インターネットの普及に伴い、拡大を続けているのがネットワークビジネスです。ネットワークビジネスは個人で行うことが多いため、ネットワークビジネスで利益が出ると原則、確定申告や税金の支払が必要になります。
そこで、ここではネットワークビジネスにおける確定申告や税金の基礎知識を詳しく解説します。
ネットワークビジネスは確定申告が必要?
ネットワークビジネスは、 一般的には製品やサービスを口コミで伝え、口コミによる広がりなどにより報酬を得るビジネスを指す場合が多いです。
しかし、口コミによる広がりなどにより報酬を得るビジネスであっても、確定申告が必要かどうかの考え方は同じです。ここでは、ネットワークビジネスと確定申告について見ていきましょう。
ネットワークビジネスの所得区分は?
収入のある個人は原則、確定申告が必要ですが、一定のケースでは確定申告が不要な場合もあります。確定申告が必要かどうかを判断する場合、重要となるのが所得区分です。実は、所得税では、所得金額や納める税金の計算方法が所得によって異なります。そのため、まずは、ネットワークビジネスがどの所得になるのかを判断する必要があります。
原則、ネットワークビジネスは、事業所得または雑所得になります。事業所得とは事業を営んでいる場合の所得です。事業とは、その商売を独立して行い、毎年のように継続・反復して行っていることをいいます。そのため、ネットワークビジネスを毎年継続する本業としている場合は原則、事業所得になります。
一方、ネットワークビジネスで事業所得までの規模にならない場合は、雑所得になります。雑所得とは、他のどの所得にも該当しない所得区分のことです。例えば、数回だけネットワークビジネスを行い、その後やめた場合などは、継続・反復していないため、事業所得に該当せず、雑所得になります。
所得区分が判断できたら、次は、所得金額を計算します。事業所得も雑所得も、所得金額は「収入-必要経費」で求めます。
ネットワークビジネスで確定申告は必要か
次に、ネットワークビジネスで確定申告は必要かどうかを見ていきましょう。原則、ネットワークビジネスで収入がある場合は、確定申告が必要ですが、一定のケースでは確定申告が不要になります。確定申告が不要なケースは、ネットワークビジネスが本業か副業かに応じて、次のようになります。
・ネットワークビジネスが本業の場合
ネットワークビジネスが本業の場合で確定申告が不要なケースは、納める税金がない場合です。「納める税金がない場合」とは、ネットワークビジネスで赤字が出ているケースや、黒字であっても、基礎控除や生命保険料控除などの控除よりも黒字額が小さく、税金が発生しないケースなどです。
・ネットワークビジネスが副業の場合
会社員で副業としてネットワークビジネスを行っている場合は、納める税金がない場合のほかにも、確定申告が不要なケースがあります。それは、ネットワークビジネスの所得金額が20万円以下の場合です(副業がネットワークビジネスのみの場合)。ネットワークビジネスの所得金額が20万円以下の場合は、納める税金がある場合でも確定申告は不要です(ただし、本業の給与所得が年間で2,000万円を超える場合は、ネットワークビジネスでの所得金額が20万円以下でも申告が必要)。
ここで気を付けたいのが、判断基準の20万円が所得金額ということです。収入金額が20万円以下ということではないので、注意しましょう。
ネットワークビジネスで節税する方法
一定のケースを除き、ネットワークビジネスでは確定申告を行い、税金を納める必要があります。そこで重要となるのが、いかに納める税金を低く抑えるのかということです。
ここでは、ネットワークビジネスで節税する方法について見ていきます。
経費を確実に計上する
ネットワークビジネスの所得金額は「収入-必要経費」で求めます。そのため、経費が増えれば増えるほど、税金の計算のもととなる所得金額を抑えることができます。しかし、事業に関係のない支出を経費にすることはできません。重要なのが、経費にできるものを確実に計上することです。ネットワークビジネスで経費になるものには、例えば次のようなものがあります。
経費の種類 | 内容 |
---|---|
仕入高 | 販売用商品の仕入れ代金(商品の販売がある場合) |
旅費交通費 | 電車代やバス代、タクシー代など |
通信費 | 電話代やインターネット代など |
消耗品費 | パソコンや机などの消耗品の購入費用(1つあたり10万円未満) |
事務用品費 | 文房具やコピー用紙代など |
水道光熱費 | 事務所の水道代や電気代、ガス代など |
地代家賃 | 事務所の家賃、駐車場代など |
新聞図書費 | ネットワークビジネスに関する雑誌代など |
接待交際費 | 取引先との飲食代やお中元・お歳暮など |
雑費 | その他の雑多な支出 |
事業所得の場合は青色申告をする
ネットワークビジネスが事業所得になるのか雑所得になるのかで大きく違う点が、事業所得の場合は青色申告ができるということです。青色申告をすると、節税になるさまざまな特典を受けることができます。青色申告の代表的な特典に、青色申告特別控除と損失の繰越があります。
青色申告特別控除とは、青色申告をするだけで最大65万円の控除を受けられるというものです。通常にかかる費用以外に、65万円の経費を捻出するのは、難しいことです。そのため、青色申告特別控除は、納税者にかなり有利な制度となっています。
損失の繰越とは、赤字を翌年以降3年間繰り越すことができる制度のことです。繰り越した赤字は、翌年以降の黒字と相殺できるため、翌年以降に納める税金の額を抑えられます。
ネットワークビジネスの確定申告の注意点
ここからは、ネットワークビジネスで確定申告をする上での注意点について見ていきましょう。
確定申告をしない場合はペナルティを受ける可能性もある
確定申告を忘れた場合には、延滞税や無申告加算税などのペナルティを受ける可能性があります。
延滞税とは、期限までに税金を支払わなかった場合に課される利息の意味を持つペナルティのことです。最大14.6%の延滞税が課される可能性があります。
無申告加算税とは、確定申告が必要な場合で、確定申告をしなかったことに対するペナルティです。最大で20%の無申告加算税が課される可能性があります。
そのほかにも、脱税と認められる場合にはさらに重いペナルティが課されることもあるので、必ず、期限までに確定申告と納税を行うようにしましょう。
確定申告でネットワークビジネスの副業がばれる?
会社員が副業でネットワークビジネスを行っている場合に気になるのが、勤務先に副業がばれないのかということです。
勤務先に副業がばれるケースでよくあるのが、市民税などの住民税です。市税事務所などから勤務先に送られてくる住民税の金額が、給料金額に対する税額よりも多いことに勤務先の担当者が気づいた場合に、給料以外の収入があることがばれます。
しかし、確定申告書第二表の「住民税・事業税に関する事項」欄にある「給与、公的年金等以外の所得に係る住民税の徴収方法」で「自分で納付」にチェックを付ければ、勤務先には給料分の住民税の納付書しか届きません。副業分の住民税の納付書は、勤務先でなく自宅に届くため、住民税の金額によりネットワークビジネスの副業が知られるリスクは低くなります。
まとめ
ネットワークビジネスで収入がある場合には、原則、確定申告が必要です。確定申告をする場合には、必要経費を確実に計上したり、事業所得の場合は青色申告をしたりすることで、節税が可能です。
しかし、確定申告をしなかったり、納税が遅れたりした場合などは、延滞税や無申告加算税などのペナルティが課される可能性もあります。必ず、申告期限までに確定申告と納税を行うようにしましょう。