国外企業株への投資や売買は、インターネットの普及もあり、今では日常的に取引されています。しかし、いくら身近であっても国外の株を扱うのですから、国内とは税金のかかり方が違う場合があり、知らないと余計な税金まで払ってしまうかもしれません。本記事が外国株投資を考える方の参考になれば幸いです。
外国株投資について知っておこう
最初に外国株および取引方法の概要を説明します。
なお、外国株投資は、いわゆる証券会社に預けた金を米ドルやユーロなどの外貨に替えたうえで海外株等に投資する「外貨建て投資信託」とは違う種類の投資です。混同しないようにしましょう。
外国株式とはどういうものか
外国株式(外国株)は日本以外の国籍を持つ企業が発行している株式のことです。たとえば同じ「コカ・コーラ」でも、コカ・コーラ ボトラーズジャパン株式会社は日本の法人なので国内株ですが、総本家であるアメリカのコカ・コーラ社の株は外国株として取引されます。
外国株というとコカ・コーラのような老舗から世界的に有名なベンチャー企業までバラエティーに富み、かつ配当金が比較的高いアメリカ株が有名です。しかし、中国やヨーロッパ、東南アジア諸国など多種多様な外国株も今の日本では比較的自由な投資が可能です。
アメリカ株を筆頭とした外国株は、配当金の高さや急成長が望める会社の多さなどが魅力です。一方でそれぞれの国の社会情勢の動向に収益が左右されたり、通貨価値自体が下がったりして経営が健全な会社であっても配当が大幅に下がる、いわゆる「カントリーリスク」があることには注意が必要です。
外国株の投資方法は3種類ある
日本で証券会社において外国株を取引するには、既に証券会社に口座を持っていても新たに外国証券取引口座の開設が必要です。口座開設そのものは無料とする証券会社が多いですが、原則取引の際に一定の手数料がかかります。
口座は「一般口座」と「特定口座」があります。(口座については後ほど説明します。)
口座開設後、証券会社を通して実際に取引を行う方法としては以下の3種類があります。
①海外委託取引
外国株の売買を海外市場の動向を見ながら投資家自身で直接取引します。証券会社は投資家から委託されて売買注文を行います。株取引に慣れている人向けといえます。
②国内店頭取引
証券会社と投資家間での株式売買です。投資家が注文した銘柄の売買を、証券会社が持っている株式の範囲内で行います。①よりは安定した取引となりますが、銘柄は証券会社手持ちのものに限られます。
③国内委託取引
外国株式のうち、東京証券取引所に上場している銘柄を国内株と同じように売買することです。
なお、証券会社を通さず直接外国株の取引を行うことも可能ですが、かなりレアなケースといえます。
外国株投資で得た利益は税金の対象となる
外国株投資にはご覧のように様々な種類があり、投資で得た利益を税務上どう考えるかも取引によって変わってきます。以下説明します。
原則2種類の税金が発生する
外国株投資で得た利益にかかる税金には「譲渡益課税」と「配当課税」の2つがあります。
まず、投資家が外国株を売却することにより得た利益(譲渡益)は日本国内の自身の証券会社の口座に振込まれるため、当然ながら日本国における譲渡益課税の対象 となります。
譲渡益課税の税率は20% ですが、令和19年までは復興特別所得税として基準所得税額に2.1%を乗じるため、実際は20.315%となります。
また、外国株を持っていることで得る配当金に対しては配当課税 がかかってきます。
配当により得た所得の計算方法は以下のとおりです。
この所得額から源泉徴収の形で配当課税が行われます。
配当課税は国内と国外で源泉徴収される
配当課税について注意しなければならないのは、二重課税となってしまう可能性です。
というのも配当課税は実際に取引している外国においてもその国の税法・税率により一度源泉徴収されたうえで、さらに国内で源泉徴収されているのです。
確かに配当金そのものにかかる税金であるゆえ、それぞれの国で源泉徴収されてしまうのはやむを得ないことなのですが、やはり二重に課税されるというのは納得のいかないところではないでしょうか。
