅ローン控除とは、個人が金融機関などの住宅ローンを利用して、マイホームの新築や取得、増改築をした場合に、一定の税額控除が受けられる制度のことです。税額控除は直接、納める税金から差し引けるため、節税効果が高いものになります。上述したように、控除額は、住宅ローンなどの年末残高の合計額等を基にして計算します。
住宅ローン控除は、次の計算式で控除額を計算します。
例えば、住宅ローンの年末残高が2,000万円の場合の控除額は、2,000万円×1%=20万円になります。
なお、現在は消費税の税率引き上げや新型コロナウイルスの影響などにより、一般的な住宅ローン控除に加えて、控除限度額や要件などが異なるいくつかの特例が並存している状況となっています。現行では特別特例取得、コロナ特例があります。
住宅ローン控除を受けるための要件
住宅ローン控除は節税効果の高い税額控除であるため、控除を受けるための条件があります。住宅の新築や新築物件の取得、中古物件の取得、増改築などさまざまなケースで受けることができますが、住宅ローン控除の要件は住宅の取得時期や状況などによって異なります。
そこで、ここでは基本的な要件を見ていきましょう。基本的な要件は、次のようになっています。
- 返済期間が10年以上の住宅ローン等であること
- 住宅を新築、取得した日から6か月以内に入居し、年末まで住み続けていること
- 住宅の床面積が50平方メートル以上で、2分の1以上を居住用として使っていること
- その年の1年間の所得金額が3,000万円以下であること
- 中古物件の場合は、取得の時点で築20年以下(マンションなどの耐火建築物は25年以下)の物件であること
- 生計を一にする親族などからの取得や贈与による取得でないこと(中古物件の場合)
住宅ローン控除の注意点
住宅ローン控除を受けるためには、いくつか注意点があります。ここでは、住宅ローン控除の注意点について見ていきましょう。
1年目は確定申告が必要
税金の計算上、所得税ではさまざまな控除を受けることができます。例えば、扶養家族がいる場合の扶養控除や、保険料の支払がある場合の生命保険料控除や地震保険料控除などの控除があります。
会社員の場合、多くの控除は年末調整で控除を受けられますが、中には年末調整では控除を受けることができず、確定申告で控除を受けるものもあります。年末調整でなく、確定申告で控除を受ける代表的なものには医療費控除がありますが、初めて住宅ローン控除を受ける場合も確定申告が必要です。
初めて住宅ローン控除を受ける場合には、必要事項を記載した確定申告書に一定の必要書類を添付して、税務署に提出します。住宅ローン控除に必要な書類は、受けようとする住宅ローン控除の種類によって異なりますが、一般的な住宅ローン控除の必要書類は、次のようになります。
- (特定増改築等)住宅借入金等特別控除額の計算明細書
- 住宅取得資金に係る借入金の年末残高等証明書
- 家屋の新築や取得年月日、取得価額、床面積などが記載された登記事項証明書や契約書の写し
「(特定増改築等)住宅借入金等特別控除額の計算明細書は、税務署の窓口や国税庁のホームページからのダウンロードなどで入手可能です。
また、住宅ローン控除を受ける1年目で確定申告をすれば、税務署から住宅ローン控除を受けることのできる期間分の「年末調整のための(特定増改築等)住宅借入金等特別控除証明書兼給与所得者の(特定増改築等)住宅借入金等特別控除申告書」が送付されてきます。
2年目以降は、勤務先に「年末調整のための(特定増改築等)住宅借入金等特別控除証明書兼給与所得者の(特定増改築等)住宅借入金等特別控除申告書」と「住宅取得資金に係る借入金の年末残高等証明書」を提出すると、年末調整で住宅ローン控除を受けられます。
繰り上げ返済した場合は注意が必要
多くの住宅ローンは、繰り上げ返済可能です。繰り上げ返済をすることで、ローンの返済期間を減らすことができます。その結果、支払う利息の総額を抑えることができます。
しかし、住宅ローンの繰り上げ返済で注意したいのが住宅ローン控除です。住宅ローン控除の控除額は、住宅ローンの年末残高に控除率を乗じて計算します。そのため、住宅ローンの繰り上げ返済をし、住宅ローンの年末残高が減少した場合は、そもそも限度額を超えていて控除額に影響がない場合など一定のケースを除き、住宅ローン控除の金額も減少します。
また、住宅ローンの繰り上げ返済により、住宅ローンの返済の期間が減少する「期間短縮型」で繰り上げ返済した場合、住宅ローン控除の控除期間である10年よりも返済期間が短くなることもあります。その場合は、住宅ローン控除が受けられなくなる場合もあります。
住宅ローンの繰り上げ返済をする場合は、減少する利息の支払額と住宅ローン控除額を総合的に判断する必要があります。
まとめ
住宅ローン控除は、2022年(令和4年)から2025年(令和7年)まで4年間延長することとに、控除率を現在のローン残高の「1%」から「0.7%」に減額する予定となっています。そのため、今後は控除を受ける金額が減少する可能性があります。また、2022(令和4)年から2025(令和7)年までの間でも控除率などの違いがあります。
住宅ローンを使って、住宅の取得を考えている場合には、住宅ローン控除のことも考えて、住宅の購入時期を決めたほうが良いかもしれません。