実はその点を考慮した所得税額の控除制度が存在しています。ただし控除を受けるには所得額を確定申告しなければなりません。
確定申告に関しては次章で詳しく取り上げます。
外国株で得た利益は原則確定申告が必要
前述のように、株の取引自体は外国で行われていても利益を得る場所は国内であり、利益自体は所得税の対象となるため原則確定申告が必要となります。
また、外国株控除制度を受けるためにも確定申告は欠かせません。
確定申告の要・不要は口座の種類による
上で「原則」と述べたとおり、外国株投資で得た利益については確定申告が不要となるケースがあります。
外国株取引のために開設する口座は、前述のとおり「一般口座」「特定口座(源泉徴収あり)」「特定口座(源泉徴収なし)」の3種類から選択できます。
このうち一般口座は自分で年間の株取引にかかる損益を計算し、利益が一定額を超えれば確定申告をしなければなりません。
一方特定口座を選べば、証券会社が年間の損益計算をしてくれます。さらに「源泉徴収あり」の特定口座であれば証券会社が代理で納税までしてくれます。すなわち確定申告が不要となるのです。
特定口座 | 源泉徴収あり | 確定申告不要 |
---|---|---|
源泉徴収なし | 確定申告要 | |
一般口座 |
手間だけを考えると源泉徴収ありの特定口座の一択となりそうです。
しかし、たとえば年収2,000万円以下の であれば給与以外の所得が年間20万円以下であれば申告不要、すなわち納税も不要であるところ、「源泉徴収あり」口座だと20万円以下でも源泉徴収されてしまうのです。
ですから、損益計算するまでもなく年間20万円を超える投資利益が出ないことが明らかな人であれば一般口座で十分ですし、微妙な場合は源泉徴収なしの特定口座にするのも一つの手です。
また、投資枠額の上限はありますが、株式運用益が非課税となる「NISA口座」にするという方法もあります。開設前に証券会社や税理士などの専門家に相談してみましょう。
外国税額控除を使い、税金の二重払いを防ごう
外国株の配当金について二重課税が起きてしまうのを回避するための制度が「居住者に係る外国税額控除 」です。
上の式で計算された金額を上限として、外国で源泉徴収された額をその年分の所得税額から差し引くことができます。
また、上の計算式の金額を超えて海外で源泉徴収されていた場合は、さらに「復興特別所得税の控除」を利用することが可能です。
控除額の上限は、以下の式で計算します。
この控除を受けるためには必要書類を添えて確定申告をしなければなりません。
ちなみに「源泉徴収あり」の特定口座であっても自身で確定申告することはできるので心配は要りません。
確定申告に必要な書類
外国株取引で得た利益により所得税が発生した際の確定申告は、通常の申告と変わりありません。個人事業主の場合副業であれば給与所得者同様雑所得として、取引を事業として行う場合であれば事業所得として計上します。
一方、外国税額控除を受ける場合は下記の書類を添えて確定申告する必要があります。
●外国所得税の課せられたことを証明する書類等
●国外所得総額の計算に関する明細書
●各年の控除限度額や納付した外国所得税を記載した書類
これらの情報は、証券会社から届く取引説明書や支払通知書に記載されていることが多いです。分からなければ証券会社に問い合わせてみましょう。
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外国株投資の利益は、二重課税されるって本当!?【フリーランスの税金】|3分でわかる税金
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まとめ
外国株投資は、証券会社を通じて行うのであれば、国内株と同じような感覚で始められます。また対象企業の国籍や種類により、先にあげた「カントリーリスク」が逆に作用して思わぬ配当利益を得ることもないとはいえません。そのため、利益が確定申告の対象となる可能性について頭に入れたうえで取引を行う必要があるでしょう。